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2020年、人工物の総量が地球の生物の総量を上回る(前編:論文内容)

Natureの論文及びそれを元にしたScientific Americanの記事について。
人間の活動が地球規模に拡大してきている中で、社会経済的な代謝としても知られる社会経済システムの物質フローを定量的に評価、監視することが重要になってきています。この研究は、人間の作り出す物の量と地球上の生物の総量を比較し、地球上の人間活動の規模と影響を定量化し、評価することに貢献します。

1900年以降、人工物の生産量が急速に増加

1900年以降、20年毎に人工物の生産量が2倍になる指数増幅に乗ってしまったとのことです。その結果、1900年には生物の総量のわずか3%だった人工物の量が、120年間経った今では生物の総量に追いついてしまったようです。ここで言われている人工物は現在利用中のもののみに着目しているというので、廃棄されて物は含まれていません。また、生物の量については乾燥状態で換算しています。
その間に、生物の総量は安定していたということで、単純に人工物の量が増えているということを意味しています。ただ、1万2000年前の農業革命から植物の総量は半減してしまっているらしいです。
ちなみに、一週間に生産される人工物の量は77億人の人類の平均体重に相当するとのこと。

生産される人工物の大半はコンクリート

生産される人工物の半分はコンクリートで、他の大部分は砂利です。その他については、レンガ、アスファルト、金属、プラスチックが19%。
生物の量との比較では、
建物とインフラの量(1100 Gt)>木々や低木の量(900 Gt)
プラスチックの量(8 Gt)=地球の動物の量(4 Gt)×2
という結果になっています。
建物やインフラに使われる人工物の量がとても多く、1950年代半ばにはレンガを主体とした建設からコンクリートへとシフトしたことや、1960年代からアスファルトが主要な道路舗装材として登場したことでその使用量が拡大していきました。この調査では、人工物のほとんどが岩石や鉱物の変換から生じたものであることを示しており、人類が地表近くの地層を社会的に有用な形に変換していることがわかります。このことは、自然の生息地や生物多様性、様々な気候、生物地球化学的サイクルに大きな影響を与えていると主張されています。

今後20年で廃棄物量がこれまでの110年分に匹敵

このままの傾向が続けば、20年後までに人工物の総量が生物の量の3倍にまで達してしまうという見積もりが出ています。また、これらの人工物が廃棄されることを考えると、今後20年で廃棄される量は、これまでの110年分の廃棄物量と同程度になるだろうとの予想。

ここまでは論文に記載されている内容をおおまかにまとめてみました。後編では、この論文の内容に対する感想や見解を載せたいと思います。


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