世界一役に立たない旦那の行動
というハッシュタグをTwitterで見つけた。
まあ、いろいろだ。
熱を出して寝込んだり突然痛みに見舞われ重病発覚、即入院という時に子供ほったらかしで自分の飯の心配しかしない夫とか、陣痛で痛み最高潮の時に「どんな痛み?」って聞いて来る夫とか。
妻が苦しんでるとか、忙しいとか、見ただけで分かる時でさえ自分の都合しか考えない夫への怒りが140という短い文字数のなかに簡潔に、バラエティに富んだ表現でつづられていた。
中には私の夫はすごくいい夫であんなこともこんな事もしてくれるーと自慢したあげく最初から選ばなくちゃ、と怒る妻たちの神経を逆なでするような「アドバイス」をしているツイートもあったけれど。
結婚して数年たっても私達夫婦に子供はいなかった。
ある時夫の転勤で、偶然夫の親の生まれ故郷に住むことになった。
何の行事だったか忘れたけれど、一族郎党が夫の祖父宅に集まり車座になって彼の話を拝聴していた。
彼は戦後の町を立て直し、産業を根付かせた地元の名士だ。逆らう人のいない一族の頂点。
「からすまさん」
祖父が、一族のヒエラルキーどんじりに位置する私の名を呼んだ。
「あんた、まだ子供ができないな」
しんと静まり返る一族、「それは…」と言って黙り込む夫。
その後何か言われたと思うけれど、覚えてない。
薄ら笑いで「はい」「はい」と返事だけしていたと思う。
とても嫌な事を言われたと思う。
この人私より先に死ぬんだから、と我慢したことと、
「病院行ってきなさい」
と言われた事だけ覚えてる。
私たち夫婦は遠距離恋愛だった。だからなのか夫は
「1年は(子供を作らずに)恋人同士でいよう」
と言った。
1年経ち、子供の事に水を向けると夫は
「俺は、一生子供は無くてもいいと思っている」
と言った。
ホントに、胸の真ん中、食道のあたりをすーっと冷たいものが降りて行った。
でもほっとしたのも事実。
結婚して仕事を辞めて夫の許へ行き、人口より牛の数の方が多い田舎の社宅に住んだ私は、環境の変化についてゆけずノイローゼ気味だったのだ。
リビングにぼーっと突っ立っている私を見て、夫は
「気持ち悪い」
と言った。
自分がこんな状態で子供なんて生まれたら、私も子供も共倒れだと思った。
祖父の家へ行った次の日の朝、布団の中で夫が言った。
「今日だけは泣いていいから」
昨日の事を言ったんだろう。
泣きたければ勝手に泣くし勝手に笑う
あんたにいちいち許可をもらう事じゃない。
と、何故あの時言えなかったんだろう。
なんで翌日だったんだろう。
「世界一役立たず」と聞いて、30年以上前に言われたこの一言が浮かんだ。
(あっ、結局私ら子無し夫婦です)
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