飛翔

散髪に向かう途中、喉が渇いたのでカフェテリアに入った。コーヒーを頼もうとして、気がついたらビールを飲んでいた。暑かった。

テラス席にはサングラスをかけたおそらく北欧からの金髪の男女。バケーション中なのだろう。体を傾けて、太陽の光を全身で浴びようとしているが、目が弱いからサングラスをかけなければならない。格好をつけているわけではない。

オレは割と平気だ。眩しく感じることはあるが、目が開けられないほどではない。できるだけサングラスはかけたくない。日焼けもできる。問題ない。じょじょに肌が黒くなる。赤く腫れることもない。

人種の違いというのはやはりあるだろう。こうやって、オレがビール一杯で赤ら顔になっているのも、人種の違いからなのだ。

ビールの後、結局カプチーノを頼んだ。アルコールの後、カフェインは最高だ。冷たい飲み物の後、暖かい飲み物というのはいい。

しかし、こうやって辺りを見渡してみれば、バルセロナの中心部は本当にコスモポリタンだ。イギリス人、ドイツ人、北欧人、モロッコ人、中国人、アメリカ人をよく見かける。他にも、イタリア人、フランス人、ポルトガル人、ベルギー人、オランダ人、スイス人をよく見かける。他にも、ロシア人、韓国人、ブラジル人、メキシコ人、アルゼンチン人、ボリビア人をよく見かける。他にも、南アフリカ人、マダガスカル人、ナイジェリア人、コートジボアール人、ケニア人、タンザニア人をよく見かける......

美容院に到着したオレは、髪を切りはじめた日本人美容師に向かって言った。

「日本人、見ないんですよね」

「そんなことないでしょう」彼女は言った。

「いや、ほんと、見ないんですよ」

「いますいます」彼女は笑って言った。

「いや、本当なんです。空を見上げても日本人だけが飛んでいない」

彼女は髪を切り続けた。僕の髪は坊主同然になった。


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