未完小説(ファンタジー)

調子に乗って、未完成品の在庫一斉処分をしようかなと。
題材はファンタジーです。
あんまり剣と魔法のファンタジー(ゆえんRPG系)が好きではないので何か自分が好きになれる方向で書けないかと思って、実験した感じ。
これもさあ、これからと言うところで途切れてます。
そんなんばっかです。




勇者様 ああ勇者様 私たちをお救いください
あの魔の手から
あの拭う事の出来ない恐怖から
あの世界を覆う暗闇から

神は私たちを見捨ててしまわれたのでしょうか
いいえ
神は私たちをお救いにならないのでしょうか
いいえ
ああ勇者様 勇者様 どうかお救いください 

あなただけが希望なのです
世界を救う光なのです
ただ唯一の正義なのです

ああ勇者様
勇者様が剣を振り下ろし
勇者様が盾をかざし
勇者様がその肉体で
勇者様がその御手で
私たちをお救いくださるのです

ああ勇者様
たとえ身が朽ち果てようとも
たとえ身が砕け散ろうとも
たとえ身が崩れ去ろうとも
きっときっと勇者様はお救いしてくださる

ああ勇者様 ああ勇者様
この世で一番勇敢なお方
ああ勇者様 ああ勇者様
この世に舞い降りた神の御使い



 長きに渡り、人々は血を流し続けていた。臓物を撒き散らし腸を字の如く煮え繰り返されていた。襲い来る怪物どもは小枝を軽く折るように悉く人をあしらっていく。奴らの後に残るのは山ほどの頭蓋骨と骨と荒れ果てた領土ばかり。それほどに被害は甚大であった。

 頭を悩ませるのは各国の王たち。民衆はいつやって来るかも分からない恐怖におののくばかりでなんら打開策はない。だが、こうしている間もにも大地は侵食されているのだ。民衆は食いちぎられ、身を引き裂かれ、物言わぬ骸骨と化していくのである。そんな由々しき事態に一人の王が立ち上がるのだった。

「なんとかならんのか!」

 大陸の中でも南の辺境のとある小国、ティタム。その宮殿において、国王は苦言を呈していた。彼は人一倍正義感があった。また魔族どもを憎み嫌っていた。しかし、ここは勢力も戦力もひときわ他国よりも見劣りする国である。つまり国王がどんなに世を憂えたとしても、他の国には負け犬あるいは腰抜けの遠吠えにしか過ぎないのだ。彼はそれが気に入らなかった。

「あぁなんということであろう! 民は、全世界の民衆は今も阿鼻叫喚のさなかだ! なんとかせねば! なにか、なにか手立てはないのか?」

「お言葉ですが、国王」

 側に長年仕える宰相が恐れ多そうにその口を開く。

「なんだ、ラドウィク」

 王は振り向き、宰相に顔を向けた。

「国王。陛下のお考えはまさに世を救うためのものと思われます。しかしながら、その為にはまず世界が一つになることが大切であるかと」

「馬鹿な! それが出来るのであれば、これまでに世界は混乱しておらん。まったく奴らは何も分かっておらぬ」

「ですが、わが国のみでは…」

「分かっておる、分かっておるのだ、ラドウィク。しかし、何とかせねば世界は終わってしまうのだぞ。それを黙ってみていろというのか?」

「滅相もありませぬ。しかし、わが国とて小国とは言えどかつては魔術に長けていることで名を馳せた王国ですぞ」

「それがなんだというのだ。過去は過去。今こうして流れる現在をどうにかせねば、栄光も露と消える」

「話を最後までお聞きくだされ。実はわが国には世を救うための魔術が存在していたのです」

「なんだと?」

 そして、王は宰相の話に耳を傾けた。

 所変わり、ティタムの小村。

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