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「かえぽはかえぽを超えていく」

かえぽの新作『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』がとんでもなく良い。


今までのイメージをガラリと変えるような大人びた雰囲気で佇むかえぽのアートワークを見た瞬間から今作への期待は日に日に高まっていった。

ようやくアルバムを通して聴けたのだが、やっぱりかえぽの歌声の素晴らしさには引き込まれる。

今作の最大の魅力は何とっても、かえぽが演じるように歌っている所にある。「かえぽはかえぽを超えていく」という言葉をどこかで見かけたが、今作はまさにそんなかえぽがかえぽをアップデートしていく作品になっていると言える。

壊れてしまいそうな儚さの中で生まれる優しさを感じさせる歌声は相変わらず健在なのだけど、そこに「演じる」という表現方法が加わる事で、かえぽの歌声が魅力的に輝いている。

今作を通して聴いた時の印象としては、2人のプロデューサーが用意した舞台=楽曲の中で、歌詞という台本を元に楽曲の世界観を立ち上げていくように歌う。

また、僕自身Lampのヘビーリスナーでもあり、今作はLampとかえぽのシンクロが見事なのも魅力の1つとして書いておきたい。Lampの楽曲の魅力はありそうでない幻想的な日常を描く所にあると考えているんだけれど、そこにかえぽの声が絶妙にマッチしている。

それは、かえぽの前作『今の私は変わり続けてあの頃の私でいられてる。』に感じていた魅力が影響しているように思う。僕は前作に関して、

またこのアルバムは日常生活の延長線上にあるような世界を感じさせる、既視感のある歌詞にも僕は魅力を感じている。
文学的な歌詞でも、何か具体的なメッセージが込められた歌詞でもない。ただ、「あなた」と「私」のこれまで紡ぎあげてきた、あるいはこれから作り上げていくであろう日常生活が描かれている。
この何気ない日常生活を描く姿勢に僕は惹かれる。何かが起きる訳でもない。ただ日常が淡々と刻まれていく。これは日記を読んでいる感覚に近いのかもしれない。
何も成せなかった、ぼんやりと過ごしてしまったこの日々を歌詞として記して、それをKaedeの声で歌う。この過程に僕は日常生活に対する浄化を感じないではいられない。

と書いているのだが、その日常を歌うかえぽの姿勢がLampの描く幻想的な日常にぴったりなのだ。それぞれが今までリリースしてきた楽曲のタイトルに近しいものを感じるのも偶然ではないと思う。これまで別々の日常を歌い、描いてきたかえぽとLampが交差するのがまさに今作の『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』であると僕は考えている。

また個人的に今作はLamp作品の『ゆめ』に繋がる印象を感じていて、これを機にこのアルバムを聴き直してみようと思う。(Lampを聴いた事がない方にオススメのアルバムのなのでぜひ。)


まだリリースされたばかりなので、自分の中に落とし込めていない部分も沢山あるが、今作も間違いなく長い時間をかけて大切にしていきたい作品になる。

あなたの歌声があるから、不安な毎日でも乗り越えられるのです。歌う事を選んでくれてありがとう。

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