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秋に聴きたい一枚♪〜フラメンコギターとSaudade〜

At the beginning of November ♪🇪🇸
PACO DE LUCIA
『LUZIA』

秋 本番。
スパニッシュ音楽 本番。

スペイン、フラメンコ界の巨星、天才と云われる、パコ・デ・ルシアの1998年作の一枚。

ジャズといえばマイルス・デイビスが最初に出てくるように、
フラメンコといえば彼の名が最初に出てくるのではないのかな?

それぐらい僕が語ることのない人物ですが、
彼のこともまた僕はほとんど知りません。

先日紹介した、ブラジル7弦ギターの天才と云われる、
ヤマンドゥ・コスタ。
「あの巨星 パコ・デ・ルシアが、“ジャンルを超えた私の後継者”」と述べたその言葉を目にしたり。

ブラジル音楽好きのお客さんに「聴いた方がいい」と勧められたり。
そんな中で彼の名前だけではなく、その音楽の入り口を開けてみようと思って手に取った一枚。

ちなみにこの一曲『MANTECA COLORÁ』

解説によると、
「邦訳しにくい曲名である。
mantecaとは、“脂肪/バター”という意味の他に人間のぜい肉を意味したり、アンダルシーアの方言では“粋/真髄”をさす。それ以外にもマリファナの意味もある。

一方のcoloráは、“着色した”とか“赤みをおびた”といった意味で、両方でなにを指すのかは全く不明。」

きっと日本語にできない、その国や地方だけが持っている言葉や感覚というものは多くて、スペイン語圏やポルトガル語圏の音楽にはそういったものを特に多く含んでいるように思う。

何度も述べている“Saudae”。
直訳すれば、哀愁や思慕、切なさとかいう。

先日たまたま一部だけだが見られた過去のドキュメンタリーがやっていた。
「父の精魂を傾けながら絶筆となってしまったこの作品を、必ずや私の手で完成し無念を晴らすつもりだ。」と30年の歳月をかけて親子で完成させたという『孤愁』。

その期間の中で何度もポルトガルに出向き人に会い、音楽を聴き、その中で"Saudade"の答えを探そうとしていた。

ある女の子にSaudadeってなに?って聞いたところ、その子は顔を真っ赤にしてしまったという。

その何十年後かに再び訪れそのエピソードを話してみると、大人になった彼女は「そんなことあったかしら?」なんてふうに笑っていた。

この番組を観た時、僕の感じでいる日本語にそのまま訳すSaudadeはちょっと違うのかもしれない?と感じた。

彼がその30年をかけて、答えを見つけて本を完成させようとする姿からも、なんだか自分の身が引き締まるような思いがした。

翻訳サイトや、今後の自動翻訳機でそのまま訳してしまえば、どんな言葉も簡単に意味は通じるのかもしれない。

ただ、このSaudadeのような感覚や、そのひとたちの暮らしや文化、バックグラウンドのようなものを少しでも知り、その言葉のままの“感覚”を掴もうと思わなければ、きっと、そのなにかには近づくことはないんだろうなと思う。

音楽はその感性を養ってくれる。
少し、彼らが持つその何かに近づけるようなそんな楽しみを与えてくれる。

彼のこの曲のタイトルに戻れば、
まるで僕たちの日常を現しているようにも思う。脂肪と砂糖の中毒に無意識に侵され、似たようなバラエティやワイドショー、不確かなネットニュースで、考える力と時間を気付かぬうちに奪われていく。気づけば、ぜい肉が増えていく。

マリファナには目くじらを立てながら、着色され人工的甘みのついたストロング缶は、なにごともなく侵食し。それに無意識に飛びつかせるビジネス。

お酒で人が変わってしまうような、なにかドロドロとしたものが出るようなそんな姿をたくさん見てきたが。
自分でお酒を出しながら、また飲みながら、言うのもなんだけど、お酒も人と状況、そのモノ次第で立派なドラッグだなと、10年以上よく感じている。

僕自身、日常で無意識にハマっていってしまうAddictionのワナをこういう音楽が引き戻してくれる。

彼のいう、その"粋"や"真髄"にはまだ何年かかるのかは分からないが、ずっとそれはわからないかもしれないが、その感性に少しでも触れることが面白い。

音楽を聴くにはとてもいい季節だなと思う。
色づく木の葉でも見ながら、是非どうぞ。

Enjoy‼

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