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幸せをよぶ一粒。

私は昔からいちごがこの世で1番好き。

春になるにつれてスーパーのいちごコーナーが拡大されていって、近づくとなんともいい匂いに包まれるところから大好き。その匂いを小瓶に閉じ込めたいくらい。それだけで幸せになれる。
不思議なもので、買うつもりがなくても香りを嗅ぐとつい手が伸びてカゴに入れてしまう。
それは街中のメロンパンやさんのように視覚より嗅覚からのアプローチをされているような。
空腹の時はその匂いがからっぽの胃に染み渡る。

私が好きだったからなのか、気づいた時にはお庭にいちごも植っていたけれど、赤く染まる前後からなめくじとアリと人間で誰が1番早く良い時に食べられるかの争いが始まるのだ。
そしてだいたい虫チームが早い。
あの動きの遅いなめくじでさえも食べ物を前にするとライバルになる。
争いに勝ったとて、サイズも小さくて甘味もそこそこのいちごだから練乳は必須。
いちご本来の甘味で楽しみたい私には少し物足りなさもあった。おいしいのはおいしいのだけれど。
母は母で私がどれだけ好きなのかを把握してくれていたので、安い日を見つけては買ってきてくれた。お値段は決して可愛くないので、少しずつ大切に食べた。
時には1パックを自由に食べさせてくれて、一瞬でぺろっと完食する幸せな経験もした。
食べる前からあと何粒などとカウントダウンをしなくていいのは夢だった。
好きなものは飽きず変わらずずっといちごなので、私が春に帰省する時も必ずいちごを用意して私の帰りを待ってくれていた。

そんな私も母になった。

息子の離乳食時期からいちごをペーストにしたりして与えていた。
酸味があるから好きでないのか、梅干しを食べた時のような酸っぱい顔をしてぺっと吐き出していた。私と違って苦手なのか〜と思っていた。
今年久しぶりにあげてみると、びっくりするくらいパクパク食べる!!え!!!
ずっと好きでしたけど?ばりのテンションでどんどんいちごが吸い込まれていった。
嬉しくて嬉しくて今期は冷蔵庫に絶対にいちごを揃えるようになった。
私も食べるつもりで買っているけど、息子が嬉しそうに食べる姿を見るとそれだけで胸がいっぱいになるのは確かだ。
だから以前のようには食べていない。

それでも、夜みんなが寝静まった後その日の気分で器を選びいちごを盛り付けて食べると1日の最後が素敵な締めくくりになることが分かった。
私だけの秘密の時間。

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