Teruki Okamoto
LOSTSCAPE 当日パンフレット文章

LOSTSCAPE 当日パンフレット文章

Teruki Okamoto

あなたはこういうことってありますか?

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 空間を所有したい、と思うことがよくあります。
 写真に撮って記憶しておきたいとかではなく、空間と一体化したいというか、それに近い感覚です。とにかく、「ここを自分のものにしたい」という気持ちにかられることがあります。自分の中に取り込んで大事にしたいというより、その場所に自分の一部を残していきたいという感覚。

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 なつかしさや寂しさ、といった気持ちが好きです。本当は知ってた、本当は持っていた。ということを確認する感情だと思います。


 どんな映像を撮ろうかといろいろなところへ出かけ、色々なものをもう一度見つめ直してみました。そうすると、知っていたはずの風景は全く知らない顔を見せ始めます。鉄橋のサビ、オレンジ色の逆光に照らされる家。


 ああ、こんな顔をしてたんだ。


 知ってた。今までそのことに気づかなかったけど、知っていた。その場所も、その顔も、そして湧き上がってくるこの感情も、僕は、持っていたんだ。

 それがとても幸せです。

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 パフォーマーの間でよく使われる言葉に、世界観という言葉があります。
 世界観、というのは平たく言うと「ルールがある状態」だと思っています。


 映画などで空が赤い世界の物語をやってるとして、それを見ている僕らは意識的にではなくても「画面外にも空の赤い世界が続いている」という暗黙の認識を持ちます。


 例えば、「猿の惑星」を「10分くらい車を飛ばせばマクドナルドがあって人が働いている」と思って見ている人はいないわけで、画面に映っていなくても「どこまで行っても砂漠と猿しかいない」というルールが、その世界にいるときは想像の前提にくるわけです。


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 大学で美術史を専攻していました。
 もちろんそもそもが好きで選んだ専攻でしたが、意識が大きく「美術を見るのって面白いな」と変わった教授の言葉がありました。


「和歌や短歌には桜を歌ったものが数限りなくありますね。そういうものを僕らが聞くとき、僕らは歌に詠まれている桜だけを見るわけじゃない。今までの人生で見てきた桜を思い出しながら『あぁ、きれいだよね』と共感するんだ」


 とても当たり前のことかもしれませんが、当時の僕はとても衝撃を受けたのを覚えています。
 何かを見たとき、感動したとき、僕はどの時の桜を思い出しているんだろうか。

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 僕を見ないでください。
 腕の角度、ボールがいくつ、どんな捕り方、そんなところではなく、ぜひ、自分の中に湧き上がる感覚を観察してみてください。


 綺麗、つまらない、困ってそう、悲しそう、楽しそう。

 と、どうして思われたのでしょうか。


 きっとそれは、言葉を発することのできる時間ではできないことで、それが桜と出会うということだと思います。

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 あなたはそういうことってありますか?

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Teruki Okamoto
juggler performer based in Japan