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新刊『授業UD新論』の紹介

東洋館出版社より新刊『授業UD新論〜UDが牽引するインクルーシブ教育システム』を上梓させていただくことになりました。東洋館出版社HPを始め、Amazonなど各ネット書店で予約できます。

東洋館出版社のHPはこちらです。

これまで、このnoteやSNSで発達障害や授業UDに関する情報を発信してきましたが、今回の書籍はそれらの情報を系統的にまとめて「これからの学校教育に、なぜ授業UDが必要なのか」を論じたものです。もちろん、授業UDだけで発達障害をはじめとする特別な教育的ニーズのある子どもたちの困難が全て解決するわけではありません。しかし、授業UDが基盤になければ、特別な支援が必要な子どもに対する個別の支援を増やすことになり、結果的に通常学級の支援リソースを逼迫させてしまいかねません。そうなると、支援を求めて特別支援学級へ移籍するケースが多くなり、インクルーシブとは真逆の状態へと進んでしまう可能性があります。

実のところ、インクルーシブ教育システムの構築には通常学級が大きく変わることが大前提になっているはずなのに、はたして“インクルーシブ教育システムとは何なのか“があやふやなまま議論されていることが少なくありません。インクルーシブ教育と統合教育を混同していたり、またインクルーシブ教育にもフル・インクルージョンと部分インクルージョンがあるのですが、両者の違いを明確にしないままの議論がなされていることもあります。

授業UDがなぜ必要なのかを理解するためには、そもそもインクルーシブ教育とは何か?そしてインクルーシブ教育システムとは何かを理解する必要があります。そして日本における特別支援教育の現状や課題などについても把握しておかねばなりません。

『授業UD新論』の構成

本書は3部構成になっています。構成の意図は第1部で授業UDの理論的背景として必須な知識や考え方を整理し、第2部で授業UDそのものを論じています。そして第3部では、これからの授業UDが目指すべき方向性について書いています(あくまで私個人の考えですが)。各部の内容を簡単にご紹介します。

第1部『システムとしての特別支援教育を再考する』

第1部では、授業UD論の前提となる考え方を整理しています。ここでは特別支援教育の現状や課題、発達障害や障害の個人モデルや社会モデルなどをわかりやすく解説することを目指しました。この類の話はだいたい教科書的になりやすいのですが、可能な限り平易な表現と例えで論じてみようとチャレンジしています。授業UDそのものに興味がない方も一読してもらえるとありがたいです。
特に第1部では『8.8%の意味すること』や、国連の障害者権利委員会からの勧告についてなど、特別支援教育をめぐる昨今のニュースについての解説や、特別支援学級・学校の児童生徒数増加の問題なども取り上げます。先述したとおり、これからの日本のインクルーシブ教育を考えていく上で、議論の土台となる様々な考え方を整理しておがなければ、同じ土俵での議論はできません。本書では日本のインクルーシブ教育システムがそもそもどういう成り立ちで出来上がってきたのかを振り返りながら、その課題点を論じていきます。

第2部『インクルーシブな学校システムのカタチ』

第2部では、授業UDを軸にした日本のインクルーシブ教育システムを論じました。ここでは授業UDの基本的考え方(そもそもユニバーサルデザインとはなにか、など)や、授業UDの歴史などを解説しています。よく質問される授業UDとUDL(学びのユニバーサルデザインの違い)についてや、授業UDに対する批判への回答、そして私自身が研究してきた授業UDの効果検証の結果など授業UDのエビデンスを紹介しています。
第2部で示したかったのは、そもそも授業UDはなにを目標にしているのか、ということです。多くの授業UDの実践が行われるようになったものの、授業UDの表面的な手立てのことばかり着目されたり、本当にユニバーサルデザインとして機能しているのかわからないような取組が取り上げられたりすることもあります。「方法が目的化している」と言えるかもしれません。
授業UDが開発されてきた経緯や、エビデンスを基に授業UDの効用と限界を知ることが、授業UDの本質に迫ることにつながる、そのような思いで執筆しています。

第3部『新時代の学校教育とインクルーシブ教育』

第3部は、これからの授業UDの話です。第1部で論じたように日本のインクルーシブ教育システムは岐路に立っていると思います。これまで授業UDが果たしてきた役割を強化しながら、これからどのような方向に進化していくべきなのか?について私なりの考えを模索しています。
現時点で私が考えているのは授業UDとUDLを統合した新しいUD授業アプローチです。授業に対するアクセシビリティを向上させるとともに子どもたちの多様なニーズに合わせてオプションを提示しつつ、自らに適した学び方を子どもたちが学んでいけるように促していく、そのような授業を目指していくべきではないでしょうか。それは、これからの『個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実』を目指す令和の日本型学校教育としても機能すると思っています。個別最適化と協働的な学びは授業UDが目指す授業のカタチと軌を一にしていることも本書をお読みいただければわかるのではないでしょうか。

刊行記念企画『これからの特別支援教育と授業UDを語る』
3月24日20時〜21時30分 開催!!

本書の刊行を記念してスペシャル企画が開催されます。
授業UDを特別支援教育の立場から牽引して来られた阿部利彦先生(星槎大学)川上康則先生(東京都公立特別支援学校主任教諭)と菊池が、特別支援教育の現状と課題や明日の授業UDの姿などについて語り合います。あえて司会をおかずに、3人でのざっくばらんなおしゃべり、『〇〇の時代』のようなトークを予定しています。

東洋館のイベントページにて参加申込ができます。ウェビナー形式ですのでお耳だけの参加が可能です。もちろんアーカイブ付きです。多くの方にご参加いただけるとありがたいです。


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