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【新譜解説】terao 1stアルバム「Ethereally Delusion」

こんにちは、teraoと申します。
先日リリースした新譜「Ethereally Delusion」がもっと楽しめる解説記事になります。稚拙な文章で恐縮ですが、何卒お付き合い頂けると幸いです。

まえおき

今まではコンピレーションアルバム等に曲を書き下ろすことを主軸に作曲をしてきた私ですが、遂に自分の曲(と、そのアレンジ)だけが収録されたCD、所謂ソロアルバムを制作する運びとなりました。

以前、自鯖(Discordサーバー)のVCで美術・芸術分野を良く嗜んでおられる方から『美術館に展示されている作品には、大抵脇に解説が添えられているのに音楽分野においてはそれがない(ことが多い)!!!!何故!!!!(意訳)』との話を伺う機会がありました。確かに。無言で頷く自分。作曲家自身がTwitter等SNSで、彼らが書いた曲について話題として触れることはあれど、わざわざ律儀に「解説」という枠を設けてまで曲について掘り下げ、記録として残すケースはあまり聞かない。
ということで、この話に納得した私はこちらの記事を執筆するに至りました。何だかんだ、自分も言いたい事は沢山ありますし、前述の通り解説を求められたので、需要と供給が合致すると思った点も動機の一部です。この解説を通して、少しでも当作品を楽しむための一助になれば幸いです。

文章を書くことがあまり得意ではないので、例によって長丁場になっております。途中で飽きても責任は負いかねます。

E線の彼方より、愛を込めて───

収録楽曲の解説の前に、こちらの副題についてです。
まず文頭に含まれる「E線」。恐らくはこれが一番怪文書不可解的なパーツかと思います。
このE線が指すものは、「弦楽器(ここではバイオリンとする)の第一弦(= E線)」を意図しております。

引用元:https://strings-violin.com/strings/

正直、何故E線かと言いますとその時の気分です。標準的な管弦楽の楽器配置では、舞台上における扇形の配置から、E線側は平均的に、一番聴衆に近くなります。
『より沢山の音を、聴いて下さる方へ少しでも近い距離から提供したい』
そんな心持です。

そして後半の「愛を込めて」。これ意味深ですよね
ぶっちゃけ、これに関しては私から申し上げるのがSUPER恥ずかしいのでこの記事での明言は控えます。まぁ何でしょう 聴いて下さる皆様に向けての無償の愛だとでも思っておいてください。 𝘽𝙄𝙂𝙇𝙊𝙑𝙀…….

XFDはこちらから

既に入手されている方はCDを流しながら、まだの方はXFDでも聴きながらお楽しみください。

Tr.01 terao - 序章 -共鳴するE線-

序章(プロローグ)です。

自アルバムを制作するにあたって、作曲し始めの頃を思い出してみました。DTM(所謂PCで操作するやつ)による作曲は2021年からですが、それ以前に実機のシンセサイザーとMTR(マルチ・トラック・レコーダー)で作曲をしていた時期がほんの僅かにありました。今思えば、あの経験を経て、作曲の面白さを身を以て感じ、DTMによる本格的な作曲に繋がったんだなと振り返って思います。
さて、何故このようなしょうもない昔話になったかと言いますと、この曲は作曲駆け出し当時の手法を用いて制作されたからです。はい、実は"序章 -共鳴するE線-"で鳴っている全ての音は、私が所有しているデジタルシンセサイザー「YAMAHA SY55」実機の録音です。無加工です(マスタリングを除く)。恐らく現役DTMerの8割弱には通じない機種でしょう。それもそのはず、当該製品は1990年発売の化石です。言うなれば、年寄りに鞭打ってDTM主流の2024年にこき使っているのが私です。
※ちなみに、曲のステレオ成分が完全に死んでいるのもこのためです。なぜか音量スライダーを引き上げるとガリが発生した後、途中から右が出なくなるのがうちのSY55です。

この曲を聴いて(XFDでも)音像が若干粗いな~と思ったそこのあなた!!! 正解です!!!おめでとうございます!!!ノイズ入ってます!!!
なんだか、昔を思い出すときに記憶に掛ったモヤが、この曲に薄っすらかかるホワイトノイズに投影できる気がするんですよね。聴いていて心地が良いような、そんな感じがします。

作曲し始めの、初心者なりに頑張っていた自分を思い浮かべながら曲を作りました。下手くそでも、貪欲に、根気強くMTRと向き合っていた頃の自分が何だかんだ一番輝いていたと思います。

この曲の理論的な話ですが、アルバムの副題及び楽曲タイトルを意識して、調がEになっております。気付いたかな?

↑中の人愛用のYAMAHA SY55 頑張って実家から持ち出したらしい

Tr.02 terao - OVERTAKE

疾走感のあるトランスです。個人的にはプラックの音とフィルターが掛る部分がお気に入りです。

少しだけ本筋から逸れますが、私が主宰する同人音楽サークル「Exabit Records」にて企画されたコンピレーションアルバム「Highspeed TOKYO」(通称:首都高コンピ)ってありましたよね? 実は元々、この曲は当該のコンピに出す予定でいました。しかしながら、主宰の予想に反してCD-Rの収録限界を超える応募が寄せられました。結果的に、自分の曲をそのコンピから外すことによってサークル外からの応募楽曲を少しでも多く収録するという措置を取ることになりました。なので自アルバムでの収録は、言わば供養です。(というか、首都高コンピのレベルがとても高かったので普通に応募していても審査落ちしていたかもしれません)。首都高コンピに収録できなかったことは少々残念ですが、出来立てほやほやのトランスを自アルバムに収録できた点においては大変満足です。
是非、夜の首都高でクーペ型のスポーツカーが高速でオーバー・テイクする様を想像しながら聴いてみてください!

↑首都高コンピ「Highspeed TOKYO」XFD

Tr.03 terao - 28 A.M.

書き下ろしの自称・ドリルンベースです。

実は嬉しいことに、この曲を作り始める前日、私が使用しているDAWソフトウェア「Tracktion Waveform」の次期バージョン13が正式リリースされたため、秒でアップグレードしました。
なのでこの曲はTracktion Wavefrom 13 Proを手に入れてから最初に作った曲です。
新機能の一つとして、新しく実装されたシンセサイザー「Wavetable」があります。名前の通り、2系統のウェイブテーブルシンセサイザーです。初手から鳴っているプラックの音もこのシンセから出ています。使っていて思ったのが「音が良い...…!」ということです。正直、標準搭載のプラグインである以上そこまで期待はしていなかったのですが、いい意味で期待を裏切られました。フィルターが開く感じが爽快で心地いいです。

Waveform 13に新搭載されたシンセサイザー「Wavetable」 カッコイイ!

この曲名「28 A.M.」ですが、4月上旬の某日夜中、自鯖(Discordサーバー)のVCにて完成させた際になかなか曲名が決まらず、自棄になって「その時の時刻を曲名にしよう」となった経緯があります。よくある深夜アニメの放送時間表記の「深夜25時」みたいなやつから取って、英語表記で「28 A.M.」にしました。しかしながら、曲名が決まったところで疲労からかすぐに寝落ちしてしまい、起きたところで気付きました。午前3時(=深夜27時=27 A.M.)を意図したはずが、「午前4時(=深夜28時=28 A.M.)」になっているではありませんか?!
よっぽど疲れていたのでしょうね。制作当時の自分、お疲れ様です……

Tr.04 terao - So your world my reminded

ご存知の方がいるのかも分からないですが、この曲は去年の4月辺りに他所様のコンピに投げた既存曲です。聴いて分かる通り、オーソドックスなアンビエントです。

何故にこの曲を収録したかと言うと、自分の作った曲の中では大変珍しく、海外進出した割とデカめな曲だからです。海外進出した割にはあまり日の目を見なかったので、折角だし自アルバムに収録しました。

これは去年の夏ごろの話ですが、サンクラ(サウンドクラウド)にて一本のDMが届きました。内容は『あなたの曲「terao - So your world my reminded」をDJで使わせてくれ!(意訳)』と言った内容のものです。最初はスパムを疑いましたが、当人について調べてみると、どうにもイギリスを拠点に活動するDJ「Classtraitor」氏でした。
これは何かの縁だ! そう思い、交渉に対して快く引き受け、実際に海外某所の箱で流してもらいました。
かなり貴重な体験であり、今後このような機会は二度とないと思うので、記念として収録した次第です。是非聴いてみてください......!

Tr.05 terao - īˈden(t)əˌfī

こちらは書き下ろしです。BPM75のアンビエントです。Tr.04と併せて2連続アンビエントです。
表題「īˈden(t)əˌfī」、発音記号から逆変換すると英単語「identify」になることはきっとお分かりかと思います。日本語に翻訳すると「識別する / 見分ける」等の意味が充てられます。

これは個人的に未だ悔しいと思っている話です。去年の話ですが、とあるコミュニティにて自分の作った曲を聴いていただいた他DTMerの方に『(当人)の昔の作風に似てる!!!寄せた???(意訳)』と言われたことがありました。少しでも独自性を出そうと試行錯誤していた私にとって、その言葉はあまりにもショッキングでした。今でも少し気にしている節があります。つまるところ、この曲の表題として、作風や特徴の差別化を皮肉的に、「識別」を表意する語彙identifyを充てました。(自分の体感に過ぎませんが)界隈内でもあまり作る人が少数派なジャンル・アンビエントをあえて選んだ理由にもこれらの意図が込められています。にしてもアイツマジで転がs(以下略

ちなみにですが、この楽曲を構成する音の大部分が、先程Tr.03にて紹介したWaveform 13 Proに付属していたシンセサイザー「BioTek 2」で作られています。元々バージョン12からPro版を使い始めた私ですが、12では中級バンドルからの付属だったので、私が購入したグレードでは付属していませんでした。しかし、13のアップグレード版では最初から付属していたのでこの機に触れてみた次第です。音が良い........! あらゆる音が出せそうですが、「アンビエントに特化したハイブリッドシンセサイザー」と言った印象を受けました。アンビエントや、その周辺ジャンルを作られる方には是非おすすめしたい、摩訶不思議な音が無限に出せるシンセサイザーとなっております。かなり高性能で自由度が高いです。

Tracktion Software社製ハイブリッドシンセサイザー「BioTek 2」
サウンドマトリクスが200系統搭載されているらしい
BioTek 2に内蔵されている4オペレーターのFM
各オペレーターごとに任意の音声ファイルをぶっこめるらしい

Tr.06 terao feat.兆音テラ・ケイ - 寥々たる電磁記憶保管所

ノイズ及びインダストリアル・ミュージックを主体とした歌モノです。そしてなんと、ボーカルはUTAU音声ライブラリ「兆音テラ・ケイ」です!!!ヤッター!!!

兆音テラ・ケイ(Kizane Tera / Kei)とは……

teraoがCVを務めるUTAU音声ライブラリ及びそれに付随するキャラクターである。

引用:https://kizane-mrcx.0am.jp/

予てより自音源を用いて歌モノを制作したいと思っておりまして、この機会に作ることを決意しました。また、作曲を始める前から「ノイズやインダストリアル・ミュージックと歌モノの足し算」に興味があり、こちらも長らく挑戦したいと思っていました。なのでこの曲には「自音源で歌モノを制作 + ノイズやインダストリアルの要素を合わせた歌モノの制作」の二つのテーマが含まれています。
そもそも聴いていただければ分かるかと思いますが、さすがに自音源やセルフ歌唱以外でこの曲調の曲を作ることついて、自分自身の抵抗感と、管理者やシンガー、もしくはそのファンからの反感を買うリスクがあったので、自音源で作って正解だったなと思います。

拘った点は「曲後半の金物のパン振り」です。前衛的な曲調の中に気持ちグルーブ感が備わった感じします。

歌詞ですが、あえてこちらからの具体的な解説等は控えさせていただきます。自由に考察/解釈して頂いて構いません。この曲は、曲名からも分かる通り、兆音テラ・ケイの配布管理を行うサークル「兆音記憶保管所」をテーマに書きました。言わば公式二次創作といった所です。決して公式による正しい見解とは異なります。こんなかわいい音源くんちゃんさんを配布するサークルが曲調の如く仰々しいはずがないだろ!!!

この楽曲の制作を通して、兆音テラくんと兆音ケイちゃんの二人が一緒に歌う歌モノが初めて爆誕したので、作って良かったな~!という気分です。好みが明らかに分かれる曲ですが、是非一度聴いていただけると嬉しいです。テラケイかわいいね!

↑作曲者の我儘

Tr.07 terao - 木陰の下で (Original Mix)

ご存知の方がいるのかも分からないですが、この曲は昨年の夏頃、某サークルのコンピに投げた既存曲です。インストゥルメンタルです。タイトルですが、後述する「木陰の下で (80's run mix)」と区別するために、あえて末尾に(Original Mix)を付与しました。オリジナル版(無印)と特に何も変わらないです。Tr.06の無機質的な曲から打って変わって、一気に有機質的な曲に切り替わりました。

こちらの楽曲は、「夏」をイメージして制作しました。波が寄せては返し、穏やかな時間が流れていく海岸線の様子を心の中で描写しながら作曲しました。曲中のそよ風のサンプリングから、風に揺られる木の葉の様子など、きっと想像に難くないと思います。
子供の頃、夏休みに海に出掛ける機会は無かったでしょうか。無かったならすみません。私はありました。自分は幼い頃、よく母親に御前崎の海岸まで連れて行ってもらった事があります。当時から陰キャあまりはしゃぐタイプのガキではなかった私は、時間の流れに身を任せながら、遠い地平線をぼけっと眺めていました。多分その頃は、ひたすら流れるだけの時間を無限とすら思っていたはずです。さて、時は流れまして2024年。成人した我々。納期に追われる我々。学校の課題に追われる我々。経済活動の波に押される我々。今の私たちは、昔のようにゆっくりしていられる時間も限られるのではないでしょうか。今振り返れば、あの時の景色一つ一つが尊い思い出として心の中で煌めいています。この曲を聴いている皆様も、時間がある際は是非昔の思い出に手を差し伸べてみて欲しいです。内陸出身などで海を訪れる機会がない方は、きっとそのような物だと信じて念じてください。

御前崎市・浜岡海岸
引用元:https://www.photo-ac.com/

Tr.08 terao - Stygiomedusa (5min Remake ver.)

ご存知の方がいるのかも分からないですが、この曲は一昨年の早春頃、某所のコンピに投げた既存曲です。更に言えば、元ネタは「[EXBCD-001]Kurage BGM Sound Track」に収録された楽曲「terao - Stygiomedusa」です。曲自体はとても良い上に満足しているのですが、原曲が8分あまりの長尺だったので、どうにか5分台に作り直した経緯があります。Tr.07が太陽照りつける海辺なら、Tr.08は潜水後の深海です。

この曲は当譜(Ethereally Delusion)収録楽曲の中で一番古い曲であり、自分が作った曲の中で初めて土俵(バトル・フィールド)に立てた曲でもあります。大変思い出深い。

「深海」をテーマに制作されており、表題の「Stygiomedusa」はダイオウクラゲとも呼ばれるクラゲの一種です。自分がこの曲を振り返って未だに凄いと思うことが『リズムの音と、楽音によって作られるパートのみで深海を演出できている』という点です。例えば今でこそ、「Tr.08 terao - 木陰の下で」などのように、サンプリングを活用して風景描写をより鮮明にすることはごく一般的な手法の一つとして作曲によく用いています。しかし当時の、まだDTM歴半年だった自分がリズムと楽音だけで鮮明な風景描写を演出したことは、大変驚くべきことだと思います。

この曲を書いてから今に至るまで、自分の目標点がこの曲であり、未だにこれを超えた曲を作れていないのではないかと思ってます。あの時以降の作曲テーマの一つとして、あれを超えるという趣旨のものがずっと生き続けています。それだけ自分にとっては完成度が高かったのでしょう。この曲を書いた当時の自分(高2)、凄すぎる...…

Tr.09 terao - Rapid Writer 01_1 (Original Mix)

ご存知の方がいるのかも分からないですが、この曲は昨年の春、弊サークル主催のコンピレーションアルバム「Rapid Music Writing」に投げた既存曲です。メロディックなブレイクコアです。タイトルですが、後述する「Rapid Writer Remixed by MaNDAR∀」と区別するために、あえて末尾に(Original Mix)を付与しました。オリジナル版(無印)と特に何も変わらないです。

こちら、元のコンピのテーマでもある「デスマ(デスマーチ)」を基に、約2日で書いた曲です。あくまで自分の個人的な感覚に過ぎませんが、デスマでもそうでなくても作曲に手を付け始めた際、まず最初はあまり良案が思い浮かばず、ずんぐりと試行錯誤を繰り返すフェーズを経ることが多いです。この時、私のテンションはかなり低いです。そして次に、調子よく曲の続きを制作できるようになるフェーズに入ります。この時、私のテンションはかなり高いです。最後に、曲の最後まで作り終えるフェーズに入ります。この時、私は無事曲が完成したことに安堵しています。この3ツのフェーズが、それぞれ曲中の序盤低速ゾーン、サビの高速ゾーン、アウトロの部分で表現されています。ただこのままですと、曲が完成するまでの過程をただ表現したようにしか思えないです。もちろん、デスマをテーマに書いているのでデスマ要素もキッチリあります。どこで表現されているかと言うと、曲中の3分30秒あたりからです。それまで分かりやすく周期的だったリフが、ここからは連続的でカオスなものに変化します。デスマする時って途中から、ワケも分からずキックを配置したり、音をレイヤーしたりと半錯乱状態に陥る時がありますよね。当該の部分はそのイメージで作りました。
まぁ何が言いたいかといいますと、デスマはするな。

Tr.10 terao - TO UNiVERSE (Radio Edit.)

ご存知の方がいるのかも分からないですが、この曲は昨年の春頃、某サークルのコンピに投げた既存曲のショートバージョンです。元々はフル尺版をそのまま載せる気でいましたが、原曲7分のやつをそのまま収録しようとすると、CD-Rの収録限界である80分を超過してしまいます。そこで急遽、3分にギュッと縮めた「Radio Edit.」バージョンを制作する流れになりました。短い…

こちらの曲は「宇宙」をテーマに制作し、実際にリバーブなど、音の広がり(空間)を意識して作りました。無限に広がる宇宙空間に放り出されたかのような浮遊感を、一昔前のトランスっぽいリードで表現していることがポイントです。また、これは細かな拘りではありますが、ドロップ手前のドラムフィルは手作りです。リバーブの掛かり方、減衰のタイミングなど、細部まで拘りました。

自分が作るトランスとしては割とオーソドックスなものであり、上手く作れたなという感想です。フル尺版はもっとボリューミーですので、併せてそちらも聞いていただければと思います。

Tr.11 terao - Black Syndrome (Game Edit. V2)

ご存知の方がいるのかも分からないですが、この曲は一昨年の秋頃、某サークルのコンピに投げた既存曲のショートバージョンのリマスター版です。長い…

Tr.07/Tr.08などとは違い、そこそこなキックがドカドカ高速で鳴っているのが特徴。BPMは1160です。所謂extratoneと呼ばれるジャンルです。元々は超高速な電子音楽(スピコアとか)が大の好物だった私であり、DTMを始める前はこのようなジャンルを沢山作っていきたいと思っていました。しかし実際蓋を開けてみると、使用しているDAWが高速BPMとの相性が悪く、いつしか低速で穏やかな音楽をメインに作る真逆のDTMerになっていました。そもそも高速音楽はカロリーが高くて体力が追い付かない。なのでこれは、私の作る曲の中では珍しい高速な音楽です。制作テーマは「自分自身の憧れの体現」でした。
キックの音がミリ秒単位で切り刻まれ、連続で鳴った時に出る独特な音に魅力を感じています。また、キック以外のパートもハチャメチャな部分が多く、聴いていて面白いです。

まだ追及し甲斐のあるジャンルなので、より高機能な有料グレードのDAWを手に入れた事を契機に、更にパワーアップしていきたいです。タイトルの通り、この楽曲は「Game Edit.」です。つまり音ゲーなどに使われて欲しい! という意図が込められています。もし当楽曲の音ゲー収録に興味がある方は、是非個別にご連絡ください。提出規格等に沿ったファイルを提供いたします。

Tr.12 terao - Rapid Writer Remixed byMaNDAR∀

拙作「terao - Rapid Writer 01_1 」のMaNDAR∀氏による編曲です。

原曲はガキガキのブレイクコア(MaNDAR∀氏談)でしたが、MaNDAR∀氏の手によって印象の違う、エモーショナル寄りなブレイクコアに作り替えられました。(ガキガキ、どんな表現なのだろうか...…?)
初手聞いた感想ですが、まさに自分が目標にしていたブレイクコアだったため、本当にビックリしました。MaNDAR∀さんあんたエスパーか? こんなやつが作りたかったんだよ!!!!!のやつです。
こちら、同じく春M3にて頒布されるMaNDAR∀氏によるアルバム「Bezel」にも収録されています。こちら(Ethereally Delusion)に収録されている物とは少しだけ違いがあります。気付いたかな?

↑MaNDAR∀氏によるアルバム「Bezel」

【注意】以下ネタバレ ※ネタバレしたくない方は次の曲まで読み飛ばしてください

原曲にはあってリミックスには無い要素があります。まず一つ目。Tr.09 terao - Rapid Writer 01_1 (Original Mix)で先述した通り、オリジナル版には周期的なリフが鳴った後、一度ドラムだけのパート16小節を経て連続的なリフに切り替わります。しかしこのリミックスには、あの連続的リフパートが含まれていません。恐らくは、全体的な曲調を見た際にバランスが取れなかったものと思われます。
次に二つ目。曲名に注目してください。一般的な編曲の曲名表記では、オリジナルの曲名の末尾に「(〇〇 Remix)」もしくは「Remix by 〇〇」などの表記が付与されることが一般的です。しかしこちら、原曲の曲名と見比べて、何か違いに気付かれましたでしょうか。そうです。原曲に表記されていた「01_1」が潔く消されています。これが単純なミスなのか、それとも意図して消されたものなのか。仮に意図したものであるとするなら、何故「01_1」は消されたのか。実は私自身、まだMaNDAR∀氏からその事についてなにも訊けていません。

ここからは私個人の考察です。実は曲名の「01_1」が指しているものこそ曲中のカオス地帯であり、原曲からその部分のリフが消されているので曲名からも「01_1」が消されたのではないか、と考えております。実は原曲の制作時、当初は「Rapid Writer」というタイトルで曲を出そうと考えてました。「01_1」はありません。しかしながら、そのままのタイトルだとボリュームに欠けると思った私は、原案タイトルの末尾に「01_1」を付与しました。しかしこの「01_1」自体には特に意味を込めたわけでもなく、本当にただの飾りです。この件については、また機会を伺って本人から直接訊き出してみようと思います。

Tr.13 terao - TO UNiVERSE (KoZiR4w Remix)

拙作「terao - TO UNiVERSE」のKoZiR4w氏による編曲です。

原曲はトランスでしたが、なんとKoZiR4w氏の手によってEuphoric Hardstyleに生まれ変わりました。かっこいい!!!
このリミックスを制作していただくにあたって、どの楽曲をリミックスするかをKoZiR4w氏自身に選んでもらいました。彼と私とでは作風に大きな違いがあるため、正直何を選んでくるかワクワクしていました。結果としてTO UNiVERSEが選ばれました。ここまではある程度想定内です。クラブミュージックメインのKoZiR4w氏に一番近しいであろう楽曲のうちの一つがトランスであるこの曲だったからです。しかし問題はここから。TO UNiVERSEが如何にして調理されるかです。素材の味を活かしてより完成度の高いトランスになるのか。それとも、最低限メロだけを活用し、全く性格の異なる楽曲に生まれ変わるのか。どちらにしても面白いので、やはりワクワクしていました。この点に関しては全く予想がつかなかったです。もし前者ならば、何処がどのように変化するのか。もし後者ならば、トランスであったこの曲がどのジャンルに化けるのか。考えれば考えるほど完成が待ち遠しくなる日々でした。
そして4月某日、KoZiR4w氏から一件のDMが。リミックスが完成したとのこと。学校から帰ってきた私は、逸る気持ちを抑え、ファイルをダウンロード。一通りの作業を終えた後にファイルを再生した───
最初に聞いた感想は、驚愕の一言に尽きます。あのトランスが、なんとキックが硬いハードスタイルに生まれ変わっているではありませんか。まさかこのような形になって返ってくるとは予想もしていなかったです。その日は1日そのリミックス聴きながら爆踊りしていました。よく、某リフォーム番組に出てくる「匠」とは、このような方のことを指しているのだと思います。なんということでしょう〜
KoZiR4w氏曰く「トランスはEuphoric Hardstyleと相性が良い!(要約)」とのこと。全然知らなかったです。一見してかけ離れているようなジャンルですが、形にして(作り替えて)みると意外と親和性が高いんですね。驚きです。
編曲を頼むと、自分が作った曲に対して新しい発見や創作に関するヒントを得ることができるので、今回のKoZiR4w氏によるリミックスは良い経験だったなと思っております。(ところで、機会があればこの曲をハコとかで流してみたいですね フロア沸かしたい…)

Tr.14 terao - 木陰の下で (80’s run mix)

拙作「terao - 木陰の下で」の無人氏による編曲です。こちらの楽曲、元々は某サークルのリミックスアルバムに収録されていたものでしたが、かなりのお気に入りでどうしても収録したかったので、無人氏に頭を下げて楽曲を提供していただきました。

最初に聞いた感想ですが、「同じ解釈だけど別角度からの解釈だ!!! 凄い!!!」といった感じでした。艷やかな生音だった曲が、なんと低解像度で"色褪せた"音になっているではありませんか。
これはあくまで私個人の解釈ですが、原曲が「昔の思い出に直接手を差し伸べている(Tr.07での解説)」ならば、この編曲は「記憶媒体に記録された思い出を再生し、鑑賞している」だと思います。VHSやらベータマックやらのカセットを再生して、ブラウン管越しに40年ぐらい前のビーチを見ているみたいです。

こちらは本人談ですが、この編曲は末尾(80’s run mix)にもある通り、「80年代の実機音楽機材とMTRを用いて制作した」とのこと。天才か?
オンボロビンテージ実機勢だった私、これには笑顔です。まさか私の交流圏内に同じ趣味を持つ者がいるとは…
あのような年季が入った音の質感も、どうやらテープ式のMTRから発生するノイズだったようです。さすがは無人氏、アイデアと演出が良すぎる。多分、機材の使い方から音選びに至るまで上手なんだと思います。

ちなみに余談ではありますが、「Tr.01 terao - 序章 -共鳴するE線-」はこの楽曲の存在にも影響を受けて実機で作りました。ハードシンセは良き文明です。

Tr.15 terao - Ethereally Delusion

ここで遂に来ました! 所謂表題曲ってやつです! こちらの楽曲、ジャンルとしては「ノイズ+ダークアンビエント+エクスペリメンタル(実験音楽)」と言った感じです。表題曲なのにクセが強い…

当楽曲、実はこの譜に収録されている新曲の中では一番最初に作られたものであり、書き下ろしと言うよりかは未発表曲としての属性が強いです。それもそのはず、当記事の執筆時点で楽曲を制作してから1年が経過しています。
実際にCDを買われた方はお分かりかと思いますが、なんとこの曲、全体で15分あります。バカ長いです。色々な思いを込めて当楽曲を制作していましたが、詰め込みすぎてこれだけの長尺になってしまいました。反省。そんなわけで、まえおきでもお話した通りコンピレーションアルバム参加をメインに活動してきた私ですが、さすがに15分となると尺規定の観点から収録できる企画がどこにも存在しなかったので、自アルバム制作という形で供養させていただきました。ジャンルの特性上、高音がキンキンしてなかなか耳に悪そうな音が15分間流れるので、お聞きになる際は充分注意してください。

この曲は、私が18手前だった2023年2月に制作したもので、自分が成人することに対する嘆きの感情を音として表現したものです。この曲が完成した翌々日に、有難いことに私は成人を迎えました。当時成人直前だった私は、成人して自分の行動に責任が伸し掛かることへの重圧や、(早生まれなので誕生日と進学が近いこともあって)春を迎え、進学によって環境が大きく変化することへの恐怖から、少々気が滅入っていました。16後半あたりから、未成年である有り難みを明確に理解した私にとって、これは由々しき事態です。そもそも当時は、「早く大人になりたい!」という子供にありがちな価値観が自分の中から消え、子供に戻りたいと少しでも思った自分自身に絶望していたと思います。『もう、子供の頃のわたし達には会えないわ!!』 某少年漫画のセリフを思い出します。いくら念じようとも成人を回避することは不可能なので、せめて自分がまだ子供であるうちにこの感情を残したいと思い作品にしました。成人前最後に制作した楽曲です。今思い返しても、とても一過性だからこその貴重で尊い感情だったと思います。そのような、ある意味でカオスな感情を、酷く歪んだノイズやギター、唸るようなベース、耳障りでバキバキなシンセ、叫び声のサンプリング等で表現しています。

ここまでアルバムを振り返って、薄っすらながらも共通点があることに気付いた方もいるかと思います。全ての楽曲が当てはまるわけではありませんが、裏テーマに「思い出」や「回想」等が添えられています。表題「Ethereally Delusion」に込められた意味には、主に裏テーマの要素が込められています。単語をそれぞれ分解し、日本語に翻訳すると「エーテル的妄想」に訳せます。(自分は横文字が苦手な上「エーテル的」という言葉だと意味が伝わりづらいので、ここでは「幽玄的」と訳させていただきます)。

自らの思い出を振り返る際、恐らくは同時に、無意識に今の自分の状況と当時の自分を比較しているのではないでしょうか。ただ過去の風景やその際の状況を脳内に思い浮かべるだけでなく「あの時の自分は今と違ってゆっくりだった」とか無意識のうちに考えていると思います。よく過去を振り返る中で、「エモい」という形容詞が多用されています。あの言葉って便利ですよね。ありとあらゆる素敵な描写に対して、我々はあの言葉をよく用いています。しかしながら私は、あの言葉について少々ストライクゾーンが広すぎるのではないかと常々考えております。日本語とかいうチート言語ならもっと別の語彙でもカバーできるんじゃね? そう思った私は、辞書と語感を頼りに「素敵だなと思える感情」について最適な語句を割り当ててみました。その結果選ばれたのは「Ethereally (=幽玄的)」でした。

ゆう‐げん〔イウ‐〕【幽玄】

1 物事の趣が奥深くはかりしれないこと。また、そのさま。「幽玄の美」「幽玄な(の)世界」
2 趣きが深く、高尚で優美なこと。また、そのさま。
3 気品があり、優雅なこと。また、そのさま。

引用元:コトバンク https://kotobank.jp/word/%E5%B9%BD%E7%8E%84-144698

全部が全部そうではないかもしれませんが、過去の思い出について、例えしょうもない内容であろうと、後になって見返すと美しく見えることってありますよね。恐らく我々は、実際にリアルタイムで経験した時以上に美しく感じていると思います。そんな様が「幽玄的」と言えるのではないでしょうか。「幽玄的」のパーツの解説は以上です。
そして「妄想」についてです。普通、過去の事物について振り返る行為自体は「回想」という言葉で説明できます。先程も述べた通り、裏テーマにも回想があります。しかし表題では、妄想を意味する「Delusion」の単語が当てられています。当たり前ですが、回想と妄想とでは表す意味が異なりますよね。根拠もないことを想像するのが妄想です。よく被害妄想という言葉を聞きます。根拠もなしにネガティブな方向へ想像することです。とにかく、いずれも「根拠がない」点が重要になります。先程、幽玄的という言葉についてお話した際に「後になって見返すと美しく見える」と点を指摘しました。割と極端に誇張している気もしますが、あの行為って「誇大妄想」ではないでしょうか。美しく見える点について、特に根拠は無いはずです。そこで敢えて、それらに係る行為について「妄想」という言葉で表した次第です。

これらの点から私は、過去の思い出を振り返る際の特有な感情及びその行為自体に「幽玄的妄想(Ethereally Delusion)」という言葉を充てました。....…伝わりましたでしょうか?

ちなみに、今まで書き上げた楽曲の中で一番満足度の高い楽曲がこれです。

16. 終章 -The End of “DELUSION”-

終章(エピローグ)です。タイトルを邦訳すると「妄想の終わり」です。ピアノを主体としたドラムンベースです
このタイトルを見て某テクノバンドの曲のタイトルと似てるな~と勘付いた方もいらっしゃるかと思います。正解です。タイトルはまんまYMOの「THE END OF ASIA」を意識しております。あの曲大好きなんですよね。(しかし、あくまでタイトルが寄せられているに過ぎないので、曲自体にその要素は皆無です)。
こちらの譜のXFDを最後までご覧になった方ならお気付きかもしれませんが、XFD部分で流れたリフは「Tr.01 序章 -共鳴するE線-」のmidiそのものをBPM160でピアノの音で再生しています。最初の曲の要素をここで回収しました。
現物版をお買い上げの方はジャケ裏QRコードから、ダウンロード版をお買い上げの方はダウンロードしたzipファイルから、当楽曲に関連する追加コンテンツ(pdf)を入手することが可能です。是非そちらも併せてお楽しみ頂ければ幸いです。

【注意】以下ネタバレ ※ネタバレしたくない方は次の章まで読み飛ばしてください

〜ネタバレ其の一〜
先程XFDの下りで軽く触れました。ネタバレを含まない節では『Tr.01 序章 -共鳴するE線-のリフをそのまま用いている』とお話しました。実際にはこちらの楽曲は、当アルバムに収録された全ての新曲の旋律をFに移調し、16小節のメドレー形式でピアノで再生しております。

  • 1:26〜2:14 序章 -共鳴するE線-

  • 2:14〜2:38 OVERTAKE

  • 2:38〜3:02 28 A.M.

  • 3:02〜3:26 īˈden(t)əˌfī

  • 3:26〜3:51 寥々たる電磁記憶保管所 [feat.兆音テラ・ケイ]

  • 3:51〜4:15 Ethereally Delusion

  • 4:15〜4:38 Ethereally Delusion / 終章 -The End of “DELUSION”-

  • 4:38〜5:02 終章 -The End of “DELUSION”-

上記のような具合で、曲中において全ての新曲の旋律の要素を16小節間隔で回収しました。基本的には全ての楽曲のプロジェクトファイルから直接書き出したmidiを終章 -The End of “DELUSION”-のプロジェクトファイルに取り込み、Fに移調したものを切り貼りしてそのまま再生しています。しかし、寥々たる電磁記憶保管所 [feat.兆音テラ・ケイ]だけは例外として、その一部にアレンジが加えられています。この曲だけは特殊で、曲を構成する旋律がボーカルパートのメロしかなく、またハモりやコーラス等も無いため、そのままメインメロだけ貼り付けても味気ないという事情がありました。
また、このメドレーの中ではīˈden(t)əˌfīとEthereally Delusionの要素が分かりにくかったかと思います。それぞれ原曲はBPM75とBPM70の低速ミュージックです。終章 -The End of “DELUSION”-のテンポであるBPM160に合わせるには二倍以上のタイムストレッチを行う必要があったため、倍速になったメロを各元ネタまんまの旋律であると認識することは困難でしょう。

とある日のこと、詳細は端折りますが、自鯖VCにて『作品のラストにスタッフロール的な物があると美しく締まるのではないか?』との意見を伺いました。この曲のメドレー要素はその意見を反映させています。収録された各楽曲一つ一つが言わばスタッフです。

DAW画面のスクリーンショット
収録された新曲のmidiが順番に並べられている

〜ネタバレ其の二〜
最後のノイズ部分についてです。主に二つの要素を仕込んでいます。
まず一つ目、5:26の部分です。先程其の一で話したメドレーパートの『全ての新曲の旋律の要素を16小節間隔で回収』に対し、こちらは『全ての新曲の音声ファイルそのものを雑に切り出して並べた』感じです。ついでにバックで流れるノイズに併せて音を歪ませたりEQをかけたり色々しました。切り出し部分に関しては、特に何かしらの意図によってその部分が選ばれたわけではございません。適当に、雑に切り出しています。
次に二つ目、5:33付近から既存のノイズにレイヤーして再生される風変わりなノイズです。このPartは5:53までの約20秒間続きます。5:41からのやつとか、なんだか女児向けアニメの変身シーンで流れる効果音みたいですよね。それはさておき、この部分は『直接音を聞くことによって得られる要素』ではありません。何かに隠れていて、何かを用いることによって可視化することができます。それが何であるか、ここでは具体的な回答は伏せます。面白みがないので。良く音楽を嗜んでいらっしゃるDTMerの皆様なら、きっとノーヒントで解った方もいらっしゃるかもしれません。しかし、全然DTMerでもなんでもないし全く見当も付かない、そんな方もいらっしゃると思います。ということでヒントを出します。「"ス"で始まり"ム"で終わるカタカナ8文字のもの」です。ちなみにこの存在は、冒頭のまえおきにて登場した『美術館に展示されている作品には、大抵脇に解説が添えられているのに音楽分野においてはそれがない(ことが多い)!!!!何故!!!!(意訳)』の発言をした本人には別件にてその存在をお伝えしております。果たして本人様は気付いたでしょうか...…? 気付いてくれるとこの上なく嬉しいです。

全体を通して

このアルバムを制作するにあたって何より苦労したことの一つにマスタリングが挙げられます。CDにおけるマスタリングとは端的に、収録される全ての楽曲の音圧レベル(耳で感じる音量感)を大体均一に揃え、楽曲の前及び後ろの空白(アソビ)を保つことです。例えば、マスタリングが適切に行われていないCDで再生機器の音量ツマミを一切動かさずに聞き続けると何が起こるでしょうか。想定される障害として、「音量の小さかった曲からいきなり音がバカでかい曲に移り変わり、聞き手がビックリする。最悪の場合、聞き手の聴力等に影響を及ぼす」点が指摘されるでしょう。音圧は、その楽曲のジャンルによって大きく左右されます。例えば、ヒーリングミュージックなら自ずと音圧は低くなりますし、ゴリゴリのクラブミュージックなら音圧は高くなります。もしCDの全収録楽曲が同じジャンルであれば、そのジャンルにとって適切な音圧になるようマスタリングすれば済む話です。しかし、収録楽曲のジャンルに一貫性が無い場合は音圧の調整が困難になります。今回の当アルバムはこれに該当します。先の楽曲解説を読まれた方ならお分かりかと思いますが、このCDにはアンビエントの楽曲とハードスタイルの楽曲が共存しています。先程の例示と全くと言って良い程に状況が同じです。ハードスタイルのような曲が活かせるような音圧に全体を合わせれば、アンビエントの楽曲は言うまでもなくアンビエントらしくない、クソデカ音楽になります。あれは優しい音を楽しむジャンルなので音圧を大きくすべきではありません。逆に、アンビエントで推奨される低い音圧に全体を合わせれば、恐らくでかい声音でブチ上がるべきハードスタイルが台無しになるでしょう。無論、どちらも避けるべきです。これを回避してマスタリングするには、このどちらでもない、中間ぐらいの「いい塩梅」を目指さなければなりませんでした。これが何より大変だった点です。

マスタリングの話で触れましたが、全体に統一感がなく、具体的なコンセプトを示せなかった点が今回の反省点であると考えています。M3にてお客様に収録楽曲のジャンルを聞かれた際、全て挙げるのが大変すぎて投げ出したくなるほどです。ただ一方で、自分の作例を幅広く提示できたと言う正の側面も内包しているので、一長一短な方法だったなと振り返って思います。次もこのようなアルバムを作るかは分かりませんが、もし次があるなら多少は統一性を気にしていると思います。

コンセプトについても、譜そのものには何も設定されていない上、この記事で述べた内容の半分弱に、過去を振り返るかのような趣旨が含まれており、後ろ向きさが目立ってしまっています。もし次があるなら今回とは真逆で、この世の最先端を突き詰めた超未来的なアルバムになると思います。

あとがき

案の定長くなっちまった!!!!!マジでごめん!!!!!
いや、あのですね マジでこんなつもりじゃなかったんです。最初は400字詰め原稿用紙5枚分(約2000文字)程度で収めようと思ってたんですよ。気付いたら18000文字超えてました…


文章まとめるのが下手すぎて合計文字数が18326文字になった時のスクショ

多分ここまで律儀に読んでくださった方も、少ないかもしくは皆無かと思われます。長丁場でしたが、ここまでお付き合いいただき有難うございます。筆者より謝意を申し上げます。想定以上に執筆に時間を掛けてしまったので、読んでくださり嬉しい限りです。
今後とも創作活動に励んで参ります。是非とも私、teraoを応援していただけると幸いです。

ではまた、次の機会にお会いしましょう....…!

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