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千秋楽の夜長に聴きたい一枚♪🇦🇷(11/22)

The Seasonal Taste 🇦🇷

千秋楽の夜長に聴きたい一枚。

Astor Piazzolla
『La Camorra』

日本語タイトルは『情熱的挑発の孤独』

1921年生まれのピアソラが、1992年に亡くなる、その4年前に発表されたこの一枚。

様々な音楽的試行錯誤と挑戦の末にたどり着いた、"五重奏団(キンテート)"による彼の最高傑作の一つだと云われている。

この一枚にある、栗本斉さんのライナーから抜粋すると、
「アルゼンチン・タンゴの革命者。タンゴの破壊者。タンゴを芸術に昇華した男。
様々な表現があるが、それだけ新しいことを続けてきたのは間違いない。

そしてタンゴの代名詞となった彼にひとつの転機として訪れたのが、キップ・ハンラハンとの出会いだった。

NYを拠点に、ワールドミュージックからアンダーグラウンド・シーンまでを取りまとめて新しい音楽を生み出していた、鬼才プロデューサーである彼がピアソラの魅力に取り憑かれたのは"常に前に進んでいくスタンス"という共通項も大きかったのだろう。

1986年に彼らはタッグを組み、じっくりと時間をかけてアルバム『タンゴ:ゼロ・アワー』を作り上げる。
この作品は五重奏団の脂の乗り切った演奏がクリアに記録されており、ピアソラの全作品の中でも最高傑作に挙げるファンが多い名盤である。

その出来栄えに満足したピアソラは、再びハンラハンと組んで多国籍ミュージシャンと共演したコンセプト・アルバム
『ザ・ラフダンサー・アンド・ザ・シクリカルナイト』(1987)を制作。

そして、五重奏団としての続編として1988年に録音したのが、この『ラ・カモーラ』というわけである。

晩年のピアソラの素晴らしい瞬間を切り取った最高傑作に値するアルバムであるということ。ぜひこの美しくしくも壮絶な演奏で、魂を揺さぶられていただきたいと思う。」

彼の映画と先日観たマイルス・デイビスでも印象的だったことは、その世界の代名詞と呼ばれて尚、亡くなるまで進化し続けていたこと。その過程で、今までの自身のファンを失望させ、失うことをしてまでも。

その覚悟と好奇心はその顔に滲み出ているし、このアルバムのタイトルと、一曲目が『Soledad=孤独』にも現れているように思う。

今流れているこの一曲は11分にも及ぶ。
その静と動のコントラストは、聴いていると自然と手に汗がにじむし、本当に内側が揺さぶられてくる。

彼の生き様がその音楽に乗り移っているようにも感じる。

話を日本に変えて。
相撲の世界では千秋楽を迎えた今日。

日本中を惹きつけたある元横綱が言っていた、
「相撲は本当に我慢だと感じる。」
動きたくなるところを、我慢して静を保つ。
そして相手のスキ、機を見つけて動き、勝負をかける。

それは彼ら相撲の番付世界にも通じるように思う。
(幕内,十両/幕下,三段目,序二段,序の口)

前に進む情熱的なある力士は、その魅力的な取口が原因で怪我を多発して幕下に下がっていく。

大関まで上がったある花形力士が数々の怪我と内臓疾患で序二段まで下がり、その名前はだんだんと忘れられていく。

アクロバット相撲でお茶の間にも浸透したある力士は、靭帯の怪我で序ノ口まで下がり、その後幕下までようやく上がってくるが、また同じ怪我で再び序の口まで落ちる。

そして今年彼らは皆、表舞台に戻ってきた。
想像できない孤独の日々の中で、その情熱を失わずに。

そして同じようにその表舞台に一度も立たずに去っていく力士が圧倒的に多いこの世界は、いくつもの朝稽古を毎年夏に見てきて、本当に残酷で過酷な世界だとも思う。

それでもその一つの円の中で、いつの日かの光を見ながら、ほとんど裸でぶつかり合う姿には清々しさと日常ではなかなか得られない何か刺激をいつももらう。

覚悟をもって前に進みつづける音楽は魂に響く。

まるで貴景勝のように。
と今日は言いたい。

いつの日か相撲映画を撮る日がきたら、彼の音楽を合わせてみたいと、そんなふうに勝手に妄想してみる。いまのところ余談です。

情報も、音楽も、お友達感覚やお店との付き合いさえも、
インスタントに手に入れてわかった気になりやすい今日この頃。

ちょっと我慢して11分の音楽聴いてみませんか?
いい刺激になると思います。

秋の"夜長"に是非どうぞ。

Give It a Try ‼︎ Enjoy ✌︎

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