ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート( 特別編)  2021/12/19(和訳)

内科医 マーク・ハネフェルト
聞き手 ベーケ・シュールマン

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「コロナワクチンは不妊の原因にならないって本当なの?」 「長期的な影響が心配だ」「Covid-19はインフルエンザよりひどくないらしい」このような議論や不安の声を職場の休憩室などで誰もが聞いたことがあるでしょう。クリスマスになると家族や長い間顔をあわせていなかった親戚ともそのような話題になることは確かだと思います。そのような不安を一掃するべく特別な場を設けました。今後起こりうる議論の準備をするため、そして、その際の話し相手の不安を少しでも少なくすることができるようになれば幸いです。今回は、専門的な数などは関係なく基礎知識を取り上げます。ドロステン先生が言っているような「ハードコアな知識」が欲しい方は、ぜひ今までのポッドキャストを参考にされてください。今日は、私たちの不安や懸念をよく知っている方をゲストにお迎えしています。マーク・ハネフェルト先生です。先生は以前は集中治療病床でご勤務されていたニーダーザクセンの開業医でいらっしゃいます。聞き手はベーケ・シュールマンです。

ハネフェルト先生、先生は、開業医としてだけではなく、もう数ヶ月の間ワクチンセンターそして移動接種所でワクチン接種をされています。いままですでに何人に予防接種をしたか覚えていらっしゃいますか?

そうですね。当医院では3000、4000人ですが、ワクチン接種を積極的に行なっている診療所の中では私のところが接種数では真ん中くらいだと思います。これもかなり多い数のところもありますが、四半期で2000人の患者を診る、というのも数としては大変多いと思います。ワクチンセンターではもっと多くて5000人くらいに打ちました。

先生は、数ヶ月前に開業医院での接種ができるように働きかけていらっしゃいましたが、それは何故ですか? どうして重要だったのでしょう?

ワクチン接種は長い間してきていますが、パンデミックのなかでワクチン関係で様々な問題が起こっていることに気がつきました。そこで、開業医としても何か役に立ちたい、できることがしたい、と。開業医、開業医院は数的にも多いですし、患者との信頼関係、距離も近いです。患者とはもう長年の付き合いがありますので、不安や質問があれば私たちが一番相談しやすい相手なのではないかとも思うのです。この信頼関係をポジティブに役にたてれば、と思いました。

医院での接種が可能になってから、すぐに体勢を変えた、と伺いました。何をどう変えて予防接種が行えるようにしたのでしょうか?

まずやってくるのは未接種の患者である、ということです。接種済みの患者しかいないのであれば問題はありませんが、まだ接種していない、となれば、勿論、医院内を感染のホットスポットにさせるわけにはいきませんので、、予約がスムーズに行われるように新しいシステムを導入しました。それによって、患者の渋滞がおこらないようにオーガナイズができるようになって待ち時間も短縮しました。そして、待合室なども工夫する必要があって、はじめは外の小さな庭にテントを張っていたのですが、それが嵐で吹き飛ばされてしまって、、2つ目の少し頑丈なテントに変えたのですが、それも吹き飛ばされてしまったので、、笑 まあ、今は冬なのでテントはもう使えませんが。外で待っていてもらっていた患者には、ピザ屋によくある呼び出しベルを渡して、、

ピザが焼きあがったら鳴って知らせてくれるベルですね。

そうです。それを渡して車のなかでも順番を待ってもらえるようにしました。当医院の特殊なやり方だったのかもしれませんが、、それによって滞りなく予防接種ができるようにオーガナイズできました。

予防接種に来ていた人たちはどのような人たちだったのでしょうか?予防接種ができて喜んでいたのでしょうか?それとも不安に思う人もいたのでしょうか?

ほとんどの場合が予防接種ができる、ということを非常に喜んでいましたし、特に私のところで予防接種ができることを喜んでいました。高齢者にはワクチンセンターから予防接種の知らせがいってそこで接種できるようになっていたのですが、ワクチンセンターはやはり流れ作業的な印象が否めません。ですから、顔見知りのスタッフがいる医院で予防接種ができるようになった、ということを大変喜んでいて、これは別に医者としての私個人に対する、というよりは、診療所のスタッフへの信頼関係です。そこを強く感じました。

そしてワクチンセンターよりも、近場、ということもあったでしょうね。

絶対それもあるでしょう。

予防接種の前にどのような相談がありましたか?

不安に思うポイントはたくさんありますが、そのなかにはソーシャルメディアや新聞から不安を煽られたところもあって、相談内容はありとあらゆるものでした。一番簡単な質問は、「先生、私は予防接種はしたほうが良いのでしょうか?」というものでしたが、説明をするとかなり早い段階で納得してくれていました。受けた質問は本当に様々なものでした。

例えばどのような内容ですか?

そうですね、これは特に若い人たちからのものでしたが、「ワクチンを打ったら不妊にならないか」という質問とか、高齢者からは、ワクチンが感染よりリスクが高いかどうか、という質問が多かったです。このような質問が始めの頃によくありました。

これらの不安についてはこれから詳しく取り上げますが、先生はソーシャルメディアでも明確な説明、意見を発信されていますが、そこではどのような反応があったのでしょうか?

ソーシャルメディアもありますが、会見などでも話す機会はありました。大多数がポジティブな反応ですが、なかには攻撃的なものもあって、、それは大体ソーシャルメディアにおいてみられるものです。なかには残念ながら警察に通報しなければいけないものもありましたし、犯罪予告などを受けたり、そのようなケースも増えて、これは他のワクチン接種を積極的にしている医師たちも残念ながら経験することだと思います。

先生もソーシャルメディアで少し厳しい言い方をしたりしてしまうこともあるわけですよね。

勿論言い過ぎたことがなかったか、と言われればそうかもしれませんが、、、私はソーシャルメディアでの発信をメインにおこなっているわけではありません。正しい情報を発信することが目的です。このパンデミックにおいては、本当に多くの偽情報が広められてきました。それによって政治的な決断も希薄になるなど、影響をもたらすことでもあるので、しっかりと厳しく正していくことも必要なことだと思っています。それをどうやっていくのか、ということです。時には別の言い方のほうがよかった、と後で思うことも勿論あります。

ワクチンに対する不安と懸念、Covid-19に対してもそうですが、ワクチンからはじめたく思います。まずワクチンの開発からです。よく聞かれる論拠としては、このワクチンの開発が通常のワクチンよりもかなり早い速度でされた、というところで、「そんなワクチンが良いはずがない」「安全なはずはない」「試験も十分におこなわれていない」と言われます。確かに、新しいワクチンを開発する際には、何年もかかり大変複雑なものです。

それはその通りです。専門的なことがわからない場合に、そのような疑問を持つのは当然だと思います。どのような過程で開発されたか、というような点でですね。いくつか重要なポイントがあります。まず、バイオンテックのような、mRNAワクチンはもうすでにかなり長い間がん治療に使われている技術です。研究技術的にです。つまり10年以上前から、ということですね。バイオンテックの目標は、この技術を個人にカスタマイズされたがん治療に使う、ということですから、もう何年も研究が行われていて、免疫をどのように刺激していくべきなのか、という点での経験も豊富です。2つ目には、2000年のSARSの流行の際にかなりの知見を得ることができていた、ということ。がん専門分野もそうですが、分子生物学においても、SARSウィルスの遺伝子からの知識もありましたし、ワクチンの開発にとりかかりやすかったわけです。それがなければ不可能だったでしょう。そして、プロセスです。これは、パンデミック、という状況でなければ無理だったと思うのですが、通常であれば世界中が一斉にワクチンの開発をする、などということはあり得ません。1000単位の研究チームが同時に開発をし、何十億もの研究費が費やされましたが、勿論、どこでもワクチン開発の需要と必要性があったわけです。

誰でも病気になる可能性がありますし。

勿論です。誰もがなる可能性があります。そうでなければパンデミックとは言いません。そして、ここまで拡がりもしなかったでしょう。このように多くの人が力を合わせれば通常では不可能なことも可能になるのです。この早い開発は、その賜物です。ワクチンに関する治験のデータを集めるにはそこまで時間はかかるものではありません。抗体はできるか、副反応はどうか、という点をみていけば良いわけなので。そして、今回は同時にかなりの数の治験者で行うことが可能でしたし、異なる治験段階が並行して行われていたのでかなりはやくデータが揃ったのです。決めてになるのは、データの速度ではなくて、データの量、です。それがすぐに集まりました。バイオンテックだけでも、承認試験の際に43000人の治験者がいたはずです。こんなに規模が大きい治験はいままでのワクチンの開発の際にありませんでした。前例がない規模です。その後の観察も世界中で行われていますし、このワクチンはいままでの医療の歴史のなかで一番良く研究されたワクチンだ、と言っても過言ではないのです。この点は明確にしておかなければいけません。さらに、今回のワクチン開発においては、治験に保健機関が関わり、治験が行われるのと同時にデータの審査もされましたが、このようなことは通常であれば行われません。普通は、治験を最後までしてデータをまとめ、ミスがないかどうかチェックしてから提出するものです。その際にもし、どこかにミスがあればまたそこからやり直さなければいけないのでかなり時間の遅延がでるのです。今回はまずは時間を短縮する、ということ、そして安全性をキープする、ということ、そのどちらも成功した、と言えるのです。

人々を不安にさせたものの一つとして、承認された形式があります。緊急承認、というものは通常ではEUには存在しません。これはどのような承認なのでしょうか。

緊急承認というのはもともとアメリカにあったもので、その承認がおりていましたが、今年の夏には正式承認されています。ヨーロッパには緊急承認、というものがありませんので、限定された承認、ということになりますが、医薬品の承認でもまずは5年間です。その後で問題が発生したか、効果は治験データとして提出されたものと比較できるか、などを再度審査し、それから無期限での承認、ということになりますが、一度承認されてしまうと、承認機関はその後の関与ができなくなりますから、そういう点では限定承認というのはデメリットではなくてメリットなのです。その段階では、治験を続けてデータを取ることや、引き続き注意深く観察することを要求できますし、その結果を承認機関に提出する義務も発生します。現時点ではまずは1年間の承認がおりていますから、その間は様々な機関からチェックが入ります。これはメリットです。デメリットでは決してありません。

先ほど仰ったように、1年間の限定承認がおりていますが、「2022年には期限切れでワクチンが使えなくなる」という噂もあります。確かに、新しい申請がされなければいけませんが、全てのワクチンの申請はもうすでに行われている、ということです。ということは、2022年にもワクチンの接種は可能だ、ということですね。

間違いありません。もしそうでなければ、私が注文したワクチンも使えなくなしましますので、、それは困ります。笑 とにかく、安全性なども引き続きチェックされていくわけですから、これは良いことなのです。

承認についてはわかりました。しかし、この承認と推奨が混同されてしまうことがあります。EMAがワクチンを承認し、その後でドイツ予防接種常設委員会STIKOが推奨を出すのを待つことになることになるのですが、今回の5歳から11歳のワクチンでもEMAが承認を出し、STIKOはハイリスクの子供とハイリスクとの接触のある子供に対しての推奨を出しました。そして、その他の子供たちに関しては、「個人での決断の自由」がある、としています。ここが少し混乱する部分かもしれません。STIKOが許可していない、予防接種をすることはやめたほうがよい、と言っているのだと解釈する人もいると思うのですが、そういう意味ではないのですよね?

そういう意味ではないです。STIKOは予防接種において重要な役割を果たす機関です。しかし、STIKOの推奨には法的な効力はありません。法律ではないのです。インフルエンザワクチンの接種は毎年60歳以上、ハイリスク、そして妊婦に推奨されますが、それはその他の人が予防接種してはいけない、ということではありません。いままでもそうでした。これは法的な面で、例えば、副作用などが出た場合に保険治療費の補償を確保するためには、保険機関から出された推奨があることが前提となります。そこでは、STIKOと保険会社の推奨は参考にされなければいけない、とありますが、STIKOの推奨には法的効力はなくガイドラインである、という位置付けです。ここでは勿論異論もあるでしょう。実際に今までもあまり良い結果がでなかったこともあります。例えば、妊婦の推奨を取っても、今年の始めにすでに妊婦のリスクが大変高い、ということはわかっていました。死に至る疾患経過や重度の疾患経過、妊娠中の異常、流産、臍帯の血栓形成など、リスクが多々あることがわかっていたのにも関わらず、STIKOからの推奨が出るまでにかなり時間がかかったのです。これはやはり問題で、これによって多くの妊婦の不安を募らせてしまいました。本来ならば妊婦はすぐに予防接種をするべきであるのに、STIKOの推奨を重視するあまり予防接種が遅れてしまう。多くの開業医院がSTIKOの推奨を厳格に守っていますが、開業医は現場を熟知しているわけで、私は個人的には、医師としての勘と経験も使って判断するのが求められるのではないかと思っています。

編集部にもよく来る質問は、「予防接種をしても感染するなら、打つ意味がないのでは」というものです。ブレイクスルー感染、というものがあるのはわかってきましたし、実際に感染する人もいます。それでも予防接種をする必要はどこにあるのでしょうか?

別にこれは今でてきたテーマというわけではありません。多分、少し間違った認識が広まってしまったのが原因ではないかと思っていて、1年前にワクチンを打ち始めた時にも、「接種後も引き続きマスクは着用して距離を取ることは重要です。予防接種しても、ウィルスがあなたをウィルスを生産する場所として利用する可能性があり、周りにうつしてしまう可能性があります。」と念を押していましたし、バイオンテックの治験データの95%の有効率、というのは、有症状に対するものす。つまり、感染して症状が出る、ということです。初めは95%の有効率でしたが、残りの5%、20人に1人は感染し、重症化はしないものの症状が出る可能性があり周りにも感染させる可能性があるということで、アストラゼネカの場合にはもっと明確で、70%の有効率でした。30%がそもそも感染する可能性がありました。変異株によって変化がおこり、感染する割合は増えてしまいましたが、重症化するリスクを削減させることが重要ですし、今回のデルタによる感染流行でも発生指数において予防接種者と未接種者の違いは明らかです。そして、感染伝播においても明確に違いがでています。この点はしっかりとさせたおくべきだと思います。

重症化を防ぐ、重度の疾患経過を阻止する、ということですね。少なくともいままでの変異株ではそうでした。オミクロン感染後の疾患経過に関してはもう少し待つ必要がありますが。感染して重症化してしまった場合には集中治療をうけることになりますが5000人弱が治療を受けていて、そのなかの予防接種者の割合が増えている、とニュースでも報道されていました。これを聞いて心配になる気持ちはわかります。しかし、これももう一度考えてみるとそんなに簡単な話ではないですよね?

ここにはいくつかの面があります。まず、予防接種者のなかにも免疫があまり機能していない人はいる、ということ。治療や服用している薬によって免疫が抑制されている人たちは重症化に対する予防効果があまり期待できません。60歳以下で集中治療を受け人工呼吸が必要になる人たちはほとんどが予防接種をしていない人たちです。60歳以上で集中治療が必要になる場合は2回しか接種していない、ここを強調しなければいけませんが、つまり完全な接種が終わっていない。ですから、この年代の人たちが3回目の接種を行うことは大変重要です。ここで統計的な例を出しますが、乗用車での交通事故の犠牲者は99%がシートベルトをしています。サッカーの試合におけるオウンゴールの際には95%から90%の確率でゴールキーパーが目の前にいたわけで、フリーキックの際に壁をつくらなかったり、ゴールキーパーがゴールに不在の状況をわざとつくっているのでありません。集中治療の治療数でみてみると、60歳以上での比較では予防接種をしている人よりも未接種者の割合のほうが明らかに多いです。予防接種は、60歳以上では重症化するリスクを20倍削減します。

先ほどの統計の例がありましたが、勿論、予防接種を終えている人の数が増えれば増えるほど集中治療にかかる数も自然と増えますね。ある時点で100%が予防接種していたら、集中治療にかかる予防接種者の割合も100%です。

そういうことです。

重症化についてですが、予防接種をしても少し重い疾患経過になることはあります。これはワクチンの開発の際にも仮説としてあげられていたことで、他のワクチンでも起こりうるいわゆる、antibody-dependent enhancement、抗体依存性感染増強(ADE)という現象です。簡単に言うと、ワクチンによってさらに酷い炎症につながってしまう、ということですが、少し説明をしていただけますか?

私は免疫学の専門家ではないですが、私がいつも患者に説明していることをお話しします。そのような質問は実際にきますので。これは、ウィルスの亜種と関係があって、例えばRSウィルス、RSVは小児がよく感染するものですが、麻疹やデング熱でもおこります。これはワクチン特有の現象ではなくて、感染全般で起こることです。病原体に対する免疫ができている場合にはその病原体が入ってきたら抗体がそこに付着しますね。次にその病原体の亜種が入ってきた場合。抗体はそこにもくっつきますがあまりよい密着度ではありません。完全に不活化されない、ということです。その状態で免疫細胞に取り込まれてしまうと、増殖可能なウィルスが重要な免疫システムの中心に入りこんでしまうことによって重度の炎症が起きてしまう。他のメカニズム的には、この抗体がしっかりと結合しない、ということによって別の免疫コンプレックス、つまり、抗体とウィルスなどのバランスですね、これが生じてしまい、この免疫バランスを免疫システムが危険だ、と判断し排除しようと働いた場合に重度の疾患に繋がる。これが簡単な説明ですが、このようなことが起こってしまう可能性があるのではないか、という心配をしている人が多いのです。まず、これははっきりと言っておかなければいけないことですが、確かに、ワクチンの開発を始めたばかりの頃には動物実験の段階で、ある一定のウィルス量、ヌクレオカプシドが抗体を刺激するとそのようなことが起こる可能性がある、ということがわかっていたので、それを防ぐためにスパイクタンパク質、この部分はトゲのような突起部分で細胞にドッキングするためありますが、、この部分をワクチンに使うことにしたのです。動物実験からの知見です。今、予防接種がおこなわている国々をみても、そのような重症化が起こっている、ということはありません。それは、予防接種者も感染回復者でも同様で、新しい変異株に感染した場合に重症化をする、ということはないのです。

そのようなことは聞かないですよね。

リアルライフデータでわかっています。

私のメモに、ブースター接種、というのが書かれていますが、私の家族の話なのですが、80歳がブースター接種をしようとしたら家庭医から「今はバイオンテックしかない」と言われて、「だったらまたモデルナが入荷するまで数ヶ月待とう」と。「1回目と2回目をモデルナで接種したから、3回目にバイオンテックを打つのは怖い」と言っているんです。しかし、この違うワクチンを混ぜる、ということに対して不安を持つ必要はなく、それどころか真逆ですよね?

全くその通りです。おばあさんはそういう意味では例外のケースで、ほとんどの場合がその逆で、私のところでも大規模な予防接種キャンペーンをした際にも、1回目、2回目をモデルナで打った人たちはバイオンテックを打ちたいと。バイオンテックのほうが評判が良い、というもあると思いますが、、モデルナもバイオンテックも同じ原理で免疫がトレーニングされます。原理はどちらも同じです。

30歳以下はどちらにしてもバイオンテックですよね。とにかく、ブースターをすることが重要で、どちらにするか、ということは重要ではない。

その通りです。ブースターをすることによって、少なくともデルタではファクター20の効果の改善がみられます。新しい変異株ではまだはっきりとはわかりませんが、あまり良い効果は望めないと思われます。30歳以下は私の診療所ではバイオンテックを使っていますが、これによって心筋炎のリスク、リスクが生じる可能性を最小限にするためです。

心筋炎についてもお伺いしたいことがあるのですが、その前に、今、予防接種をしていない人のなかには、予防接種自体はしたいが、mRNAワクチンは打ちたくない、という人もいます。タンパク質ベースのワクチンや不活化ワクチンが候補にあがっています。2つのワクチンが承認されそうですが、1つはフランスの不活化ワクチン、バルネバ、そしてアメリカのタンパク質ベースワクチン、ノババックスです。ノババックスはもう承認申請済みですが、先生のところの患者のなかにも、これらのワクチンを待っている人はいるのでしょうか?

そのような相談はあります。SNSでもよくみる内容ですが、まず、mRNAワクチンもそういう意味では「不活化」のワクチンで、「生きた」ウィルスは入っていません。私は個人的にはmRNAワクチンへの信頼が高く、というのも、もうすでに70億、80億回接種されていますし、データから安全性も明らかになっているからです。タンパク質ベースのワクチンに関しては、最終的に免疫に掲示されるのは同じもので、スパイクタンパク質です。それを身体がつくるのではなくて、人工的にナノテクノロジーを使ってつくられる。しかし、それだけでは私たちの免疫が十分に反応しないためにさらに増強剤が加えられますが、これが反ワクチン派の非難のポイントともなっているところです。アルミニウム化合物、などが加えられることが多いので。このタンパク質ベースのワクチンの弱点は、細胞免疫レベルでの免疫をつくるというよりは、抗体がメインである、というところです。これは特にオミクロンなどで抗体免疫の回避が行われた場合に、このワクチンにどれだけ期待できるのか。そして、ワクチンの効果で一番重要なのは重症化を防ぐことですから、そこで力価応答が低い、ということも良いことではないです。勿論、まだわからないことはたくさんありますので様子をみる必要なありますが、私の内科医としての立場から自分の患者にワクチンを勧めるのであれば、mRNAワクチンを選びます。この判断基準は患者だけではなく、自分の家族、兄弟に対しても同じです。もう一つメリットをあげるならば、、このタンパク質ベースワクチンは、mRNAワクチンでアレルギーショック反応がでた場合に使える、というのは朗報です。そのようなことは起こる可能性がありますから、そのような人たちにとってはこのワクチンは選択肢のうちの一つでしょう。

これが承認されても、実際に使えるまでにはもう少しかかりますよね。バルネバは、来年の4月くらいから供給できる、ということですが、今は1日も無駄にできる時間はありません。

今、なんらかのワクチンを待つ、というのは賢い選択ではありません。現在、デルタの感染流行の真っ只中で、それに効果が十分にあるワクチンがあるわけです。感染が拡大すればするほど、未接種者における重症化が増えるわけで、それによって医療への負担、社会的な負担、病欠なども増えますから、、ワクチンを打つのであれば、今しかありません。

同じような問題がオミクロンでもあります。今すぐにブースターを打つよりも、オミクロンに対応したワクチンを待った方が良いのではないか、と。バイオンテックもオミクロン用のワクチンを開発する、と言っています。それについてはどうなのでしょうか? タンパク質ベースワクチンの場合と同様に、今、あるものを打った方が良いのでしょうか?

そうだと思います。勿論、私は免疫学者でもウィルス学者でもありませんから、専門的なことは言えません。しかし、専門家の意見などをみる限り、今、ワクチンを打つのが正しい決断だ、ということはわかります。オミクロンに対して、現在のワクチンの効果がゼロになる、ということではなくて、引き続き重症化に対する効果は細胞免疫レベルであります。これから、春、夏、、アップデートが出てきたタイミングでオミクロン対応のブースターを打てば勿論また効果はあがりますが、今、それを待つ、現時点での高い感染者数の状態で予防接種しない、というのは不用心である、と言えると思います。

先ほど、オミクロンのアップデートが半年後くらいに、ということですが、これから半年ごとにワクチンを打ち続けることになるだろう、一生、死ぬまで打ち続けなければいけない、とも言っている人もいます。どう思われますか?

笑 たしかに、そのようなことを言っている人はいますね。その心配も理解できます。初めは2回の接種で終わりだ、と言われていたわけですから。しかし、ウィルス学的な経過にも理解を示す必要はあって、科学的な知見も変わってきます。確かに、今、オミクロンが出てこなかったとしたら、、私は60歳以下で健康な免疫を持つ人の場合にはもうこれで予防接種は十分だ、という見方をしていたと思います。勿論、様子はみていかなければいけないでしょうけれど、、今の接種パターン、2回の接種を短い間隔でして、3回目を少し経ってから、半年後くらいする、というのは、他のワクチンでもよくあるパターンですし、それによって安定した免疫を持続することができます。ですから、これから半年ごとにずっとワクチンを打つ、という点では心配は無用です。勿論、免疫が理想的に機能していない場合に関しては、つまり、高齢者や免疫不全の人たちなどは年に一回予防接種をしなければいけなくなる可能性はありますが、まだその点ははっきりしません。しかし、そうなる可能性は十分にあると思います。

免疫が弱っている人たちは毎年打つことになるかもしれない、ということですね。他の人たちは、これから数年間そうである可能性はあるものの、例えば、あと3回ブースターとか、、今、当てずっぽうな数を言っていますが、、その後でエンデミックになってしまえば、ハイリスクのみ、ということですね。 さて、オミクロンの噂のなかで、オミクロンのような変異は予防接種者が多いから出てくるのだ、というものがあります。ウィルスがワクチンによる保護を回避しようとする、ということですが、接種率があがればそれだけ変異株が出来る確率もあがるのでしょうか?

いままででは、その逆です。これまでの変異株、デルタもオミクロンもそうですが、それが発生した地域は接種率が低いところです。どのように変異が起こるのか、ということを考えてみるわかると思うのですが、例えば、バクテリア系の病原体は遺伝子情報をお互いに交換することができます。「こっちは免疫を回避する持ってるぜ」「こっちは細胞によりうまく入り込むものを持ってるぜ」もしくは、より高い毒性など、なんでも良いのですが、それらの情報を交換しあうことができるのです。ウィルスではそのようなことは行われません。ウィルスの場合の変異は、言ってみれば偶然の産物であって、偶然メリットを得たウィルスはそのまま増えて拡がっていく。そして大体の場合には他のウィルスを押しやって優勢になっていくのです。この偶然に起きた変異は、免疫があまりないところでは拡散しやすいですからワクチンはそれを削減します。

アフリカとかブラジルですね。接種率が高いイスラエルなどではないですね。

そうです。少なくともそのようなことを聞いたことはありません。

次に、特に若い女性が持つ不安について取り上げますが、これは編集部にも大変多く寄せられる質問なのですが、本当に不妊にならないのか、という不安です。そのような相談を先生のところでもありますか?

そうですね。質問は受けますし、面白いことに、女性だけではなく男性からの質問も受けます。大変混乱している人も多いのでしょうが、これは完全にフェイクニュースが原因です。そして、これは反ワクチン派が主張する嘘のなかでもかなり古いもので、ワクチンが新しくでてくるたびにその話が出てきます。「ワクチンを打ったら不妊になる」というのは、どのワクチンにも当てはまりません。

しかし、その説明は一見正しくもみえますよね。

勿論、聞いた時には、「なんてことだ!大変だ!」と思う人も多いと思いますが、まずは、何が主張されているのか、というところを分析していく必要があります。ワクチンを打った時に、スパイクタンパク質に対する抗体がつくられます。これは感染時でも同じです。ここも忘れてはいけません。ここで言われるのは、この抗体が、シンシチン-1というタンパク質、これは胎盤発生に関わるもので、胎児への栄養供給と関係しますが、、その部分への攻撃をする。それが不妊に繋がる、とう理論ですが、スパイクタンパク質とこのシンシチン-1のアミノ酸の一部で共通点があるからだ、という理由づけがされています。しかし、ここでの共通点はあまりにも少なく、この程度では自己免疫反応は起こりません。そこまでに至るにはもっと規模が大きくなければいけない、ということは、自己免疫疾患に関する数多くの論文で証明済みです。2つ目には、マルティン・モーダー氏のユーチューブ動画でも大変良く説明されていますが、他のウィルス、例えばリノウィルス、これは風邪を引き起こすウィリス、またはロタウィルス、こちらは下痢などになる消化管疾患ですが、そちらのほうがもっと広い範囲での共通点がみられるのです。そこから考えると、これらのウィルス感染も不妊につながることになってしまいます。先ほど、「男性からも相談されるのは面白い」と言いましたが、やはり、「不妊」という言葉が大変大きな不安を与えるのでしょう。恐怖を煽ることがフェイクニュースの目的ですが、これは全く事実無根です。リアルライフデータをみても、出生率に何らかの影響が出ている国はありません。妊娠期の経過での変化もありません。早産、流産が増えているわけでもないですから、これは幸いなことに、、無視するべき噂です。

ワクチン接種後に何千人という赤ちゃんが生まれていますし。

しかも、計画されてなかったケースもありますし。治験では治験者の妊娠を想定していませんが、それでも治験中に妊娠して出産した人もいます。

ここから、長期的な後遺症についてお伺いします。「長期的なことはまだわからない」と言う人も多く、サッカー選手のヨシュア・キミッヒもその一人ですが、彼も「長期的な影響が心配だ」と。その後に感染して意見を改めて、予防接種の必要性を理解した、と言っていることをここで付け加えますが、副反応がワクチンを接種したかなり後、何ヶ月もあとに出てくる可能性がある、と思っている人も多いです。そのような質問が来た場合にはどのように答えていらっしゃいますか?

まず、そのような質問が来た時には、、短く、「そのようなワクチンの長期的な副反応は存在しない」と答えています。つまり、今日、私が予防接種をして10年後に疾患症状が出ることはない、ということです。勿論、なんらかの支障が出ることは幸いなことに稀ですが、、あります。それはウィルス性感染症にも言えることであって、例えば、豚インフルエンザのワクチン、パンデムリックスというワクチンでしたが、そのワクチンではナルコレプシーという副作用が起こりました。突然激しい眠気に襲われるものですが、これは感染時にも起こる症状で、インフルエンザの流行後にもケース数が増加します。これは残念ながらワクチン接種後にも起こりうることです。抗体が形成される際に起こる反応ですが、、

豚インフルエンザワクチンの際にですね

そうです。コロナワクチンでは起きません。しかし、例としてあげた理由は、このようなことは接種から10年たってから起こるのではなくて、かなり直後に起こることなのです。問題は、このような症状を認識することと特定することです。似たような症状は常に起こりますから、どれがワクチンと因果関係があるのか。それが明らかになるのが、一定の数での検査が行われて確認されてからです。ワクチンの長期間の治験が行われるのもこのような理由からで、ワクチン接種から長い期間経った後に出る症状を調査しているのではありません。20歳の時に破傷風のワクチンを打たら60歳の時に心筋梗塞になった、とか、そのようなことはナンセンスです。そして、稀に起きる現象を記録する、という目的もあります。コロナワクチンに戻ると、今年、アストラゼネカのワクチンによって、稀ではあるものの若年層で静脈洞血栓症が起こる、ということがかなりの人数での接種後にわかりました。それが明らかになってから速攻で接種推奨対象が改正されました。安全性が再優先されますから。しかし、これもかなりの数の接種が行われてはじめてわかったことで、ワクチンの長期間に渡るものではなく、数から出てきたデータです。そして、そのデータは出ています。80億以上の接種のデータです。ここからもどれだけの安全性か、ということはわかると思います。それでも、長期的な影響を心配している人は、Covid-19の後遺症を知っておくべきです。

パウル・エルリッヒ研究所所長も言っていましたが、ほとんどの副作用は接種後すぐに現れる、と。たまに数日後、ごくまれに数週間後に出ることはあるが、数年後に出るものはワクチンではいままでにも観察されていない、ということでした。

そのようなことがない、ということは何度も繰り返して説明すべきことだと思います。このようなことを心配する必要はありません。データと知見からも、安全性は極めて高い、ということは明らかです。

次にこれもSNSでは有名な話ですが、何千人もの人がワクチンで死亡している、と。これはどうでしょうか。

これは、単純に医学の透明性の悪用です。パウル・エルリッヒのデータやEMAでは、あらゆるワクチンの副反応、疑いが持たれるケースが集められるわけです。そこには勿論、ワクチンの接種との関係性が疑われる死亡ケースも含まれます。私は1年前にワクチンが出来て接種が始まった頃にすでにこの点での懸念はしていました。というのも、まずは高齢者の集まる老人ホームや施設から接種が始まったからです。超高齢者から接種していけば、勿論死亡する人も出てきます。これは年齢的な問題です。それがワクチン接種と直接関係があるかどうか。調査の結果、直接の関係性は認められませんでしたが、公表されている疑いが持たれるケースのリストを取り出してそれをワクチンの危険性の証拠として利用する人がいることは確かです。私はそれは極めて悪質なことだと思っています。ドイツのように情報に透明性を持たせて公表する、ということは大変重要なことですし、疑いが持たれたケースはきちんと追跡調査もされていますから、どの角度からみてもワクチンの安全性というものは信用するに値するものだと思うのです。もう一度言いますが、このようなデータを悪用することは大変悪質な行為だと感じます。

それでも、ワクチンの副作用というものは存在します。アストラゼネカの血栓もそうですし。

勿論です。ですから、これに関してはしっかりと説明をしていかなければいけないことは確かです。アレルギーショック、というものもありますし。しかし、これは医薬品でも起こる可能性があるもので、特別、今回のワクチンで頻度が劇的に上がった、というわけではありません。アストラゼネカの静脈洞血栓症は、勿論、起こってしまった場合にはかなり深刻な疾患です。しかし、この知見への反応、対応が問題です。本来であれば、そのようなことがわかった、ということによってその後の対応の改善ができるわけですからネガティブなことではないはずです。それによってワクチンの安全性も上がります。根本的にはそのようにきちんと追跡される、ということはポジティブなことです。

ワクチンの副反応は、少し腕が腫れたり、、私の場合がそうでしたが、、そのようなもの以外にも、、、、心筋炎などもあります。これは特に若い男性にmRNAワクチン、モデルナ接種後に現れたものですが、それを心配する声は先生のところでもありましたか?

勿論ありました。かなり大々的に報道されましたし。これは副反応的には重度ですが、疾患的には軽症から中軽症です。感染時のリスクのほうが常にワクチンのリスクよりも高いのです。予防接種をするほうが感染するよりも良いのは明らかで、特に青少年では、感染時に心筋炎になる確率はワクチン接種時よりも4、5倍高いです。いつか必ず感染する、ということは確かなのですから、私だったら予防接種をする、というほうを選びます。青少年の場合には、接種量を減らして接種期間も6週間、と長くすることによってこのような副反応が出るリスクも削減されています。子供の場合には、、これも診療所でかなり聞かれることですが、、12歳以下でも6週間の間隔をとったほうが良いのではないか、と思っていましたが、今、アメリカから500万人の12歳以下の子供の予防接種において心筋炎はゼロケースです。勿論、きちんとした観察はされています。調整、改善というようななことを、常に1年半、2年の間行ってきているのです。

どちらにしても、30歳以下はモデルナではなくバイオンテックでの接種ですし。

数の比較をすると、バイオンテックのワクチンは30マイクログラム、モデルナは100マイクログラムです。1回目、2回目の接種分ですね。3回目のブースターはその半分で50マイクログラム。それでもバイオンテックよりは多い量です。

予防接種をすることが出来ない、という人も存在します。思っていたよりも多いと聞きますが、どのような場合でしょうか? 誰にワクチンを打ってはいけないのでしょうか?

これは私が少し違和感を感じるところではあるのですが、、予防接種の対象は、常に「予防接種は可能な限り全員するべきである。出来ない場合を除いて」という1文で済まされてしまって、まるでかなりの数の人が予防接種をすることができないような印象をうけるのではないでしょうか。私の医院にも、他の医者から「あなたは病気すぎるから、心臓病があるからやめた方が良い」と言われた、という人が来ますが、そのような場合には特に予防接種が必要なのです。リスクが普通の人よりも高いですから。誰が予防接種をできないのか、というと、今の時点では、5歳以下の子供と、妊娠初期、初めの3分の1の期間中、この時期にはワクチンだけではなく可能な限り医薬品も控えるべきですが、、これは何かが起こる、というよりはリスクの可能性は可能な限り取り除く、という視点からの推奨です。それ以外でワクチンを打つべきではないのは一つだけ、それは、ワクチン成分に対する重度のアレルギー反応がある場合です。これは非常に非常に稀なケースだと言っておかなければいけません。私の周りでは1件、同僚の開業医院であったそうですが、私が接種してきた何千ものケースのなかではありませんでした。他の同僚にも聞きましたが起こっていません。ですから、予防接種が出来ない人というのはそういないのです。かなり少ないです。

基礎疾患はあったり、、先ほどのように心臓病などを持っている場合には予防接種後に特別な監視などはされるのでしょうか?

1回目の接種後の監視時間は、約15分です。治験データによると、そのようなアレルギー反応のほとんどが接種後10分以内に起こっています。私のところでは、患者によっては30分くらい診療所で様子をみる場合もありますが、3回目の接種ではそのようなこともあまりしなくても良いです。ハイリスクの場合もすることはありますが、私のところではほとんど何も起こっていません。私がよくみるのは、どちらかというと、若い人たちが注射の針をみて気分が悪くなったり、、というケースですね 笑 たまにありますが、、足を高くして横になってもらってコーラを飲んでもらうとよくなります。

最後にお聞きしたいのは、mRNAワクチンが私たちの遺伝子を変えてしまうのかどうか、ということです。これは大変複雑な話ですのでそう簡単には説明は出来ないと思います。先生が説明する際にも、図を使って説明されていますよね。複雑であることはわかっていますが、そのような図を使わなくても理解できるように簡単にご説明いただけますか?

これはかなり初めの頃から言われてきたことですが、、まず、私たちの遺伝子はDNAです。DNAは細胞核のなかにあります。2本の毛糸にビーズのように情報がくっついている、と想像できるかと思います。4つの塩基がありますが、先ほどの2本の毛糸はそれぞれ結合してて、コピーされることが阻止されている状態です。さらによじれて螺旋状になっています。それが細胞核のなかにはまるために、くしゃくしゃっとまるめられているわけですね。毛糸をこう、丸めた感じです。遺伝子を変えるためにはまず、このまるまった毛糸をほぐして1本ずつとりだし、変えたい部分の結合を解除しバラバラにした状態で情報が読み取られる必要があります。アドレナリンがつくられたり他のホルモンが作られる場合には、司令がだされて、それを図書館司書のような役割を果たすところが情報を探す、というようなことが行われます。その部分が読み取られてDNAからRNAがつくられます。RNAは細胞核からでることが可能です。DNAはできません。化学的にもDNAとは異なります。RNAでは変化が起こっていますからそのままではDNA、ゲノムに戻ることはできません。この放出されたRNAをもとに、工場のような細胞のなかでタンパク質がつくられます。これらは細胞から出ていくか、細胞壁に組み込まれます。この工場には、品質管理、というものがないのです。つまり、RNAが掲示したものは何の疑いも持たずにつくってしまう。その性質をウィルスが利用するわけです。RNA型のウィルス、ここにはほとんどの風邪ウィルス、下痢ウィルスなどが含まれますが、風邪をひいてしまった場合には、これらのウィルスのRNAをもとに細胞がウィルスをつくってしまいます。ワクチンの場合には、このRNAが短い破片です。免疫を刺激するにはその小さな部分で十分だからです。

その逆にRNAの小さな破片がDNAゲノムに組み込まれるためにはどのようなことが行われなければいけないのでしょうか?

そのためには、まず毛糸の塊をほぐして1本1本とりだしてはさみのようなもので一部を切り取って、RNAを逆コピーしてDNAにし、、因みにこれはHIウィルス、エイズなどの病原体はすることができますが、、複雑な過程を経てそれが行われたとしても、、さらにそこの場所に貼り付けられなければいけません。ウィルスでは可能なことではありますが、そのようなケースは報告されていませんし、この、mRNAワクチンではさらに困難だと思われますが、私は分子生物学者ではありません。しかし、逆に考えると、もしそのようなことが常に起こっているのであれば、、RNAウィルスに感染した場合、風邪をひいた場合に、下痢になった場合に、、毎回、私たちのゲノムが大変なことになるはずです。風邪は毎年ひきますから、本当に大変なことになっているでしょう。想像を絶します。ですから、そのようなことが起こる、ということは考えられなくて、特にワクチンでそのようなことが起こる、ということはその兆しすらありません。

疾患、Covid-19についてですが、先生のところでは治療も行われているのでしょうか?それとも、直接大きな病院にいくケースのほうが多いですか?

通常であれば、まず開業医院などで家庭医が検査をして診断します。私のところにもかなり重度の症状で来院した人もいました。呼吸困難、とかですね。若い人も多かったので、入院させるべきなのか、治療をどう行うか、という判断も重要なところです。

どのような感じだったのでしょうか?

数をみてもわかるように、軽症が多いですが、重度の場合にはやはり呼吸困難であったり、Long covid、感染から4週間後以降に残る後遺症ですね、そのようなものや、心筋炎、靴の紐を結ぶだけで動悸がしたりなど、、大変多様で幅広い症状があります。

Covid-19は風邪だ、とも言われます。

その比較はありえませんね。まず、、これは私も診断の際に何度も何度も言うことなのですが、Covid-19には3つの特徴があります。まず、社会全体での免疫度が低い、ということ。そして、後遺症がある、ということ。重症患者、Long covidなど、これがなければパンデミックにもなっていないでしょうし、去年のクリスマスから今年の夏までに60000人の死者もでなかったでしょう。2つ目には、感染伝播が症状がで始める前に起こる、ということです。2、3日前という場合もあるほどです。何か変だな、と思った時点でもうすでに何人もの人にうつしてしまった可能性があるのです。3つ目には、重症化するケースが少ない、ということ。周りにあまり重症患者がいなければそんなに酷いわけはない、という印象をうけるかもしれませんし、陰謀説を唱える人にも格好の餌にもなるかもしれません、インフルエンザと唯一比較できると思われるのは致死率だと思います。インフルエンザの致死率は0、05%で、それに比べて予防接種がされる前、今年の夏までのCovidの致死率はヨーロッパでは1、6%でした。これは大きな違いです。現在では、約0、8%、若干これよりも低いかもしれませんが、それでもインフルエンザの16倍です。そして、医療の逼迫が起こっています。2018年のインフルエンザの大流行の時でも、病院での状態は現在の比ではありませんでした。このパンデミックで病院での医療従事者が経験しなければいけないことは、いままでのインフルエンザとは1ミリも比較できません。このような比較を持ち出す人とは、議論をする意味すらないと言えます。

Covidに効く、と信じられている薬があります。イベルメクチンです。これはアルゼンチンで完売し、ドイツでもオーストリアでも買い占めが続き問題になりました。この薬は本来は動物用の虫下し、ですよね? 人間では疥癬の治療薬としては承認されています。試験官内による実験でCovidに効果がある、というデータが出たために治療薬として、そして予防のため、つまり感染していなくても飲む人がいるようです。しかし、イベルメクチンの治験では良い効果は認められていません。先生は患者からこの薬を飲みたい、という相談は受けたことはありますか?

私のところでは幸いありません。誰もきませんでした。本当にこのイベルメクチンはおかしな話だと思います。これは寄生虫を排除するための成分であって、細胞内で塩化作用、まあ、脱塩素剤のようなものですね、幸い哺乳類の細胞ではそれはおこりませんが、、同じようなことが起こってしまったら猛毒です。しかし、全く無害というわけではないのです。脳への影響が起こり、意識障害、昏睡状態に陥ることもあります。オーストリアでは大々的な宣伝がされたために、かなりの数の救急ケース、重症ケースが報告されていますし、昏睡状態になって集中治療を受けなければいけない人が続出しました。イベルメクチンの治験のデータはほとんど全て事実ではない、とされていて、論文も取り下げられています。効果がある、という立証はされていません。これを独自判断で服用する、というのは大変危険です。絶対にしないでください。私も論文に目を通しましたが、非現実的な量での試験管内での実験で、そのような高濃度でウィルスが死滅したとしても、同じ量を人体に使えばそれこそ大きなダメージが起きることは当然でしょう。培養細胞はとても繊細ですから、試験管のなかであればいろいろなものでそれを破壊することは可能です。洗剤を入れても死ぬでしょう。某アメリカ大統領も「消毒液を飲めばいいじゃないか」と言っていましたね。それによって培養細胞も死にますが、私たちも生き残れないでしょう。本当に危険ですのでやめてください。生死に関わることです。

最後の質問です。パンデミックが始まってから、科学者たちの意見はいろいろと変わってきていますから、「結局、何もわかってはいないのだ」と言う人もいます。パンデミックになったばかりの時には、「マスクなんて必要ない。意味がない」と言っていたのにもかかわらず、今はマスクをしなければいけない。しかし、あの時にはマスクも手に入りませんでした。医療従事者の分を確保しなければいけなかったからです。それでも、科学者や医学者が意見を変えたり改正したり、ということは普通に起こることなのでしょうか?

そのようにしてほしい、と心から願いますよ。問題が起こったり、新しい知見が出てきたら、それに対応すべきでしょう。この間の講義で話したことなのですが、家族で旅行した際に、フランスの途中で妻が「ディジョンで曲がって」というのを私が無視したら、地中海に行くつもりが大西洋に出てしまいます。事実に対応していくべきです。もしくは、氷の上を歩く際には、「ここは大丈夫な気がするよ」という感覚で言っている人よりは、きちんと負荷の測定ができる人の意見を聞くべきです。先ほどのアストラゼネカの件をとってみても、モデルナの件をとっても、mRNAワクチンの量を子供では調整する、ということをとっても調整して改善していかなければいけないことです。3回目の接種に関しても、治験ではどのくらいの期間抗体が持続するのか、ということはわからなかったわけですし、そこで、抗体がある一定の期間で削減していく、ということが明らかになったのであればそれを元に推奨を変えていく、ということは当然です。私的にはこれはデメリットではなくて、信頼がおける証拠だと思っています。しっかりとみて最適な推奨に変えていく。それを激動の状況のなかでしていくわけです。これは研究や医療だけではなくて全ての分野に当てはまることだと思います。私たち一人一人が臨機応変に対応していかなければいけないのだと思います。

今日はお時間をいただきありがとうございました。





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