喫茶店のジジイ
喫茶店。言いたいことをバーッと喋るだけ喋って人の話を聞かないジジイ(愛をこめてジジイと呼ばせてもらう)を見ていてしんどいような泣きたくなるような。カウンターにいたおじさん2人とマスターがギターの話とかをしていたところに来たジジイ、住んでいるところでトラブルを起こして出て行ってくれと言われて今日次に住む家を見てきたらしい。透析のために通う病院を探すらしい。80なんぼらしい。長くオンナはいたけど結婚しなかったらしい。誰かを殴っちゃったらしい。スチャダラパーみたいなカウンターのおじさんの片方が「もう性格を直すのは無理だから自分が合うところに行く方が早いよ」と言って、マスターは本当はあんまり言いたくなさげな感じで「おやっさんなら浅草とか錦糸町とかいいんじゃないのってねえ」と笑った。耳が遠いジジイはなんかフニャフニャ言って、そのあと誰も喋らない時間があって、もう片方のおじさんがまた音楽の話に戻した。ジジイが「僕は公園とか道でタバコは吸わない。そういうマナーはちゃんとしてるんだよお」と言うとマスターは「おやっさん、そういう所はちゃんとしてますもんね」と言い、そしたらスチャダラパーが「マナーとかじゃなくて条例、ルールっすから」と言っていた。途中、マスターにどこかで買ったなんかの食べ物を渡した。このジジイ、買う時にマスターの顔を思い浮かべたんだと思ったら私はてんてんてん。マスターの奥さんが店に顔を出して、ジジイに気がつくと、アレー!と言って喜んでいた。ジジイはまた変わらない口調で、出ていけって言われちゃったんだよ、と教えていた。ジジイジョーク・僕のこと忘れないでよお?ははははは。奥さんは心から「そうなんだ...なんか悲しくなりますねえ...」と言って、もう二度とこの店にジジイは来ないみたいな感じになってた。スチャダラパーが店の壁を指さして「この並んでる音楽家たちの隣に写真飾りますよ」と言って笑った。ジジイはまたフニャフニャ言っていた。
お会計のときマスターにうるさくてすみませんと言われたけど、何もすまなくないから、いや全然、楽しかったですと言った。でも端のテーブル席でただコーヒー飲んでノートに色々書いてただけのやつが楽しかったとか、めちゃくちゃ聞いてたんじゃん変じゃんと思った。けど楽しいというか、色々と感情が動いたのはまじだから。私のリュックにぶら下がってるフラミンゴを見てジジイが、可愛いのつけてるねと言った。あぁ、フラミンゴ。と言ったらジジイが今度は缶バッジを見て、ジャラジャラつけてるねと笑った。これ多いよねと笑って言って店を出た。もう少しゆっくり顔とか見てから出ればよかったってすぐに後悔した。ジジイ、これから寒い季節になるから色々気をつけて。分厚い毛布と布団で寝てね。