ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(107)  2022/1/4(和訳)

ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 ベーケ・シュールマン

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残念ながら2022年の年が明けても引き続き、Sars-Cov-2、そして新しいオミクロン株に対しての不明な点はありますし、このポッドッキャストで取り上げて行くべきテーマはまだまだある状態です。それでも、まずは新年のご挨拶をいたします。皆様にとって、良い年、そして特に健康な年でありますようお祈り申し上げます。 隣国である、フランスとデンマークの様子が懸念されるところです。オミクロンが優勢になり感染者数が爆発しています。他のヨーロッパ諸国でも感染者が急増中ですが、イギリスはカーブが横ばいになってきました。ドイツではどうなのでしょうか?現在のパンデミック状況はどうか、終わりは近いのか。今日も、ベルリンのウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏にお話しを伺います。聞き手はベーケ・シュールマンです。

7日間平均発生指数と感染者数が気がかりな毎日ですが、ロベルト・コッホ研究所が7日間連続の感染者の増加を発表しました。239,9ですが、誰もがこれが本当の数値ではない、と思っていて、というのも、年末年始には検査をする人も減りますし、学校も休みですから学校での検査もありませんでしたし、そして、保健所のなかにはデータを出さなかったところもあります。ラウタバッハ保健相も、実際の数はこの2倍、3倍であろう、と言っています。先生は、この数値をどう思われますか?

勿論、この数値はまだ不完全ではあります。これは人々の行動とも関係があるでしょうし、保健所の未処理データのせいでもありますが、1、2週間にはまた安定した数値が出てくるでしょう。去年もそうでしたから特に驚くべきことでもありませんし、他の国でもそうです。ここから修正して予測もできますが、無理にそれをする必要もないかと思います。今はでている数値でやっていくしかありません。

あと1週間、2週間できちんとした数値が出てくる、と言うことですが、現時点での数値からオミクロンの増加に関してはなんらかの傾向が読み取れますか?

ドイツでもオミクロンのケースは増えています。他の国よりはゆっくりとした増加です。ロベルト・コッホ研究所が発表した最新のデータではほとんど全ての州でまだ50%以下で1週間ごとに倍になってきていますので他の国よりは緩やかな増え方だと言えるかと思います。現時点では大体4日で倍増、という試算ですが、他の国での初めの増え方は2日で倍増、もしくはもっと速い速度でした。このように、単に数だけをとるのではなくて、何が起きているのか、ここからどのような理解をするか、というところが重要です。これからみていくべき点は、重症化と入院率、そして集中治療病床がどうなるのか。これも他の国をみながら、、これからいくつかみていこうと思いますが、、この感染者数から割り出せるものに疾病負荷というものがあります。これが徐々に分離きている、というのはこのポッドキャストでも話したと思うのですが、集中治療の負担が減っている、というのはブースターの効果です。これがまず一つですが、まだ不明確な部分は、、この点についてもこの後で話ますが、、これらの数値から何を理解すべきなのか。まず、ドイツでもすでに分離は起こっている、ということ。もう一つは増加です。他の国での増え方は凄まじく、流行の、、壁、あまりにも急激な増加なので「壁」と言われていますが、、そこまでの増加はドイツではみられません。そのような傾向は、たとえ数的に不十分であってもみてとれるものですが、ドイツでも増えてはいるものの速度的には緩やかなのです。ここを正しく理解することです。年末の他の国の状況との比較をしても、根本的なところでの感染防止対策が違いました。まずは、南アフリカから始まって、次にイギリスでしたが、イギリスではもうすでにほとんど対策がとられていませんでした。というのも、秋の終わりくらいにブースター効果が出てきて明らかに疾病負荷が下がった。つまり、死亡率が下がってきて、デルタ流行の最後のほうではブースター接種率がドイツよりも高かったのです。高齢者の接種率も高くそこでも疾病負荷が下がっていました。そのようなこともあって、イギリスでは冬に向けてこれ以上感染防止対策をしなくても良いだろう、という判断だったのです。死亡率がどんどん下がっていく矢先の、、オミクロンでしたが、その時には、パブは大入り満員、大きなイベントも開催されるし、若者は動き回り、学校は対面授業、公共交通機関のなかでマスクをする人はまだいたものの、その他のところではほとんどマスクもつけない。そのようなシチュエーションだったわけで、これはドイツとは全く異なります。11月末を思い出してもらいたいのですが、ザクセン、チューリンゲン、バイエルンで、集中治療病棟がどんどん埋まっていって大きな問題へと発展していきました。何か手を打たなければ、ということで、州が連邦の対策とは別に対策の強化に踏み切りました。これは、、ほとんど、ロックダウンに近いものだった、と言っても良いかもしれません。ロックダウン、という言葉を使うべきなのか、、という点では意見は分かれるところでしょうが、、ロックダウンのような状況下では感染拡大は大幅に削減されます。その他の州でも危機感を保っている間にオミクロンが入ってきたので、、登録数が少ないとかそういう問題ではなくて、、チーゼック先生もこの間フランクフルトでの様子などの説明をされていましたし、他の専門家の先生方も同じような報告をしていましたが、、そのような理由からドイツでは一気に増えなかった、これは単にそのような印象があるだけではないと思います。イギリスやデンマークなどの国と比較すると、、デンマークも比較するには重要な国です、、というのは、オミクロンの増加をしっかりと記録している国なので、、デンマークも大変高い予防接種率によってほとんど対策がとられていなかったのですが、それに対してドイツはまだ対策を続行している最中でした。これが、多分、ドイツでの増加が緩やかな理由である、と思っています。「数が把握されていない」「盲目飛行だ」と騒がれていて、「大きな問題になる」とも言われていますが、、勿論、1月中に数は上がります。上がる理由は2つあって、まずは、今、発生指数のカーブの谷の部分にいて、そこからオミクロンが主導権を握っていくことになる、ということ。これから50%を超えて1月末までには優勢になるでしょうから、そうなれば割合としての増加ではなくて発生指数全体が日に日に増えていくことになるのです。そうなっていきます。そこから国民に説明していかなければいかないことは、「この状態をどれだけ続けていくことができるのか」つまり、病院はどのくらいもつのか。社会はどのくらい耐えることができるのか。そして、少し暖かくなるまで果たしてこの状態で頑張れるのか、ということです。ですから、やはり政治的にも接触制限などを持って介入していかなければいけなくなる部分も出てくると思います。多分、そうしていかなければいけなくなると思うのですが、それでも、他の国でのように突然急襲される、という状態ではなくて、この辺りは注意深くみていくべきですが、、そのような状況でも急激な増加、というもの自体にも限界がある、ということです。

先ほど、新たな接触制限をあげられていましたが、今週、また連邦会議が行われます。ラウタバッハ保健相も対策の提案があるようですが、先生はどの対策が感染のカーブを緩やかに抑えるのに有効だと思われますか?

それについての答えを出すことは控えます。というのも、ここで役に立ちそうな対策のリストを読み上げるつもりはありませんし、もうかなりいままでの経験値はあるはずです。勿論、一番強力な対策は学校の閉鎖であることは確かで、学校のなかでウィルスが拡大する、ということはデータ、エビデンスの裏付けがありますかし、クリスマス前のデルタ流行でも学校に感染が集中していて、そこから大人に伝播していく、ということが明確に出ていました。そこのメカニズムを封鎖することによって、感染源の一つを断ち切ることは可能ですが、保護者が在宅する、テレワークを実行したり、ということも同時に起こりますので、このような対策をしたい、と思っている人はいないでしょう。他にも、ここまでの効果は望めなくても効果がる対策はありますし、広範囲での効果が望めるものもあります。例えば、職場で、テレワークの推奨ではなくて、テレワーク規定にするなどして強化したり、公共の場でも大きな集会は避ける。例えば、小売店などでは換気システムなども導入されていたりしているでしょうし感染リスクは高くないでしょう。勿論、レストラン、バーなどでお酒が入って接触距離が近くなったり大音量の音楽のせいで大声で話さなければいけなかったり、、そのようなシチュエーションではウィルスの伝播が起こります。このようなことは、本当にもうかなり前からわかっていることです。それをどう政治が折り合いをつけていくのか。それは政治にまかせるしかありません。

この感染者の増加と対策に関しては、私の周りでも2つの意見に分かれている印象をうけます。「オミクロンは軽いから」と言っている人もいますが、オミクロンの重症度に関してはこれから取り上げていこうと思います。その前に、、もう一方では、「こんなに感染が拡がっているのだから私は自ら自粛する」という人も多いです。自分の周りでも感染者が出たり、オミクロンに感染したり、、そのような時には、自主的に接触を避けたり、レストランに行かないようにしたり、、としたほうが安心感はあります。先生の周りもそのような人が多いですか? そのように意識が変わることによって行動様式に変化が起こり、そこからの効果、というものもありますよね?

それは私の周りでもそうです。この意識の変化は、移動性、というものにも現れます。移動性は測ることができるものですが、感染者の増加が発表された後には、移動性は下がります。これは危機感が高くなった結果です。ニュースなどからの情報よりも、自分の周りでの出来事、知人友人に感染者が出た、職場の同僚が感染した、などという直接な個人的な情報のほうが効果があるでしょうし、感染を予防したい、と考える思慮深い人たち、そしてそれが可能な人たち、つまり職種的にテレワークが可能な人たち、家族構成的に他の世帯に行く必要がない人たちは自主的に接触を削減しますから、その効果は現れます。興味深いことに、感染が爆発したところ、例えば、ロンドンや南アフリカで急激にオミクロンが増えた場合にも、その後でまた急激に減少している。この減少の原因には幾つか説がありますが、まずは個人の意識の変容によるもので、先ほども挙げたように、「感染が増えているから家にいよう」という危機感によるものです。さらに、私たちは社会のネットワークのなかで生活していますから、誰もが小さな限られたネットワークに属します。そのネットワークのなかで感染が充満し全員感染したとしたしたら、、進行している南アフリカとかがそのような状況ですが、そうなればそのなかでは感染する人がいなくなるわけです。もしくは、隔離される。そのような原因が考えられますが、私が興味深く思うのは、この変異株の拡大数学的、拡大速度が少しいままでと、、例えばデルタとは異なるのではないか、ということ。勿論、まだデータは出揃ってはいないのですが、このようなウィルスのR値というのはどのように出されるのか、と言う点では、成長率と世代時間の指数からなるオイラー数、つまり、成長率x世代時間のオイラー乗が、今回の変異株ではそれが若干短くなっているのではないか、と言われています。まだうっすらですが、この世代時間が短くなっているであろう、と疑われる傾向がいくつかあるのです。

世代時間とは何でしょうか?

世代時間とは、単純に感染から次の感染までどのくらいかかるか、ということです。つまり、今、私が感染したとして、次の人に私と同じ症状が出るまでにどのくらいかかったか、と言えるかと思います。これは、潜伏期間ではありません。潜伏期間、というのは、感染してから症状が出るまでの時間です。これに関しては比較的よくわかっていて、最新のケースからもオミクロンの場合には若干の潜伏期間の短縮がみられます。世代期間も短くなっているのか、という点に関してはまだはっきりしません。もし、そうだとしたら、この変異株のR値が多少小さくなることになり対策の効果もあがることになりますが、、ここの理解は少し難しいかもしれません。デルタと比較するとわかりやすいと思いますが、特定の対策による感染者の削減がデルタよりもオミクロンのほうがはやかった、というところから、世代時間もオミクロンのほうがはやいのではないか、ということが予測されます。これを具体的に想像してみると、、私が良く使う車での例えですね。世代時間が短くなったウィルスの成長率は、時間に対する世代数、つまり、1週間のなかでの数で決まります。これは、2つのエンジンを比較するのに似ていて、もし、どちらかのエンジンが排気量が少かった場合には同じ力を出すためには回転をはやくしなければいけません。小さいほうがオミクロンである可能性があって、もう一つのエンジンがデルタ。こちらの排気量は大きいです。一回転における感染ケースがこちらのほうが多い。しかし、回転は遅い。最終的にはどちらも同じような結果です。しかし、力の発展的に、つまり、感染を引き起こす、という面では、違うます。少ない排気量で回転が速いエンジンにはブレーキがかかりやすい。動いている全体量が少ないので。全てをこのようには例えれませんが、数学的な計算は大体このように比較的できるかと思います。

ということは、、オミクロンは短い期間中にたくさんの人を感染することができますが、その時間はデルタよりも短い、ということでしょうか?

そのようにはっきりと言い切ることはできません。というか、そういうことではなく、オミクロンに感染した人の感染性はデルタと大体同じくらい持続すると思われます。

そうですか。

ちなみに、もう一つ言っておくと、、この潜伏期間の短縮、という印象は、必然的に世代時間の短縮と同じメカニズムである必要はない、ということです。潜伏期間の短縮はデルタでもみられていましたので、多分、集団でつくられつつある免疫とも関係があると思われます。予防接種者が感染して症状が出た場合、ブレイクスルー感染ですが、オミクロンではこのようなブレイクスルー感染が起こりやすくなります。そして、経過時のウィルス量からみると症状が出るのがはやくなっている。これは研究内のデータからもその傾向があることがわかりますが、疫学的に考えても納得がいくことで、例えば、誰か免疫を持つ人、予防接種者などがこのウィルスでブレイクスルー感染をした場合には、免疫システムは瞬時に発動します。このウィルスに対する免疫記憶があるからです。免疫細胞が誘発されると同時にサントカインが出て症状がですます。ですから、免疫を持つ人のほうが免疫がない人よりも症状が出る速度が若干速い、というのも当然なことだと考えられます。ウィルスが体内に入ってきても私たちは気がつきません。ウィルス量がピークに達した後で徐々に具合が悪くなっていく。SARS-CoV-2の感染がそのように経過する、ということはかなり前からわかっていることです。私のラボのデータからもこのタイミングの若干の移行がみられていますので、予防接種者の場合にはウィルス量のピークの後に症状がついてくる、というのはなくて、ピークと同時、もしくはピーク前に症状が出始める傾向があります。

何日くらい早くなのでしょうか?

これはピーク時から1日、2日、3日くらいのズレだと思われます。これは私、そして私の研究チームが確認しはじめている傾向なのですが、これらのデータもこれから統計的に安定してくるところです。統計的に安定し、疑いのないデータとして検証されてから論文としてまとめられますが、研究の多くではこのように徐々にデータが集まってきて観察していくうちにエビデンスとして出来上がって来るものなのです。研究者はそれを何度もしていくうちに途中の傾向からでも勘と鼻がきくようになってくるようになりますから、それを他の研究グループなどと意見交換したりしてデータを固めていくのですが、この時点ではまだ学術的な論文にするには早いのです。このパンデミックにおいては、残念ながらこのような理由から学術的な揺るぎないエビデンスは数ヶ月後にしか発表できない、というようなことが多々ありました。「この知見が必要だ」という時に使えないのです。

一度、私の知人友人の話に戻りたいのですが、多くの人は、「オミクロンは軽度の場合が多いのだから、もうそこまで騒ぐ必要はない」と言います。私のように予防接種をしている場合には、万が一感染したとしても軽くするものなのでしょうか?これはもうすでに検証済みですか?

そのようである、ということは段々明らかになってきました。いくつもの異なる論文のデータがありますが、それらを全てあげることは割愛します。クリスマスから年始にかけてかなりメディアで報道されていましたし。そのなかから、一つだけとりあげると、これはクリスマス直前のデータベースによるもので、、ということは、これは引き続き分析されていますので、今のデータを加えるとまた少し違ったデータになるとは思いますが、、これはインペリアルカレッジのレーポートNr. 50で、かなり大規模な数をベースにしたものです。重症度をカテゴリーとして把握する、というのは、イギリスのデータシステムにおいてはかなりよくできることなのですが、入院ケースの分析です。つまり、陽性反応が出てから一定の期間内で入院するケースですが、まずは、予防接種の有無に関係なく言うと、ここでデータとして反映されている人たちはいわゆるPillar-2テスト、というイギリスの外来検査法で検査されたケースで、オミクロンとデルタで感染した場合の比較では、入院する確率は、オミクロン感染者では0〜30%低いとあります。つまり、違いがみられなかったケースもある、ということです。しかし、ケースによっては30%のメリットがでている。入院の確率がオミクロンに感染した場合にはデルタに感染した場合と比べて30%少なかった、ということです。これを再感染で修正すると、、2回目に感染した人の場合、ということですが、、その場合にはリスクは55〜70%の削減で、これは大体南アフリカからのデータとも似たような傾向です。予防接種をしていない場合にはどうなのか、という点は興味深いところですが、予防接種を打たずにオミクロンに感染したらどうなるのか、ということはドイツでも大変重要で難しい問題で、これに関してのデータは現在この論文のものだけです。先ほども言ったように、ここにはワクチン接種者と感染回復者も含まれていますから、そこからワクチン未接種者だけを統計的にピックアップする、というのはなかなか困難ではあるのですが、、その計算をすると24%の削減、という数値が出ます。予防接種をしていない場合には、オミクロンに感染して入院するリスクがデルタでの感染した場合に比べると24%削減される。これは、ドイツに残念ながらいまだに存在する多くのワクチン未接種者にとって朗報だと思います。60歳以上で予防接種をしていない人は300万人いますから、引き続きこれは問題です。今後は、高い発生指数を許容していく、という政治的な流れになっていくだろう、と予測されますので、この人たちがこれからオミクロンに感染する可能性は高いです。全体的な重症度が下がれば、感染はワクチンによる保護がなく免疫を持たない層に集中しますから、これはそういう意味では朗報だと思います。少なくとも、24%の入院リスクの削減、2回の予防接種をした人では34%の削減、3回接種後には63%の削減です。様々な研究からわかってきたことは、ワクチン未接種者と、2回接種者との差が10%ですが、2回と3回とでの差はほとんど倍だ、ということです。ですから、オミクロンへの保護は3回の接種で得られるものであり、ブースターの重要性は明らかなのです。例えばイスラエルなどで一番リスクの高い層、高齢者での4回目の接種が検討されているのもそのような理由からです。

ブースターについてはまた後から伺いますが、その前に軽度の疾患経過についてです。これはかなり話題になっていることでもあるのですが、ここでの定義がかなり異なる、または、人によって「軽い」と感じる程度が違うと思うのです。「軽度の疾患経過」というのがどのくらいであるか、というご説明をいただけますか?

確かにそうですね。定義はありますが、それは公にはきちんと使われていない気がします。軽い感染、と聞くと、多分喉が少し痛いくらいを想像する人が多いかと思いますが、そうではありません。軽い、と言っても、軽症と中等症があって、軽度と中等度の疾患経過である、と言う際には、これは重度の経過ではない、ということを意味します。一般的に使われるものとしては、例えば、アメリカやWHOが使っている定義によると、軽度の疾患経過には、呼吸困難や他の肺炎症状は除く、発熱を含む全ての症状が含まる、とあります。ここが重要な違いだと思います。つまり、一般的なウィルス性感染と同様に、熱もでて動くのがだるく、ベットに寝ていなければいけないくらい具合が悪くても、呼吸困難はない。これが、軽度の疾患経過です。勿論、少し関節が痛かったり、喉が痛かったり、というケースも含まれますし、ほとんど自覚症状がなく、喉がいたいかな、程度もあるでしょう。しかし、ここでは症状はあります。酸素濃度、というパラメーターは計測できますが、、みたことがある人もいると思うのですが、、赤いキャップを指先につけて測る、あれですね。あれで指を挟んで酸素濃度をはかるのですが、94%以上であれば正常で、通常は98、99%です。有症状時には、少し負荷をかけた場合に呼吸困難に陥ることもありますが、このような場合には、自宅で療養していても「これは怪しくなってきたかな、、」と思い始めるでしょう。段々、肺機能が低下していき呼吸しづらくなってきてそこからさらに悪化したら入院しなければいけなくなるレベルです。ここまでが、軽症〜中等症です。

オミクロンがほとんどの場合、軽症から中等症であるということは、重症化して入院する人が少なくなる、ということですので、感染者数が増えても病院への負担はそこまで大きくはならない、ということではないでしょうか?もしくは、病院への負担があるとすれば、通常の一般病棟への負担で、集中治療ではないですよね?

たしかに、一般病棟から集中治療に送られる人は少なくなったとしても、病院全体の負担、救急外来の負担は引き続き大きいですし、病院のシチュエーションというのはそう簡単なものではなくて、「(集中治療の数が減るのであれば)一般病棟を中心に回していこう。病床を少し移動すれば完了だ」ということにはならないのです。

「一般病棟にベットを増やせば良いのではないか」と考えてしまいますが。

そうはいきません。病院では一般病棟で通常の医療供給、一般的な手術などがおこなわれているわけですから、そこで必要な病床というものがあります。ということは、この基礎的な医療治療においての負担が増える、ということは、集中治療の負担が増えて大きな手術が延期になったり中止になったり、という問題とはまた別な問題が発生してくるということなのです。一般病棟に負担がかかる、ということは、大きな手術だけではなくてほとんど全ての手術が行えないことになってしまいます。実際にそのような報告が出てきていますし、これは現時点での数がどうの、という話ではなくて、実際に病院でどのような問題が出るのか。例えば、ニューヨークからの報告によると、大きな病院は通常の医療治療を全て中止してコロナの治療に専念している、ということです。あまりにも大きな負担であるために計画を立てることも出来ず止めるしかない。つまり、全ての手術を、です。保証できないからです。さらに、これは少なくとも同じくらい重要な点ですが、病院の医療スタッフの欠勤です。医療ではたくさんのスタッフの確保を必要とします。このパンデミックがどれだけの負担を医療従事者にかけているのか、ということは十分に報告されていることとは思いますが、今、さらにそれが逼迫されているのです。そうでなくてもギリギリのところでやっていて、、勿論、医療従事者のやる気がなくなっているわけではありませんが、感染してしまったら欠勤するしかありません。オミクロンの流行は高い発生指数ですから、院内や日常生活で感染すると働けなくなる。この問題点が多くの国で、ドイツでも議論されているところです。隔離対策、隔離期間などをこのような医療現場での従事者の場合どうしていけばよいのか。介護士や医師が陽性であっても軽症だった場合には早期に復帰を望む人も多いと思うのです。「感染はしたけれど具合が悪くない。必要とされているから仕事に戻りたい」と。しかし、隔離規制があるのでそれはできない。もっと酷いのは、自分の子供が学校で感染した、という場合です。濃厚接触者として14日間自宅待機になってしまいます。その人が医師で病院で重要なポストについていた場合はどうすればよいのか。これは重要な問題です。これは病院だけではなくて、その他の医療現場、例えば訪問介護であったり、開業医であったり、ロジスティック、運送業者、交通機関などでもそうです。ここがこれから来る流行の波で懸念されるところで、重症度が削減されると、、重症度とは現時点での入院率のことですが、これは重症度のほんの一部でしかありません。まだ、この入院患者のなかからどのくらいの集中治療がでてくるかわかりませんし、ドイツでは特にワクチンの未接種層がありますから、その問題もあります。多くの国ではその心配はありません。例えば、イギリスなどをみてみると、入院率のなかの集中治療率が徐々に増加しているところですが、増加速度がかなり緩やかなためにそこまでの問題には発展しないかもしれない、という印象もあります。ロンドンなどの都市では急激な感染者の増加の後、カーブがなだらかになってきてはいますが、入院率というものは、常に後からついてくるものですのでその増加はあります。しかし、ここで分けて考えなければいけないことは、入院患者の半分以上がコロナ以外で入院している、ということです。入院スクリーニング、つまり、入院時には全ての患者が検査されますが、そこでの陽性者は半分くらいで、それと同時に以前のようにそこから直接集中治療に行く、というのも稀になってきています。これは勿論まずは良い傾向です。

そうですね。これは、私もよく聞くことなのですが、オミクロンが軽症である、ということからワクチンを打つことに恐怖を覚える人たちが「だったら、予防接種するよりも感染したほうが良い。私は20代だし、健康だからそもそも重症化するリスクも低い。デルタでもそうだった。オミクロンでもっとリスクが下がったのであれば好都合だ」と。個人のリスク、ということだけを考えば、これは一見、もっともな意見にみえますが。

それに答える前に、、間違った理解が拡がらないように重要な点をもう一度はっきりさせておきます。先ほど出したような病院の入院状態などのデータは、ロンドン、というシチュエーション的にドイツとは異なるところでのものだ、ということです。そして、まだ明らかになっていないところがたくさんあり、わからないところのほうが多いわけですからまだ話し合うことが困難ことだらけです。その中の1つとして、、まず、オミクロン株はクリスマスの1ヶ月前に入ってきました。直接南アフリカから、そして南アフリカと関係がある人たちによってです。そして、この人たちはまずその人たちが属する社会ネットワークのなかで感染を伝播したわけですが、クリスマスの1ヶ月前にアフリカから入国した人たち、というのは果たしてどのような人たちなのでしょうか?この人たちはどちらかといえば若年層で、ハイリスクな高齢者ではありません。そして、生徒の年齢層でもありません。学校の休みではなかったので。つまり、学校に行かなければいけない年齢層ではなかった。つまり、このオミクロンの流行は同時に起こっていたデルタの流行とは感染者の層が違った、と言えるのです。デルタは、クリスマス前には明確に年齢層が2つの山に分かれていました。生徒の年齢層とその親の世代です。その間や周り世代、高齢者での発生数は少なかった。今、オミクロンが子持ち世代と、そこから若干上の世代で拡がっていて、クリスマスから年末にかけて世帯内で拡散しました。入院率が遅れてみえてくるためにまだわからないのは、これから2週間後にこの上の年齢層への移行による影響がどれだけでてくるか、ということです。

ということは、先ほどの希望も少し減ると言うか、、感染者の年齢層が上がっていくとまた入院者数も上がっていく可能性がある、ということでしょうか。

勿論、先ほどの統計は年齢からの影響を取り除くように出されてはいますが、データは入院ケースのみを統計でまとめたものです。いまだに残る疑問としては、入院してからどうなるのか、という点です。入院してから集中治療が必要になるケースの割合はまだ出されていません。現在入院している若年層では軽症でも、2週間後に入院してくるもう少し上の中年層ではどうなのか。中年層以上では、オミクロン感染時に酸素が必要になり集中治療に負担がかかるようになる可能性だってあります。この点がまだまだはっきりとしないのです。2つ目の大きな疑問は、もっと若い世代ではどうなのか。つまり、休みが終わり学校が始まると、学校にオミクロンが持ち込まれます。オミクロンがデルタと同じように学校内で拡がってまた家庭内での感染を引き起こすのか。それともオミクロンの場合にはそうではなくて、これも仮説的ではありますが、、ウィルスの放出が少ないと仮定すると学校内での感染防止対策によってある程度抑え込むことが可能なのか。その辺りも今の時点ではまだわかりません。しかし、オミクロンがデルタと同じように学校で充満し家庭に持ち込まれることになれば、ロンドンで起こっている状態と同じです。つまり、急激な増加が一旦止まり横ばいになる。勿論、それからまた上がる可能性もありますが、この辺りもまだ現時点では明らかではないリスクです。ですから、イギリスの状態をみて「あぁ、そんなに騒ぐようなことではない」と決めつけるのは早すぎます。今、言えることは、南アフリカでの「そんなに騒ぐことではない」という見方も社会現象ですが、比較的時間も経っていますから南アフリカに関してはそうでしょう。そして、南アフリカでは真夏になりますので、気温が上がってきます。ヨーロッパでもそうだったように、アフリカでも夏の効果が出てくるところですが、それに対して、私たちは真冬です。そこが全く違います。

ということは、個人でのリスクを見た場合にもまだわからないことが多い、ということですね。若く、持病がない人たちのリスクが少なくなった、とは必ずしも言えない、と。

そのような質問でしたね。若い人たちは確かに「ウィルスは弱くなったのだから、感染しても問題ない」と考えがちでしょう。これには「論理的にはそうだね」と言うしかありません。ただ、これは比較的単純な考察ですが、、国民全体での割合と、個人個人の罹患ケースとは違うものだ、ということ。私が健康な20代だったとして、通常であれば、20代のほとんどが軽症で、オミクロンではさらに軽症かもしれません。しかし、私の場合にはそうではない可能性はあるのです。20代でも集中治療が必要になる人はいますから、全くそのような可能性がない、とは言えません。若く健康なスポーツ選手の罹患ケースをみていてもそれはわかると思いますし、軽症であっても何週間もトレーニングできなかったり、本調子に戻れなかったりしています。それはどうしてなのか?これは単なる気のせいなどではありません。これは、肺組織にダメージが起こるからです。肺へのダメージが起こることは前からわかっていることですが、これがかなり長く持続し、回復するのに何ヶ月もかかる。それは若い人も同じで、ここを無視するのであればそれはかなり無知である、と言えるでしょう。ワクチンをなんらかの馬鹿げた理由から打たない、とすれば、、私には全く理解できないことですが、、まあ、誰かに「ワクチンは危険だ」と言われたとか、単純にあまり深く考えないで過ごしていたとしたら、、感染して肺を壊すリスクがあるのです。そのリスクを進んで冒したいと思いますか?常識のある人であったら、そうは思わないでしょう。特に、今の若い人は健康に気を使っているひとも多いですし、若い頃からタバコを吸い始める人の数はかなり減っています。もし、若気の至りで始めたとしてもかなりはやくにやめる人も多くて、その時には「健康に悪いからやっぱりやめよう。長生きしたいし」と考えれるのに、コロナに関してはそこまでの考えに至らない人もいる。Covid感染の、、それがたとえ軽症であっても肺へのダメージは喫煙でのものとは比較になりません。同じダメージを与えるだけのタバコの本数を人生で吸うことは不可能です。

どのような考えが背景にあるのか、ということを考えてみた時に、「ワクチンのほうが感染よりも身体に悪い」というものがあると思いますし、そのようなことを聞いたり読んだりします。先生もこの間ツイートされていましたね。巷でよく言われる「感染が免疫を強くする」というのは、間違っている、ということですよね?

そこです。感染が免疫を強くする、というのは、『ステーキを食べることによって消化機能を強くする』ということに等しいのです。免疫機能、というものは、存在するものであって、「強く」するものではありません。消化機能やIQと同じです。基礎的機能であって強くすることは基本的にできません。自分のIQをなぞなぞの本を買って高くする、ということはできませんよね。脳トレ、とかいうものは、普段頭をほとんど使わない人には少し効果があるかもしれません。少なくとも定期的にクロスワードなどをするのも良いかもしれませんし、若干の効果はあるかもしれませんが、ここでの話は「感染」です。それは、新聞や本を読めばIQも上がっていく、といっているようなもので、そんなことはありえません。脳があって、そこには基礎的な知能があるのです。多くの人が、免疫機能と勘違いしているのは免疫記憶のほうだと思います。これはウィルスに特化されたトレーニングで免疫的な保護ですが、免疫機能に対するトレーニングではありません。ワクチンはこの病原体による感染と同じトレーニング効果があり、免疫がこの病原体について学びます。感染によるものかワクチンによるものか、の違いです。しかし、ほとんどの病原体は、、例を後で幾つかあげますが、、ほとんどの場合には免疫に対して中立的なスタンスを取らずに宿主の免疫を攻撃するような働きに出ます。体内に残りたいので。ここで、理解しておかなければいけないのは、ワクチンに対して、このような多くの感染疾患はまずは免疫機能にとっては有害なものである、ということです。トレーニング、というようなものではありません。確かに、この感染に特化した、この病原体に特化した免疫記憶はつくられますが、病原体はまずは免疫機能を破壊活動に導き、自らの免疫に攻撃先を向けることによって免疫の低下させようとするのです。そこから特化した免疫はつくられますが免疫のダメージもあります。これはCovid感染にも言えることで、Covid感染後には免疫全体の変化が起こり、他の感染症も含む免疫が形成されます。他の病原体、例えば、EBV、エプスタイン・バール・ウイルス、バーキットリンパ腫と言えばわかるでしょうか、、これも感染性疾患ですが、病原体は急性感染を起こすことによって免疫機能全体にダメージを起こすものです。これは、特に若い年代に多く、高等科から大学生くらいですね、この年齢でなることが多いのですが、感染後には数週間、数ヶ月の間感染に対する保護が低下しますので、この期間に別の感染疾患に罹ることも多いのです。これは医学の教科書にも載っていることです。そして、それがもっと酷い例は、HIVです。HIVにおいては、病理的に免疫が著しく低下します。病像は、後天性免疫不全症候群AIDSです。これは特に免疫機能の低下が起こる疾患ですが、感染疾患は全般的に免疫を低下させます。その度合いが違うだけです。ワクチンでは、そのような免疫の低下はみられない、もしくは少しで済みます。ワクチンのなかには免疫を低下させるものもありますが、現在するSARS-2ワクチンはそうではありません。接種後に免疫を若干低下させるワクチンはあるものの、ワクチンの根本的なメカニズムは免疫を弱める効果をなくして記憶をつくる効果だけを残す、というものなので、ここがワクチンと感染の大きな違いです。

子供の重症化について取り上げたく思うのですが、南アフリカでは12月に子供の入院率と重症化の増加がみられました。似たような報告がアメリカからもあります。オミクロンでは実際に小さな子供での重症化があるのでしょうか?

データはまだ完全なものではありませんが、南アフリカからのデータをみると、、これはこのポッドキャストのために用意した資料ではないのですが、、それでも私が自分用に整理したものを見る限りではそのような印象を受けます。そして、クリスマスから新年にかけてかなり多くの北アメリカからのデータが出てきて、そこでも子供のCovidが増えているのがわかります。そこからの印象的には、入院してきた子供達は副診断としてのCovidである、というものです。つまり、別の疾患で入院することになって、入院スクリーニングでCovid感染が確認された、ということですね。南アフリカでは、初めの頃、幼児が子供よりも罹患していたのが気になる点でしたが、特に0〜5歳児までの増加が割合的に急増していて、Covid入院率もそれよりも少し上の年齢層に比べると多かったのです。今、データの数も多くなってまとめることができるようになってきましたが、そうなるとここでもこの年齢層の入院ケースはCovidは副診断である、ということがみえてきました。勿論、国全体で感染が拡がれば子供にも拡がります。そうなれば別の疾患で入院しなければいけない子供からもウィルスの検出が行われる、ということがおこりますが、これは引き続き軽度で、しかも偶然みつかったケースということになります。感染は全ての年齢層で起こっている、というのが広範囲から受ける印象ですので、初めの頃危惧していたものではないにせよ、まだ完全に安心することはできません。というのも、南アフリカのデータからは、どうしてそれでも0〜5歳児がCovidで入院するのか、という説明がつかないからです。南アフリカでも北アメリカでも全ての子供の層での入院率が急増していることは確かなのです。ただ、言っておくべきなのは、それでも大人の重症化と入院率のほうが遥かに高い、ということ。つまり、子供が、2桁、3桁の域での話であるに対して、大人は4桁のレベルですから、ここの違いはあります。しかし、クリスマスからの増加具合は気になります。確実に、小児層での増加はあるからです。大人だけが罹って、子供は関係ない、ということでは全くありません。

またブースターに戻りたく思うのですが、先ほども出たようにワクチンの効果は重症化や入院率に影響を与えますが、オミクロン感染に直接関係があることに関しては一度デンマークのデータをみていきたくおもいます。これは2021年の12月でのオミクロンによる家庭内の伝播傾向を調べたもので、家庭内で一人感染者がいた場合に、デルタで感染した場合、そしてオミクロンで感染した場合にどれだけの人数に感染伝播が起こるか。つまり、二次発病率です。まとめてご説明いただけますか?デルタとオミクロンではどのような違いがあるのでしょうか?

これはかなり良くできた論文だと思います。かなりはやくに発表されましたし、オミクロンでの二次発病率を考えるにあたって大変参考になるデータです。まず、ここからはじめようと思いますが、二次発病率では、まず、初発症例があって、その人の世帯内の接触を調査しています。これはデンマークではデータシステムが整っているために可能です。つまり、検査をすると番号が振り分けられますので、そこから全ケースの追跡が可能なのです。似たようなシステムはイギリスもそうです。今日のためには用意しませんでしたが、そのようなデータがでています。このデンマークの論文に戻ると、、オミクロンの初発症例が2225ケース、デルタでは9712ケース。データの規模的には申し分ない大きさです。ここからの二次発病率、つまり初発症例との接触における確率、「感染し得る確率」と言えるでしょうか、、それは、世帯内に10人いたとして、そこに感染者1人を加える。そうすると、この10人は全員感染する可能性があるわけです。そこで、10人中2人感染したとすれば、二次発病率は20%、10のうちの2、です。この割合はオミクロンでは31%。デルタでは21%。二次発病率の差は10%です。これは全ての世帯内のグループに当てはまり、つまり、予防接種の回数などは関係なく、初発症例にはさまざまな予防接種段階の人が含まれています。2回接種した人もいれば、3回接種した人もいれば、予防接種をしていない人もいる、ということです。デンマークでは中年層はまだブースター接種をしていない人のほうが多く、ほとんどが2回の接種をした人たちですが、そこでの二次発病率はオミクロンで32%、デルタで19%、とその差が大きいです。それはなぜでしょうか?理由は、ワクチンの効果がデルタのほうが高いからです。3回の接種後にはこの差はもっと開き、オミクロンで25%、デルタでは11%です。これは、ワクチンの効果がオミクロンに対してかなり下がっている、ということを示すものであると同時に、それでも効果はある、ということでもあります。というのも、ワクチン未接種者と3回接種者との差は、31%と25%です。ワクチン未接種者と2回接種者とでは、31%と32%、とほとんど差がみられませんが、3回の接種では大幅な削減があります。ここからまたさらに明確に分けていくこともできますが、いわゆる、オッズ比です。これは、ワクチン接種者と未接種者でのデルタかオミクロンに感染する可能性の確率を出したもので、これを濃厚接種者、初発症例、インデックスケースから割り出します。ここでは2回のワクチン接種者を参照として考えますが、現時点では国民の大部分が2回の接種者、成人層の人たちの多くがそうですのでここから考えるのが適しています。3回接種した場合には、インデックスケースがデルタだった場合で38%。 0,38オッズ比、というのは38%の感染リスクですので、2回接種後の感染リスクです。これをワクチン未接種者でみてみると、2,31。感染リスクは2倍以上、ということになります。オミクロンではワクチンの効果が下がりますので、2回接種者との比較では、、世帯内にワクチン未接種者がいて、インデックスケースがオミクロンだった場合には、感染するリスクは変わりません。つまり、2回接種も未接種もその確率は同じだ、ということです。世帯内でインデックスケースから罹患する、という確率でいうと、です。3回接種すると、このリスクが54%削減されます。ほとんど、半減です。つまり、3回の接種で効果に差が出る。3回接種後にはオミクロンに感染するリスクが半減します。デルタでは、2回の接種後に半減以上、3回の接種後にはそこからさらに下がって3分の1まで削減されます。これを別の角度から考えると、インデックスケースのワクチン接種状況はその後の感染伝播にどのような影響を与えるのか、ということです。これは大変興味深いのですが、初発症例がワクチン未接種者だった場合には、ウィルスを周りに伝播する確率が40%上がる。つまり141%。初発症例がワクチンを接種しているか、していないかで40%の差があるということになります。

それはデルタもオミクロンも同じですか?

デルタでもオミクロンでも同じです。ここが興味深い点です。どちらのウィルスでも同じで、3回の接種後にはさらに削減されて、72%ですから倍の効果です。つまり、インデックスケースが3回の接種をしていた場合には、ウィルスを伝播する可能性が低く、ここにはデルタとオミクロンの違いはありません。効果は大きいです。接触者がブースター接種していた場合には、感染リスクはさらに半減します。これは勿論大変重要な点です。ブースター接種は感染拡大にも大きな役割を果たすものなのです。興味深いのは、接触者側としては2回の接種ではオミクロンに対してはあまり効果が期待できない、ということ。オミクロンでは、2回の接種だけでは感染拡大をコントロールすることは難しい、と言えます。現時点では、大多数の人が2回の接種をしていますが、それではオミクロンに対しては保護効果がない状態だ、ということ。3回目の接種があってはじめて効果があらわれる、R値を削減できる、ということがこのデータから読み取れます。実際に感染の拡大を抑える効果がある、ということです。ワクチンがそもそも感染拡大に影響を与えるのか、何も打つ手がないのか、、というところが、クリスマスから年始にかけて、まだはっきりとしない大きな疑問点でした。しかし、打つ手がないわけではありません。ワクチンの効果はあります。しかし、3回目を打つ必要がある、ということなのです。

ということは、今、2回の接種を終えている人たちが3回目のブースターを打てば感染流行を抑え込むことができる、ということでしょうか?

それはまた試算しないといけないでしょう。私は今の数からいうと、対策をしない状態では現在の流行を完全に抑え込むには十分ではない、と考えます。しかし、2Gなどの対策を続けて、、そして全員ブースター接種をしたならば、、そのような領域に到達できるとは思いますが、、勿論、モデリングの専門家に聞かなければいけないことですが。私にははっきりとした答えをだすことではできないものの、私が計算できる範囲で考えると実際に効果が現れる域に行くと思われます。

私が考えていたのは、、もし、引き続きワクチン未接種者の層が存在し、そこを埋めることができなかった場合、、今、ワクチンを打っていない人たちが今後も絶対に打ちたくないと言った場合に、、その他の人が全員ブースター接種をすればパンデミックは終息するのではないか、と思ったのです。「ワクチンを打ちたくない人は打たなければ良い」と。

現時点ではドイツでの2回目のワクチン接種率は71%です。その71%の人たちが全員3回目を打った、としましょう。それによってその人たちの感染リスクが半減した、とします。今のウィルスのR値は3、その規模で国内で拡がっていますから、それを考慮すると、、それだけでは十分ではない、ということはわかると思います。それだけでは足りないのです。しかも、これは一番シンプルな計算方法です。感染拡大計算、と言いますか、もうこれは三数法ですね。そのように単純に考えても、、ウィルスのR値が3ということは、全体の3分の2が完全な予防接種効果を持っている、つまり保護効果を持つ必要があるのです。今、70%が予防接種済みですが、これは必要な保護効果の50%です。計算するとわかりますが、これでは全く足りません。これはかなり単純に考えていますからたしかに少し単純すぎるかもしれません。というのも、このウィルスは呼吸器系疾患を引き起こすものなので、そこでの重症度を無視して計算することはできません。ウィルスは自然と拡がっていきますから、ワクチンをもってそれを阻止することは不可能です。これから、エンデミックになっていきますし、なっていかなければいけないところです。このウィルスはワクチンで撲滅できるものではないのです。それが出来ないことはかなり前からわかっていることですし、そして、それが根本的に正しいやり方ではないことも確かなのですから、ここで重要なのは、「ワクチンによって全体の疾患負荷を十分に削減することが可能であるか」というところです。そこでの答えは、「大人が全員ブースター接種をすれば可能だろう」ということ。しかし、それは成人全員がまず基礎免疫を得ている、ワクチン接種をしていることが前提ですから、ここがドイツの問題点なのです。この論文の別のところも少し取り上げますが、ここは私的には重要なところで、この数値は少し逆にみていくこともできるのですが、そうすると感染拡大についても違う見方ができます。単純に統計的な問いをするならば「オミクロンとデルタでの二次発病ケースでのリスクの違いはワクチン接種状況別にどうなのか」別の問い方をすれば「私が今感染するとして、予防接種をしていたらデルタと比較してどのくらいのリスクがあるのか」つまり、感染者と接触があって感染する状況下において、予防接種をしていればどうなのか。そこのオミクロンとデルタの比較です。ここが興味深いところですが、予防接種をしていなかった場合には、割合はほとんど1、1,17です。2回の接種では、2,7、3回の接種で3,66。つまり、予防接種状況が上がるたびに高くなる。これは、オミクロンが免疫を回避するからで、オミクロンはワクチンから逃げることができるのです。オミクロンでのオッズ比はデルタと比べると、3回の接種をした場合には3,66倍高い。しかし、これはワクチンを否定するものではなくて、オミクロンがどれくらい高い免疫回避を持っているのか、ということを示します。さらに興味深いのは、ワクチン未接種者の場合で、ここでのオッズ比は1と変わりません。これは、クリスマスの前にこのポッドキャストでも挙げた疑問、「このウィルスは適応性メリットをもつのか。つまり、ウィルス自身に複製、もしくはスパイクタンパク質などの機能の向上によって拡大に有利になっているのか」というところにつながります。これに関しての答えは「そうではない」ということです。ここではっきりとみてとれるのは、免疫回避だけです。この論文から、ということですが。これは大変興味深いところです。ここからわかることは、ワクチン未接種者にとっては、オミクロンでもデルタでも感染するリスクは変わらない。ということは、この論文からわかったのは全て免疫でのことだ、ということで、違いはワクチン接種者と免疫保有者に限る、というところです。これはある意味、良いニュースではありますが、それ以上に有益なニュースです。この変異株はさまざまな国でR値3の速度で拡大しています。それと同時にこの論文からの知見によると、それはこの変異株がよりよく拡大することができるからではなく、単純に集団の免疫を回避することができるからである、と。つまり、免疫回避だけの問題です。別な言葉で言うと、シチュエーション的には2020年の3月と同じ、ということです。R値3で拡大するウィルスがいて、それを防ぐ術がない。同じシチュエーションですよね?

今はもう少し、保護効果はありますよね。

勿論です。重症化に対する保護はあります。それは確かです。ここで言っておきたいことは、私が今後の展開を踏まえて全体のシチュエーション的に考えていることです。今、私たちは2020年の3月に似た状況下にいます。ウィルスが拡がっていく大きさは大体3です。実際にはもう少し低いか高いか、でしょうが、あの当時だってあまりよくわかっていませんでした。3くらいだったでしょう。まあ、2,7とか、3,5だったかもしれません。このウィルスは免疫に制約されることなく拡がっていきます。ここでの抑制は難しい。ブースター接種者以外では、ということです。しかし、その効果を得るためにには単純にブースター接種者の数が少なすぎる。ですから、今のシチュエーションは2020年の3月に似ている、と言えると思うのです。あの当時のウィルスでの第一波です。ただ、今はあの時よりもかなり様々な方法が与えられています、ですから、今のほうがかなり良いシチュエーションであることは確かです。まず、2回の接種、そして3回の接種によって特に高齢者の重症化が防げています。これは大変良いことです。2020年の春より断然良いシチュエーションです。他にも、例えばマスクの着用があります。あの時は、マスクがなかったために布マスクを縫いましたよね。勿論、FFP2マスクなどというものもありませんでした。今は誰もがFFP2マスクをしています。これはウィルスの拡大防止に大変効果的なことです。その他にも多くの経験を積んできています。あの時はわからないことばかりでしたから、政治は全体のロックダウン、という対策に踏み切るしか術がありませんでした。学校の閉鎖、店の営業停止、スーパーでの買い占め行為、など様々なことが起こりましたが、これらの記憶に新しい出来事は全て何もわからなかったから起こった事なのです。今はそれよりもずっと良いシチュエーションです。感染防止対策にしても様々な方法があります。近日中に政治はもう一度決断しなければいけません。しかし、あの時には想像も出来なかったことが今では可能です。抗原テストもありますし、、因みにオミクロンでも抗原テストは他の変異株同様に使えます、、確かに、SNSなどでは反応が鈍い、という情報も流れていますが、どちらにしても、予防接種をしていると抗原テストの感度が落ちるのは仕方がないことです。そこまで気にする必要はありません。2020年の春に比べると検査の方法が大変幅広くなっています。定期的に検査できますし、学校では週に何度も検査することによって学校を持続させることができるのですから、やはり全体的にはあの当時よりもずっと良いシチュエーションである、と言えるでしょう。自覚しなければいけないことは、イギリスでのような爆発的な感染拡大は、緩和し切った環境で起こったことである、ということです。勿論、ドイツでもこれから危ない状態になっていくでしょうし、急増もするでしょう。しかし、これもイースターにかけて、、様々な対策や手段を使って状況を整えていくことができると思っています。これからは、純粋なコントロールや規制や制限をする、というものではなく、状況を整えていくことになります。調整して、同時に整えていくことが可能なのは、高齢者での重症化が削減されるからで、それまでは高齢者を守るために大きな配慮が必要でした。何度もくりかえしますが、ドイツにはまだワクチンの未接種層が存在します。全く予防接種をしていない人たちです。これが大きな不安の種です。ドイツの今後はわからないことがたくさんあります。これからどのように対処していくべきなのか。しっかりと観察していく必要があります。

対策の一つに隔離がありますが、感染した時は勿論のこと、感染者との濃厚接触があった場合にもそれは適用されますが、ここでの議論があり、ドイツだけではなくアメリカなどでも隔離期間の短縮が検討されているところです。先ほども、隔離によって発生する経済的な問題、スーパーへの物資が届かなくなったり、病院の医療スタッフが復帰できなくなったり、ということがあると思います。この辺りを短くもう一度取り上げたく思うのですが、quarantineとisolation の区別がついていない人もいるかと思うのです。短く説明すると、isolationは感染者が行う隔離、quarantineは感染者との濃厚接触、つまり感染の疑いがある場合に行われる隔離、です。ロベルト・コッホ研究所はどちらも14日間、と推奨しています。ここからどのような短縮が望ましいのでしょうか?先ほども少し触れられていましたが、感染伝播が起こる可能性がある期間がオミクロンとデルタでは少し違う、ということですよね?

多分そうではないか、と思われます。現時点の兆しとしてはオミクロン感染時のほうが感染性の持続期間が長い。例えば、先ほどのデンマークの世帯内試験からもそのような傾向がみられ、感染から1日目をみてみると、どちらのウィルスでも接触の3〜4%が陽性になっています。この期間が、インデックスケースの感染がまだ明らかになっていないうちに二次感染が起こっていてすでに陽性反応がでる期間です。この初期の段階ではオミクロンでもデルタでも同じようにウィルスの放出が起こるようなのですが、7日後ではオミクロンでは31%が陽性です。この二次発病率はデルタでは21%ですから、オミクロンのほうが後のほうに向かって増えていることがわかります。これがウィルス量と関係するのではないか、というのが初めのケースからみられることで、つまり、私はオミクロンでのウィルス量経過がデルタよりも短い、という印象は受けません。私はここから政治的な決断として隔離期間を短縮する、というところへ繋げることはできない、と思っていますが、もうこの発言をした時点で政治的ですね。というのも、これは政治的な検討以外の何物でもないからです。ここで重要なのは、先ほども言ったように必要不可欠な現場の維持をどうしていくべきなのか。極軽症でウィルスの陽性反応だけが出ている場合には、それをどう扱っていくのが良いか。感染したばかりの段階では1週間は感染性はありますが、2週間目も念の為に自宅待機させるべきなのか。その点の検討が今されている、ということなのです。必要不可欠な職種ではどうするべきか。感染性は抗原テストの陽性反応と相関する、ということがわかっています。抗原テストの感度は大体感染性があるウィルス量に等しいと言えます。放出する量、です。例えば、有症状で陽性反応がでた場合には隔離の後に抗原テスト、念の為に2回検査して陰性であったらマスクの着用を条件に必要不可欠な職種においては職場に復帰できる、など。もし、私が組織のなかで重要な決断をしなければいけないポジションにいる、として、、政治的な規定とは別に決断しなければいけない、というシチュエーションになったとしたら、そのようにするでしょう。つまり、病院のなかで決めなければいけない場合。医師が軽症で数日後には回復していて、症状がで初めてから6日目、7日目に2回の陰性反応が抗原テストで出ていたのであれば、私は「もう職場に復帰しても良いですよ。しかし、常にマスクはしていてください」とすると思います。これが1つの案ですが、いくつかの州ではすでにそのように実行されています。このような職種は社会全体にとって重要ですからその点は考えていかなければいけません。濃厚接触者は、感染しているのかしていないのか、というところが不明であるために、接触から数えて14日間、自宅待機、ということになりますが、今のオミクロンの流行のようにものすごい速度で拡大する場合には一気にとんでもない数の人が濃厚接触者になり、膨大な数の欠勤が発生し社会へ大きなダメージが出るのです。それを防ぐためにも政治的な決断が必要です。勿論、この隔離の短縮、もしくは隔離の廃止は、隔離によって感染の拡大が阻止できない、阻止する必要がない、ということになればそれも根拠のある考察です。現在では2つの案に分かれていて、1つ目は隔離をするのであればそれはコントロールできるものでなければいけない、というもの。あまりにも感染ケースが多くてそれができないのであれば形だけ残す、というのも意味がないことです。保健所がまわなくて3週間後に隔離のお知らせが来たり、などしても、です。これが一つ。もう一つは、予防接種が進んだ集団においてはそこまでの疾患負荷が発生しない、というもの。どちらにしても、エンデミックに向かっていかなければいけないわけで、そうなればある時点で感染は受け入れなければいけません。勿論、扉を一気に全開にする、ということではありませんが、少しずつ、部分的にウィルスのために開けていく、ということも考えていかなければいけませんし、いくべきです。勿論、ここでの問いは、「どの部分を開けていくべきなのか」です。つまり、「マスクはもう必要ないか?」と言う点では、このようなそこまで負担にならない対策は問題だ、は思いませんし、マスクをしたからと言って社会のダメージがあるわけでもありません。勿論、気持ちの良いものではありませんし、邪魔でしょう。しかしそれと同時に意識していなくてもウィルスの伝播を防ぐことができるのです。室内で全員がきちんとマスクを着用したならば、ほとんど大きな手間も面倒な対策も必要なく感染防止ができるわけで、そういう意味では隔離対策とは比べ物にもなりません。隔離はこれに比べると大掛かりで大変なことです。隔離対象者を確定して登録して法的手段をとらなければいけませんし、監視もされなければいけません。そのような大掛かりなことは、それによって感染拡大を大きく阻止できる、という前提の上で行われるべきなのです。このポッドキャストでももう何度も1年、1年半以上話してきたことですが、Covid-19の場合には感染拡大速度が速いために隔離しても間に合わない場合が多い。たとえ、保健所が後ろ向きに感染追跡をしてクラスタートレーシングができたとしても、全てカバーできないことが多いのです。ですから、隔離、という対策が感染拡大防止に絶大な効果があるか、というとそうではありませんし、根本的な隔離期間を緩和する、ということで多くの分野で仕事を維持できることにつながると思います。勿論、濃厚接触者が隔離されない、となると、そのなかから周りに感染させる人が出てくる、ということは確かです。この点の自覚はするべきですし、外に出て行動している感染者の数が増える、というところも考えていかなければいけないところです。この辺りの決断は難しく、これから政治的な課題となると思います。

医療従事者が早期に隔離から開放されると、、例えば、ハイリスクとの接触がある職場では問題にはならないのでしょうか?

これは勿論政治的に調整されるべきところだと思います。全てにおいて同じ規制にしなくても良いですし、特定のグループ、特定の接触状況だけ、というのも可能でしょう。ハイリスクなどとの接触がある場合にはまた別に決めても良いと思います。

どのような隔離期間が適切であると思われますか?

具体的な案をここで出すことは控えますが、実は、私も個人的にまだ「これだ!」という案に至っていないのです。有症状感染者の隔離に関しては、抗原テストによる短縮は考えられますし、濃厚接触者では、隔離期間の短縮、というよりは隔離の免除のほうが良いかと思います。感染サイクルで考えると、14日間隔離してもそこまで大きな効果があるとは言えなくて、インデックスケースは1週間感染性があって、、その濃厚接触者に症状が出るまでにそこから4日、5日、6日くらいかかるわけですから、この時点で14日です。ここから数日引いて、、10日にしても十分だとは思います。が、この濃厚接触者の隔離を続けるべきか、という問題に戻ります。これを残すか、やめるか、という問題です。

最後に、、パンデミックについてお伺いしたいことがあるのですが、先ほども少しそのようなお話はありましたが、このオミクロンを最後に酷い冬の流行はなくなるのではないか、という希望が出てきています。南アフリカをみても、感染の波は落ち着いてきていますが、南アフリカではパンセミックは終息した、とみても良いのでしょうか?

南アフリカに関しては、南アフリカの冬はこちらの夏ですから、冬には感染者の増加はまた起こると思われます。それはどちらかと言えば流行末期、というか、季節性流行の一番初めのシーズン、と言えるかと思います。そうなれば、パンデミックは終わります。ヨーロッパ諸国のなかにも、次の冬にはパンデミックの流行ではなく季節性の流行になるチャンスがある国はいくつもあるでしょう。そのなかにドイツが含まれるかどうか、というのは、、ワクチンの穴を埋めることができるのか、十分にワクチン未接種者を説得することができるのか、というところにかかってきます。というのも、私の危惧するところは、このオミクロン株が免疫学的に他の変異株と独自の道をいっているために新しい血清型になりつつある、というところです。そうなれば、私たちには両方の免疫が必要になるわけで、、つまり、予防接種をした人たち、デルタに感染した人たちは、オミクロンに適応した予防接種をする必要が出てきますが、そうなれば全体で安定した免疫を収得することができますので、ドイツでも次の冬には季節性の流行、季節性の発生指数の増加に移行していくと思われます。しかし、ドイツにはまだ問題があります。まだワクチンを打っていない人、オミクロンに感染した人は完全な免疫を持たないですから、次の冬に出てくるウィルスに感染する可能性があります。私は、これから他のウィルスが消滅してオミクロンだけになる、という状況になるとは思っていません。ここがリスクです。いままで感染しなかったものの予防接種をしていない人たちは引き続き免疫的には未熟です。このウィルスが今後どのようになっていくか、というのもわかりませんし、オミクロンはかなり拡大するウィルスです。変異株のリコンビネーション、ということも起こり得ます。コロナウィルスの種類、このSARS-CoV-2ウィルスもリコンビネーションが可能である、ということはわかっていますから、次の冬にどのようなタイプになっているか、ということはわからないのです。もしかしたら、次の冬まで、オミクロンとデルタが混ざったウィルス、もしくは、別の変異株が循環するかもしれませんし、オミクロンの病原性とデルタの重症度、もしくはそれよりも重度のウィルスになるかもしれません。そのような可能性がない、とは言えません。しかし、他のパラメーター、集団の免疫度は常に上がっていきますから、そこをしっかりと築いていけば、未接種層を補っていけば、ウィルスに対する免疫は揺るぎないものとなります。

先ほど、完全に未熟な人たち、とおっしゃいましたが、子供たちにとってもパンデミックはまだまだ終わらない、ということですよね。まだ予防接種が出来ない幼児層もありますので。

現時点では今だに、子供達の重症度は低い、と言えます。5歳以上の予防接種が可能になりましたし、勿論、オミクロンようのワクチンも承認されなければいけませんし、承認治験も行われなければいけません。この辺りも修正が必要で、接種量を少なくすることによって免疫形成も十分に行われない、ということもわかってきていますから、そこは改善されなければいけません。子供にも予防接種をする必要があるのは言うまでもないことですが、もし感染したとしても子供の場合にはそこまで酷くはならない場合が多い、というのも事実です。ここで両極端に分かれて行っている、という印象を受けますが、この当たりも改善していくべきところでしょう。科学というものは、「黒か、白か」という世界ではありません。私的に一番重要なのは科学的なことですが、そこには、子供の予防接種が可能、ということと、子供は重症化しない場合は多い、ということが同時に存在します。

この間、先生は、予防接種者にとってはパンデミックは終わるだろう、と仰いました。そして、今後、誰もがウィルスとの接触をすることになる、と。しかし、先ほどのお話では、次の冬までの間に感染もしなく、予防接種もしていない人が一定数いる、ということになりますが、ということはパンデミックはまだ終わらない、ということでしょうか?

それは、これから私たちがどのようにしていくか、というところで決まることだと思います。つまり、これから高い発生指数を許容する方向にいけば、ワクチン未接種者の多くがオミクロンに感染し免疫を収得することになります。しかし、もし、免疫的に未熟な人たちが感染して重症化してまた集中治療に負担がかかってくるようになれば、勿論発生指数を抑え込む対策に踏み切らなくてはいけなくなるでしょう。他の国と違って未接種者層が存在するドイツではそのようになる可能性もありますから、そうなれば感染者の増加にブレーキをかけなければいけなくなって、それによって免疫的に未熟な人たちの多くは夏になっても引き続き未熟のままですから、冬に未熟の状態で突入することになります。これが大きな問題なのです。予防接種をすればそのような問題は起きません。

ワクチンを義務化する以外方法はないのでしょうか?

義務化、というのは政治的な決断です。それと同じように政治は、ワクチン未接種者への説得、モチベーションをあげることにエネルギーを注ぐこともできます。ワクチンの義務化は政治的に様々なかたちで実行が可能だと思われますので、どのようにしていくべきなのか。つまり、罰金、罰則などでするのか、それとも入場制限などでやっていくのか。このようなことは全て、私の科学者としての領域ではありません。ですからそのような発言をすることは避けますが、免疫的に未熟な人たちにとって次の冬を乗り切るのは容易ではないだろう、ということだけは言っておきます。これから、重症化ケースが少なくなるにつれて、社会全体の感染が許容されていく流れになっていくと思われます。社会的にみてももそれ以外考えられません。そうなれば、もっともっとたくさんの未熟な人たちがオミクロンに感染します。もしかしたら、全員、かもしれません。全員感染する、という可能性もあります。言えることは、夏にまた夏効果がくる、ということ。夏にはまた自由に行動ができることになるでしょう。つまり、ウィルスをオープンにできる環境になる、ということです。引き続き、室内ではマスクをするなどして気をつけていく必要はあると思いますが、夏にはオミクロンはそこまで拡大しないと思われますのでそれがまた冬に集中します。ここの自覚をするべきです。これは感染疫学であって、政治ではありません。


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