ラジオドラマ脚本【天使と悪魔】

2023年1月8日にLOFT9渋谷で開催したトークイベント『説明できないことを言ううVol.5』でラジオドラマを作って会場で流したのですが、その脚本を担当しました。

これはその脚本です。

イベント出演者で朗読をした音源もアップしています。

有料ですが、ご興味がある方は聴いてみてください。

出演:原宿・みくのしん・寺田大熊猫楠

【天使と悪魔】

男:あっ財布だ

すっ(拾う音)

落とし物か

あっ!!

すごいお札がたくさん入ってる

男[ナレーション]:落とした財布を拾った。電子決済が普及した現代でここまで大金を持ち歩いている人がいるのも珍しい。

中身を抜いちゃおうかな…

(風の吹くような音)ささっささっ

天使:ねえ。ねえ。だめだよ。ちゃんと交番に届けなきゃ。

男:あっ天使…

天使:落とした人きっと困ってるよ。ちゃんと交番に届けてあげて。それに現金を拾った場合、持ち主が一定期間現れなければ所有権が自分にうつることもあるし、拾った人は持ち主から落とした金額の5%から20%までお礼として受け取ることができるから、現金が欲しければ請求すればいいわけだし、そもそもお金を抜くのは犯罪だよ。

男:アドバイス、具体的だな。

男[ナレーション]:僕が何かに迷うと天使が現れる。ちょっとした悪事を働こうとするとそれをとがめてくれたりもする。僕の頭の中で勝手に作り上げた幻想かもしれない。でも、実際に僕にささやいてくれている気もする。本当のところどっちなのかは分からないけど、とりあえず、こういうときに天使があらわれるんのだ。

男:お金抜こうかなって、一瞬そういう気持ちがよぎっただけで、本気じゃないよ。近くに交番があるから届けに行くよ。

天使:そう良かった。あなた基本真面目な人間だけど、魔がさすと何したら何しでかすか分からないところがあるからね。

男:なんだよ、それ。俺って天使にそう思われてたんだ。

(風の吹くような音)ささっささっ

交番に財布を届けると天使はいなくなった。

頭の中の天使は声しか聞こえないけど、とても可愛らしい声をしている。

僕は天使があらわれるのが好きだ。さっき財布を落として「中身を抜こうかな」って思ったのだって天使が現れてほしかったからだ。天使の声を聞きたくて、わざとする気もない悪い方の行いをしようとしてみただけ。

ひとつ疑問なのは天使はあらわれるのに悪魔があらわれないことだ。普通、天使と悪魔は同時にあらわれるはずなのに、僕にはあらわれるのは天使だけ。

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