デレマスコラボのT3-01とはどういうものなのか

去る2019年11月9日、シンデレラガールズ7thライブ名古屋公演にて、TAGO STUDIOのヘッドホンT3-01とのコラボレーションが発表されました。

その後2020年2月の大阪公演に合わせて予約開始、夏頃発売の告知がされ、今に至ります。
この記事を読まれている皆さんも、「コラボのすげー高いヘッドホンが出るらしい」ぐらいはご存じの方が多いかもしれません。また、ヘッドホンに興味があれば「制作現場でも使われているらしいベースモデルの評判はどうなんだろうか?」と調べられた方も居たでしょう。

ですが、ベースモデルからして情報がそこまで出てこないのです。

気付けば7月も後半。発売は8月と言われていますのでもう間近です。そこで、自分なりにコラボを軸足とした記事を一本書いてみることにしました。

なお、本コラボモデルは即日完売しており、現在は注文することができません。本記事は「勢いで予約したけど結局どういうものなの?」「買えなかったけど追加生産分は狙うべき?」という人向けの予習的な記事です。

そもそもTAGO STUDIOとは?

TAGO STUDIOとは、群馬県高崎市にあるレコーディングスタジオです。高崎市も運営に参画しており、市民スペースを兼ねたカフェも併設されています。
e☆イヤホンさんの記事にベースモデルの経緯も含めて詳しく書いてありますのでぜひ読んでみてください。

このスタジオの設立者である多胡邦夫さん(高崎市在住)が、同じく高崎市にあるヘッドホンの設計・製造を手掛ける株式会社TOKUMIと手を組んで2017年に世に送り出した第一作目のスタジオモニターヘッドホンがT3-01という訳です。

なぜ情報が少ないか

なぜ検索してもあまり情報が出てこないのか?それは生産数の少なさにあります。組み立てと調整は高崎で行われ、最終的に聴感テストを多胡邦夫さん本人が行うという念の入れようで、そもそも数が全く出てきません。(そして、それはコラボモデルでも例外ではありません。)

ベースモデルの公式通販での限定数販売は毎回数分で完売することが多く、狙って買わなければ手に入れることができませんし、
各専門店も基本的に「在庫無し。入荷の順番待ちなら予約可能。」という状態で、パッと買ってコンスタントにレビューをするような人達の手に渡らず、また、「おすすめしたところで買えない」というのも現象に拍車をかけています。

とはいえ、そうなったのは最近の話で、発売当初はそこそこに買えました。(日本コロムビアのスタジオに何本もあると言うのはその時期に買っているからです。)ヘッドホン、それもスタジオモニターともなると大御所メーカーがガッツリと幅を利かせており、いちレコーディングスタジオの名を冠した第一作目の本機がそう簡単に広がる訳は無かったのです。

そこで、アンテナの高い人達には「これヤバいぞ」という地道なクチコミでいつの間にか評判がすでに広がっており、不特定多数に勧めるには供給が全く足りないという現在の状況に至る訳です。

その特色は

結局気になるのは「どういう音が鳴るのよ?」というところでしょう。
ベースモデルを1本持っているので、そちらでの個人的な感想を書いておきます。

・圧倒的な透明感
聴いてまず感じるのがこれです。密閉型ヘッドホンの宿命「ボワつき感」がありません。普通はドラムが鳴ったり弦楽器が響いたりするとそれに合わせてボワッという跳ね返りのような音がするのですが、それが無いのです。
どのようにこれを実現しているのかは見当がつきませんが、多用される「音が見える」という言い方の屋台骨を担っている重要な要素です。

・広い音場
こちらも密閉型の宿命「頭のど真ん中で全部まとめて鳴ってる感じ」がありません。もちろん開放型と比べれば狭いのですが、どこで何が鳴っているのかを干渉無く聞き分けることができ、必要十分です。

・ボーカルの表現力と絶対的な定位
自分が一番の特色だと思うのがこれです。
低音に揺らされ高音にかき乱されることが多い中域のボーカルをど真ん中にガッチリつなぎ留め、とても良く表現してくれます。特に感情表現が入り混じる声の抜け際、息と一緒に抜ける瞬間が絶品です。
楽曲制作でボーカル収録時のモニターにも使われているというのも納得できます。

・"低音"を再定義する低域表現
一般的なヘッドホンからすると低域がかなり独特な鳴り方をします。というのも、前述のボワつき感が無いため、低音がかなり素直に鳴るのです。
ドラムの場合はアタックから抜けまでがきれいに、ベースは弦を弾く感じが、打ち込みであれば波形が見えます。このことで、低音の表現でよく言われる「ドンドン」「ズンズン」「ブンブン」というオノマトペに収まりきらなくなります。ここもぜひ聴いてみてほしいポイントです。

ここまでの品を第一作目で仕上げてきた多胡邦夫さんのこだわりと、とんでもない無茶を聞いたであろう株式会社TOKUMIの技術力と苦労に本当に頭が下がる思いです。

ここが気になる

音に関してはベタ褒めですが、もちろん気になる点はあります。

・アジャストがフリー
よくあるヘッドホンはカチカチと段階的に左右の長さを調節する機構が付いており、特に多人数で共用したりするスタジオモニターではすぐに自分好みの位置にできるようにこの部分に目盛りが振ってあったりします。
T3-01はそれが無段階調整となっており、目盛りも無いため完全に目分量と装着感でどうにかする仕様です。動きはスムーズかつしっかりしているのですが、ベストポジションの復元には一手間かかります。

・ケーブルのタッチノイズ
ケーブルの外皮がかなりしっかりした布スリーブなので、こすれた時に結構なタッチノイズが伝わってきます。特にケーブル同士でのこすれ(左右分岐部分のヨジレで起きやすいです。)でギロのような音が鳴るので、結構気になります。
このタッチノイズ低減のためにリケーブルをしてもいいかもしれません。

・両出しケーブル
これもスタジオモニターとしては珍しい仕様で、左右のハウジングからそれぞれのケーブルが出ています。直下に垂れ下がるケーブルが2本になる上に、純正ケーブルは左右分岐後も径がほとんど同じ(つまり太い)なので、結構気になります。

・装着が若干シビア
耳への当たりが非常にソフトなことの裏返しなのですが、ベストポジションを探す際に「当たり方が変な感じ」「ここじゃ後で耳が痛くなる」が使えません。音を出しながら探した方がいいかもしれません。

・遮音性が低め
密閉型としては内外どちらの方向でも遮音性が低めです。外音は漏れてきますし鳴らした音も漏れます。基本的に屋内で落ち着いた状態で聴くヘッドホンです。

9万円の価値は?

TAGO STUDIO T3-01 IM@S-CGは販売価格89,800円で、ベースモデルの59,400円とは約3万円の開きがあります。音についてはベースモデルから何も変更がありませんので、

・コラボレーションパッケージ
・ハウジングの楓材のペガサスマーク彫り込み
・ヘッドバンド
・専用収納ケース
・ハイレゾ音源入りUSBメモリ

が完全に3万円の内訳となります。彫り込みやヘッドバンドについてはこれまたe☆イヤホンさんの記事が出ていますのでそちらをどうぞ。


個人的にはハイレゾ音源が何かが非常に気になっていますが、「これで3万円分?」という方はベースモデルがいいでしょう。普通のコラボモデルとは異なり、「ベースモデルで音作りをしている」というバックグラウンドがあるため、それもまた一つのアプローチなのではないかと思います。

(T3-01には1台ごとにシリアルナンバーが刻印されており、コラボモデルは別カウントになったりする可能性があります。ここら辺の細部については実製品を見てみないと分かりません。)

ぜひ試聴を

この記事を見て気になった方はぜひ店舗でベースモデルの試聴をおすすめします。試聴機はe☆イヤホンやフジヤエービックをはじめいくつかの専門店に用意されています。
他の試聴機会というと、ポタフェスというポータブルオーディオ関連のメーカーが一堂に会してとんでもない量の試聴が一気にできるという夢のようなイベントがあったのですが、2020年は昨今の事情により秋まで中止が決まり、次回は冬を予定されています。(以前のポタフェスでコラボモデル試作機の試聴展示がありました。)

好みの問題はありますが、T3-01は人によってはちょっと聴いただけで惚れ込む魔性のヘッドホンです。機会があればシンデレラガールズのお気に入りの1曲でぜひT3-01を味わってみてください。
そして惚れ込んだのであれば、追加生産分にチャレンジするのもいいかもしれません。

最後に

これまで二次元コンテンツとヘッドホン・イヤホンのコラボレーションは数々ありましたが、まさかスタジオモニターヘッドホンを送り込んでくるとはと発表当時はとんでもなく驚きました。
ですが、EDMから演歌まで様々な曲がリリースされているシンデレラガールズが"音"をテーマにコラボするのであれば「制作時に使用されているスタジオモニターヘッドホン」しか解は存在しないのではないでしょうか。
「作った音をそのまま届ける」という理想を実現しようとする日本コロムビアの皆様に敬意を表し、到着を心待ちにしています。

次回は「T3-01ってどう使えばいいの?」をテーマに記事を書ければと考えています。

→書きました。


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