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11月に聴きたい一枚♪🇺🇸 〜大統領選挙から感じたこと〜

The Seasonal Taste 🇺🇸 

11月に聴きたい一枚

Curtis Mayfield
『BACK TO THE WORLD』

ソウル&ファンクのレジェンドの1人と云われる、カーティス・メイフィールド。

この一枚。解説によると、マーヴィン・ゲイがアメリカの現状を憂い『What's going on』を作ったのは、まだベトナム戦争の戦局が悪化の一途を辿っていた71年のこと。

それから約2年、アメリカは長引く戦況と国内情勢の悪化に耐えきれず、ついにベトナム戦争から撤退する。
そんな人々の疲労感とやり場のない怒りが
充満していた73年に彼の五枚目のアルバムとしてリリースされた。

この約50年前のアルバムジャケットに全く古さを感じない。今年出された一枚かのよう。

今回初めてアメリカ大統領選挙を張り付くように自分なりに状況を追いかけた。
日本を含め、これだけの興味を持った選挙は初めてだったかも。

まず直接国民投票だと思っていたこと、、。
選挙人って!?というところから始まり、次々出てくる専門用語。
スウィングステート、ラストベルト、Red MirageにBlue Wave。赤い蜃気楼が消えて、その後に青い波がやってくると。

そんなことあるか?と思っていたら本当にやってきた。あーこれのことなんだと。

とにかく何も知らないことを知れた。

アメリカには一度も行ったことの無い僕が、今回の選挙で特に興味深く勉強になったり感じたことは大きく三っつある ー

1.
一つは、NHKが各州の開票状況と共にその州の特性をシンプルだが表示していたこと。

それぞれの州にどんな層が住んでいるのか。白人、黒人、ヒスパニック、富裕層、貧困層が多いのか、主要産業とそこに本社を置く主な大企業、近年の民族的移行、etc...

アメリカの地図をみながら、大まかながらどの州や街の人たちが何を望んで支持しているのだろう?とみえてきた時間だった。

赤色が青色を見事に分断していくその地図が生々しいなと。

きっとNHKでさえ例外ではないだろうが、日本の民放情報番組はなにをやっているんだろう?と改めて感じたり。

たまたま見たトランプ大統領のコロナ感染を中国のバスの乗客が知り、それにみんなが大喜びする映像。それを恥ずかし気もなく放送する"情報"番組の感性はどこからくるのか。

ABCの放送にも意識的なバイアスがかかってるんだろうな、とも感じたり。

でも今回保守的メディアだと知ったけど、FOXが他のメディアに先がけて、アリゾナにバイデン当確を出したことには驚いた。
ちなみにNew York TimesやBBCはまだ出していない。

2.
もう一つ、興味深かったのが、
マイケル・マカティアさんが現地N.Y.の街なかを歩きながら、暴動に備えて板張りをしているアパレルショップの人の姿や、トランプ優勢情報の中で様々なひとに話を聞いていたシーン。

N.Y.は民主党支持者が圧倒的な中で、トランプ支持者にも話を聞いていたこと。日本からの目ではなかなかわからないそのシーンは貴重だった。
出来れば半々の声を観たかったけれど。

印象的だったいくつかの言葉。

「いい感じだね。他の人とは違うけど」
と話す50代ぐらいのお洒落な男性。

「バイデンが大統領になったらかなり左寄りの政権になる。それが怖いんだ。最近結婚したばかりで妻は妊娠中なんだ。
建設会社で働いているけど、またロックダウンになったらこの業界は終わりだね。」
と話す30〜40代の男性。

「周りはバイデンやサンダースを支持する人ばっかりだったし、反対側の意見に耳を閉ざしてたのね。現実を目の当たりにしてがっかりしたし、目も覚めたわ。」
と話す20才前後の女性。

トランプ元大統領の醜態を必要以上に垂れ流すメディアで感情的なバイアスがかかっていくが、半分弱の人たちは支持している事実。
この言葉がアメリカのごく一部ながらも生活者の貴重な生の声だと感じた。

そもそも4年前、トランプを選んだのはアメリカのひとたち。もし税金や近隣の移民に日々頭を悩まされていたとしたら実際にどんな判断をするだろう?

僕たち日本人が彼らと同じ状況ならどんな一票を投じるだろう?
N.Y.の街で「みんなと違うけど」と堂々と言えるだろか?

不確かな情報に左右されて、正義と悪とすればわかりやすいが、想像力が奪われる。

ワールドミュージックを聴く日々と、映画で何十年以上前から人種差別と戦ってきた黒人アーティストやネイティブインディアン、移民のエピソードを目の当たりにする日々の中、今回の結果にはホッとしたのは事実。

今朝の勝利演説も生で見てみたいと思ったのは今回が初めてのこと。
使われている音楽や旗を振る人々の熱気、大きくBIDEN/HARRISと上下にデザインされた文字が意味すること。

色々と感じることができた。
改めて日本の選挙とは別ものだと。

3.
今回もう一つは、戦った両者が70代だということ。
バイデン大統領は史上最高齢と。

ニュージーランドの女性首相をはじめ、世界の政治のリーダー、大臣が30代、ときには20代がもう世界のひとつの流れだという記事に個人的に取り組んだのは昨年。

そして今回、あのアメリカがこれなんだと正直に言ってしまうとがっかりした。
それと同時に失礼ながら、この国をリードする体力や知力や集中力は持続できるのだろうかと。
仮に8年間だとして。

そんな中で今回はtwitterでも開票状況を知りたく、色々な発信者の人たちの情報をリアルタイムに追ってみた。

それで僕の限られたフォローながら、最初にバイデン当確を発信していたのは、アメリカCNNの情報を拾った、鳥飼玖美子さんだった。お歳は74歳。

そして、そのあとすでに次々と敗者のスピーチについて、過去のエピソードを交えて発信を続けていた。

その後20時間近くして、米日の主要メディアが当確を出し、多くの有識者の人たちもそれを発信する。僕も同じくそのタイミングで知る。

僕自身、昨日は70代の常連さんと、その幼なじみの人たちが国内の社会や、歴史の話を真顔であーだこーだと議論するシーンを供にして。だけど、いつもケンカにはならない。

アスリートや将棋の世界ではないが、年齢と共に衰えていくものがあり、それは若さには敵わない。

先日見た映画で、黒人差別とも戦い続けたマイルス・デイビスは10代の名もないアーティストを舞台に引き上げる理由に、
「創造性や芸術的感性は年齢を重ねたからって増えるものじゃ無い」というような発言をしていた。

子供たちを見ればそれはいつも感じる。

だから70以上のひとたちの創る何かには失礼ながら疑問視していたが、そのパワフルにまだなにかを掘り下げる目の前の人の姿を見ながら、年齢は関係ないのでは?と思うようになった。

若くても感性を閉ざし考えることを辞めるひとたちがいる一方で、その逆もしかり。

思えば学生時代からの友人たちと政治の話を真剣にキャッチボールしたことはほとんどないし、核心をつくことを言ってしまえば、ムッとしてしまうシーンもこの場所で多く見てきた。

そこに並んでいる(意識的に)CDの山には触れることもなければ流れてくる音に耳は止まらない。

目の前の渇きと空腹を満たすこと、誰かわからない人たちにレーティングされたサイトの情報をコンパスにして、インスタ映えに満足して帰っていく。

思えば、僕らの学生時代から(愛知、名古屋しか見ていないが)誰かと同じが心地いいという感覚が強まってきたのでは、と思う。KYなんて言葉が流行ったがそれが謎のルールを生み。

それは1年も持たずに辞めた会社でも同じだった。
みんなで連れションするように固まり合う先輩やグループリーダーの姿があった。それが組織の暗黙のルールのように。

もちろん僕が見てきた一つの学校や組織の姿だが、昨日接した70代の人たちの姿には明るく意見を戦わせる風通しの良さがあった。

そうゆう時代の後押しがあったのかもしれないし、それはわからないけれど、その姿を定期的に見るたびに、ネットやsnsの無い時代に考え抜いてきたこの人たちのエネルギーや知力、誰かと一緒の心地よさでなく自分のテーマを掘り下げる探究心はいい刺激をもらう。

99人がわからなくても自分はこれが面白いと思う。僕自身そういう意識で今日もありたいし、そんな人とこれからも出会っていきたい。
1歳でも100歳でも。

色々なことを考えさせられるアメリカ大統領選挙になった。

そんな今の季節を現す一枚、是非どうぞ。

The Future is Unwritten.

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