こんなひといたよ 第20話「UFOと交信していると言う夫を持つ妻」
第18話に続き奥田英朗の「家族」を扱った物語。文庫「我が家の問題」から「夫とUFO」というお話を紹介する。
夫がこんなことを言い始めたらあなたはどうしますか?
「実はさ、UFOがね、おれを見守ってくれているんだよね。最近は彼らと交信もできるようになってさ。なんか、いい感じなわけ」
妻である美奈子は、なぜ夫がこんなことを言い始めたのか…気が付けば本棚はUFOの本ばかり、休みの日にはあやしい集会に出かける夫。夫を守るため、家族をまもるため美奈子は立ちあがった。
***
その夜、多摩川の堤防で達生を待ち伏せることにした。携帯メールで聞くと、今夜も十一時を過ぎるとのことだった。
ヨガスクールに通っていたときの全身レオタードを身につけ、その上にモヘアのニットを着込み、ミニスカートを穿いた。髪は額に垂らし、内巻きにした。真っ赤な口紅を引く。
変装しているところを美咲と大樹に見られ、ぎょっとされた。
「おかあさん、どうしたの」二人は怖々聞いてくる。
「これからおとうさんを救出してきます」
美奈子が力を込めて言うと、姉弟は言葉を失い、不安そうに身を寄せ合っていた。
自転車にまたがり、家を出た。夜風を切り裂き、ずんずんと漕いだ。空にはまん丸なお月様が浮かんでいる。絶好のUFO日和だ。
***
なぜ夫はUFOと交信しているなんて言い始めたのか?美奈子は必死で探り始める。すると夫がそんなことを言い出すほどに心に病んでいることがあったことを知る。美奈子は、そのことに深く同情をし、夫を助け出しに行くのである。その時、夫にかけた言葉がこれだ。
「健康第一。家族も第一。お金はずっと下」
家族助け合えばどんなことがあってもなんとかできるんだと美奈子は夫に訴えたのだ。お金のために身を亡ぼすべきではないと。きっと世の奥さん方の多くはそう思ってくれているはずだ(?)仕事で死にそうになっている世のお父さん方へのエール。
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