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"ゲームが新鮮なうちに遊ぶ" ライブ配信をやってみた 【プログラミング教育】

このライブ配信の実現は僕の念願でした。9月14日、YouTube Live の片隅でハックフォープレイフェスというタイトルのライブ配信をしました。事前の参加登録によれば、参加者のうちもっとも多いのは小学校中学年(7〜9才)。まだ YouTube にログインすることすら許されていない児童たちです

内容的にはゲームを実況したりもする番組ですが、今回カテゴリを「教育」にしました。今思えば「ゲーム」でも良かったのですが、肝心なのは僕たちが「これは教育だ」と思ってゲームを実況しているということです。ゲーム実況が教育になるとは、一体どういうことでしょうか?

実は、この番組で遊ぶ「ゲーム」とは、視聴者である子どもたち自身が開発し、ネットに公開したゲームなのです。そして、子どもたちはゲームを作るために、画面の向こう側でプログラミングをして、自分のゲームが YouTube に登場するのを今か今かと待っている、そういう番組な訳です

僕たちが YouTube にアップしている動画。ゲームづくりの雰囲気が分かる(視聴は必須ではない)


この生配信が子どもたちにとってどんな「教育」になるのかと問われれば、それは「プログラミングの楽しさが分かる」ということに尽きます。喩えるなら、科学の実験教室をプログラミングに置き換えたようなものですね

では、どうして「ゲーム実況」になったのか?

実は生配信をする以前から、すでに「生配信でない」ゲーム実況をかなりの回数やっており、すでに YouTube には200本近い動画をアップしています。そこで紹介しているゲームは、ほぼすべて子どもたちが作ったものです

ハックフォープレイ実況の動画。現在もほぼ毎日アップしている

この取り組みは「自分で作ったゲームが YouTube に載ったら嬉しくない?」という思いつきから始まったのですが、子どもたちの反応を見てそれは確信に変わりました。もはやゲーム実況は一部の子どもたちにとってプログラミングを続けるモチベーションにもなっているし、他の人が作ったゲームにインスパイアされることで発想の源にもなっているのです

もうひとつ重要な効果として、「あの人にゲームを遊んで欲しい」と思ってゲームを作ることは、子どもたちがレベルデザイン(※)に意識を向ける契機にもなることも分かってきました。10才に満たない子どもたちは、自分とは違う他者が自分の作ったゲームを遊ぶ状況を想像することが得意ではありません。自分で作ったゲーム実況プレイ動画を観ることは、「他者の視点から見ると自分のゲームはこうなのか」と気付かせてくれる効果もあるようです

レベルデザイン(*) ゲーム用語で、プレイヤーが遊びやすいように難易度を調整したり、空間に上手く敵やアイテムを配置したりすること


こうした知見は、現場でのフィールドワークから得られたものです。カッコつけずに言うと、要するに子どもたちを集めて体験会を開きまくっているのです。一度に20〜40人の生徒を相手にプログラミングをゼロから教えるには、効率的な運用が欠かせません。最初は講師一人当たり5〜6人の生徒を見るのが限界でした。質問が続くとすぐにパンクするので、生徒がバグを出す度に寿命が1年ずつ減っていく気すらしていました

それから5年間に渡る開発環境のアップデートと教材の工夫によって、現在は一人で最大40人の生徒までみられる(*) ようになりました。その全てをここで語ることは難しいですが、簡単に真似できる工夫が一つあるので紹介します。それは、授業動画を活用する方法です

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(*) ただし、一人一台のマシンと動画視聴環境、十分なネット環境が必要

上は沖縄県の石垣島で行ったワークショップの写真です。生徒は一人一台のマシンを使用しているが、その隣にもう1台ずつモニターが置かれているのがお分かりいただけるでしょうか。これは講師用のPCから出力できるようになっていて、動画を流すことが可能です。そこで、僕たちがこれまでワークショップで教えてきた内容をあらかじめ動画にしておき、頃合いをみて順番に流します。ただし、流しっぱなしにすると手が止まってしまうため、動画は5分以内にしておき、間には少なくとも5分以上の作業時間を挟みます。動画が流れている間、講師は教室全体を後ろから眺められるので、操作に困っている生徒がいないか目を光らせることができます


授業が動画で良くなれば、遠隔地にも容易に届けられるだろう。・・・と、そこまでは考え至るのですが、実際そう簡単にはいきません。MOOC(*) は、視聴者のモチベーションを保つのが難しいのです。「動画で学びなさい」と言って PC を与えられても、気が付いたら全然関係ない動画を観ていたり、 Twitter のタイムラインを永遠にスクロールして時間を浪費してしまいます。大人ですら、多くの人はそんなものなのです

MOOC(*) オンラインで好きな時に動画を視聴して学べるサービスの総称

リアルタイムにすることで、視聴者に「今すぐ作ろう!」と思わせる効果が生まれます。MOOC ではなく、遠隔授業に近いスタイルにした訳です

この遠隔授業にうってつけのプログラムが、ゲーム実況です。僕が小さかった頃、ハガキにキャラクターを描いてテレビ局に送ると、それが3D化されてテレビに映るという番組がありましたが、その延長線上にあるものなのかも知れません

ウェブに公開したゲームをすぐに実況プレイする様子を指して、「ゲームが新鮮なうちに遊ぶ」という表現を相方の谷口(a.k.a YouTuber たに)がしていて、うまい言い方だと思いました。ふつう1時間やそこらで作ったゲームは、作者の見落としによるバグがあったり、レベルデザインが不十分で簡単すぎたり難しすぎたりするものですが、「新鮮だ」と表現することで、それらの短所が、むしろ即興ならではの面白さであるようにすら感じられます

今後も継続的に配信していくので興味のある方はぜひ一度ご参加ください。放送の内容を詳しく知りたい方は、7時間半にわたる放送を約7分にまとめたダイジェストムービーをご覧ください↓




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