mRNAワクチンによる局部の遅延反応

DEUTSCHES ÄRZTEBLATT INTERNATIONAL aerzteblatt.de 掲載記事より
Dtsch Arztebl 2021; 118(14): A-722 / B-609

フランクフルト大学病院
セバスティアン・ヘール、サンドラ・チーゼック、バルトツ・マリジエヴィッツ、クリストフ・ケーニッヒ、サビーネ・ヴィッカー

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COVID-19mRNAワクチンの接種から数日後に局部での皮膚反応が起こる可能性がある。通常では一時的なものであり、外用治療が可能で最終的な免疫獲得において影響するものではない。

今現在ドイツでの薬事承認済みのCOVID-19用のワクチンは4つ、アストラゼネカ社のベクターワクチン、バイオンテック/ファイザー社のComirnaty®、モデルナ社のCOVID-19 Vaccine Moderna®、2021年3月11日に承認されたジョンソン&ジョンソン社であるが、このワクチンはまだ使用可能ではない。(2021年3月29日時点)

予防接種直後のアレルギー反応は、mRNAワクチンとベクターワクチンの双方の第III相治験でみられているが、局部での反応の遅延ケースはあまりよく知られていない。以下は、フランクフルト大学病院の医療従事者でのmRNAワクチン接種時にみられた局部の遅延反応についての報告である。

ケース1 
大学病院の医療従事者42歳の女性で、幼少期にアトピー性皮膚炎があったこと以外には基礎疾患はない。1回目のComirnatyによる接種の1日後に接種部位の軽い痛みと微熱と頭痛がみられた。この症状は数時間後には完全に消えている。

痒みを伴う紅斑
6日目に接種部位での赤みが出始め、その翌日には著しい腫れと火照りが上腕全体に認められ、明確な境界線があり部分的には蕁麻疹様の紅斑、および丘疹と激しい痒みが現れている。これは、局部冷却とPrednicarbatによる外用薬治療後には数日以内に完全に消えたことが確認された。再度の発症の可能性と治療への同意、接種後観察の30分の延長などを考慮した上で2回目のComirnatyの接種が反対側の腕で行われた。

接種の翌日、上腕全体にはっきりとした圧痛を伴う腫れ、皮膚体温の上昇と痒みがみられ、 (Abb. 1)第二世代抗ヒスタミン薬の内服、丘疹はPrednicarbatとポリドカノール配合クリームで治療。ソノグラムでは、三角筋での皮下細胞部の浮腫性腫脹が認められた。全身症状はなく、所見は3日後に完全に消えた。

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ケース2
COVID-19 Vaccine Modernaの1回目接種の後に、60歳の男性医療従事者にみられたもので、(Abb. 2) 接種の28時間後に突然全身性反応が現れ、悪寒、倦怠感、頭痛、筋肉痛、吐き気を訴えるが、発熱はない。2日目に下痢。局部的には、接種の1日後に接種部位に5〜6cm範囲の硬結、蕁麻疹と痒みを伴う紅斑が認められた。8日、9日目では、はっきりとした紅斑が残っており、これが完全に消えることなく次の反応期に突入している。10日目から、激しい痒みが接種部位に現れ1〜2日後には改善が認められたが、硬結を伴わない表面的な紅斑と倦怠感の増加がみられる。著しい吐き気と頭痛、関節の痛みによって、軽い負担時でも困難を感じ、悪寒と軽い足関節の痛みも認められた。

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局部の皮膚反応
ケース3とケース4
ケース3(31歳)ケース4(29歳)も大学病院の医療従事者であり、Comirnatyの1回目の接種(ケース3 Abb. 3)、COVID-19 Vaccine Moderna接種(ケース4 Abb. 4) の10日後、もしくは7日後に局部での遅延反応が認められた。ここでも症状の治療が行われ、ケース3に関しては、免疫獲得を目的とする2回目の接種、ケース4ではこれから2回目の接種が計画されている。ここでは局部反応は全く起こらなかったが、2回目の接種4日後に著しい関節の痛みと、3日間日常生活に支障が出た、と報告されている。(「グラスを持つこともできませんでした」)

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遅れて発生するワクチンに対する反応はCOVID-19 Vaccine Modernaの第III相治験において発表されているが、Comirnatyの治験では明記されていない。頻度は、1回目の接種後(30420人のうち244人  0,8 %)のほうが、2回目(68人 0,2 %)よりも多い。

COVID-19 Vaccine Moderna接種後のワクチン反応は、1回目の接種後(4〜11日)によくみられ、臨床像は多様であり、場合によっては発熱のような全身症状が認められる。New England Journal of Medicineに掲載されたケース、12のうちの6ケースには2回目の接種時での再反応はなく、3ケースで軽度の、残りの3ケースで1回目の接種後に比べ重度の反応が現れている。

はじめ、細菌性細胞感染の疑いにより抗生物質での治療が行われたが、これは 組織病理学的所見からT細胞の過敏反応が遅延して起こったものである、と考えられている。時間的経過からみても、これはIgEではなく、細胞伝達性反応であることが明らかである。

重度の即時型アナフラシー反応は、Comirnatyおよび、COVID-19 Vaccine Modernaではみられ、アレルゲンとしては、ポリエチレングリコール(PEG、マクロゴール)が考えられるが、アナフラシー反応とPEGの関連性に関しては決定的なものはない。この生死に関わる反応の頻度は、バイオンテックワクチンでは、100万人あたり4、7ケース、モデルナワクチンでは、100万人あたり2、5ケースである。 以前にワクチン成分に対して重度のアレルギー反応が出た患者、および、1回目のCOVID-19ワクチン接種時に重度のアレルギー反応が出た場合にはワクチンの接種は行われていけない。

さらなる情報は、DGAKIのCOVID-19ワクチンとアレルギー、アレルギー協会との共同声明を参照のこと

まとめ
我々の大学病院の4ケースは、EU内で薬事承認済みCOVID-19用mRNAワクチンの接種において、遅延して起こった反応が確認されたものである。頻度においては女性に発生することが多い印象を受ける。著しい局部所見は起こった場合でも最終的には免疫獲得は終了、もしくは2回目の接種を予定している。

治療法としては、接種部位の局部反応の悪化の際には、局部冷却をはじめ、ポリドカノール配合薬の使用、必要に応じては、第二次世代抗ヒスタミン剤(ロラタジンなど)ステロイド外用剤のII群とIII群(Prednicarbatやモメタゾンフランカルボン酸エステル)が挙げられる。

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セバスティアン・ヘール
フランクフルト大学病院 医療ウィルス学

バルトツ・マリジエヴィッツ
フランクフルト大学病院 皮膚病学 アレルギー学 性病学

クリストフ・ケーニッヒ
フランクフルト大学病院 小児科

サビーネ・ヴィッカー
フランクフルト大学病院 勤務医

サンドラ・チーゼック
フランクフルト大学病院 医療ウィルス学


www.aerzteblatt.de/lit1421







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