見出し画像

ラジオのありがたみ

趣味:ラジオを聴く
という人の気持ちが微塵も分からない人間だった。

だって顔も名前も知らない人のメッセージなんて興味ないし、好きな音楽を選んで聴くほうが満足度高いし、コマーシャルうっとうしいし、素人のインタビューなんか聴けたもんじゃないし、どんなメッセージが来ても波風立てないようにさばくパーソナリティの八方美人感もなんだかなぁと思っていた。

それが最近そうではなくなった。
ので自分でも少し驚いている。

最近転職してオフィス勤務になったところ、
常に東京FMが流れている職場だった。
あとアロマディフューザーみたいなのも常に垂れ流している。
理由は知らないが恐らく代表の趣味。
それまで多摩の奥地で塩酸を吸いながらドタバタ働いていた田野は、さすが都心のオフィスはオシャレなことするなぁと衝撃を受けた。

正直、ラジオとは無縁人生だったため嬉しい気持ちは全くなく、むしろ苦手な話題が出てきても消せないのは嫌だなぁくらいに思っていた。

それが入社4ヶ月、いつの間にかラジオが私にとって「ありがたい存在」になったので、
ラジオのありがたポイントをご紹介します。
(話し言葉と書き言葉混ぜるなって言わないで)

ありがたポイント①:シーンとならない

これは地味だが本当にありがたい。

よく仲良しの指標として「沈黙が苦にならない」が挙げられるが、仲良くもなんともない職場の人と同じ空間で沈黙が続くのは非常〜に苦痛なのだ。
決して、断じて、おしゃべりをしたい訳ではない。
仕事に集中しろよという話ではある。けれども、完全に無音だとその場にいるだけで心拍数が上がるような緊張を感じてしまう。そういう人間に生まれてしまった。

完全無音空間で自分の電話が鳴ろうものなら、全員の耳がこちらの対応に傾くことになる。
その瞬間に緊張感はピークを迎える。
私は前職でも誰かしらが会話をしているタイミングを狙って電話をかけていた人間だ。想像するだけで疲れた。

無音特有の緊張がほぐれること、大多数の意識がそちらに向いてくれることで、ラジオは働きやすさの一端を担ってくれている気がする。
ありがとう。

ありがたポイント②:時報が退勤までのカウントダウン

ラジオは大抵1時間毎に時報が鳴る。
これが働いていると非常にありがたい。

自分で言うのもなんだが、良くも悪くも働き方はかなり真面目なほうだ。
しかし断じて仕事が生きがいではない。
退勤後の家で過ごす時間、晩ごはん、スマホを見る時間、その他諸々が私の大切な時間であり、退勤の瞬間こそが何よりも嬉しく尊いものなのだ。
そのため、ラジオから時報が鳴るたびに心の中では「あと◯時間だ!!」と密かに盛り上がりを見せている。

ラジオではコマーシャルついでに時報が鳴ることが多い。(全部そうなのかな?)
中でも私のお気に入りは、BIGBOSSこと新庄剛志のCMである。
午前中に流れるクルマ買取のCMに新庄剛志が出演しているのだが、BIGBOSSは開口一番に

「シンジョオ〜〜、、」

「ツヨシでぇ〜〜〜す!!!」

というタメ付きクソデカ挨拶で登場する。
そして一通りクルマ買取の紹介をしたのち、最後に
「◯◯時です!!!」
と元気いっぱいに時刻をお知らせして終了する。
ちなみに新庄は[i]の発音が少々苦手らしく、
「ジュウイチジ」の時にはかなり不安になる滑舌で時刻をお知らせする。

これを初めて聴いた時、正直かなりピリついた。
こちらは真剣に仕事しているというのに元気一杯のクソデカボイスで登場し、オフィスという雰囲気には到底ふさわしくないハイテンションで去っていく。
これから毎日新庄と共に仕事をしなくてはならないのかと思うと少し気が滅入った。

しかし新庄と毎日を共に過ごすうち、そんな感情は徐々に消えていった。
私の脳みそは「新庄が来る=休憩が近づく=退勤が近づく」ということを覚え、「新庄=嬉しいもの」としてインプットされたのだ。
今では「シンジョオ〜、、」の時点でハッとなり、
心の中で一緒に「「ツヨシでぇ〜〜〜す!!!」」
と叫んでいる。

そんなありがたい時報だが、これも閑散期に入社したためにそう感じているだけかもしれない。
これからド繁忙期が4月末まで続くことを考えると
「もう◯時?!待ってよシンジョオ〜〜〜!!!」
となる未来はもうすぐそこまで来ている。

ありがたポイント③:他人が選んだ音楽

音楽といえばラジオ、ではないけれども
ラジオといえば音楽だと思う。

冒頭にも書いたように、音楽を聴くなら自分で選ぶのが一番いいと思っていた。
メニューを選ぶ時は、今一番食べたいものを選ぶ。
同じように、音楽も今一番聴きたいものを選ぶ。
そんな感覚だったため、音楽を聴くときはいつも味を知っているマイリストの中から選んでいた。

しかしそんな感覚もしっかり覆されてしまった。
理由を挙げるとこんな感じだ。

 ①トークテーマに合わせた曲が流れる
 ②季節の曲が流れる
 ③流行りの曲をつまみ食いできる

①トークテーマに合わせた曲が流れる
特に朝のラジオ番組では大抵トークテーマが設定されており、テーマに沿って募集したリスナーの投稿をパーソナリティが読み上げ、共感したり、相談されたり、議論したり、驚いたりする。
そして最後に一曲流してさようなら、ということが多い。
選曲はリスナーのリクエストやゲストの新曲、番組側のセレクトなど数パターンあるが、
番組側のセレクトの場合は大抵トークテーマに沿った曲を流す。
これが普通に聴くより感情移入できてしまうのだ。
昔の思い出を語ったあとの「ずっと好きだったんだぜ」は普段出ない類の涙が出るし、
今年はどんな年だったか思い返してしんみりした後に「今年の曲といえばこれでしょう!アイドル!」
と来たときは普通に立ち上がってペンライト降りそうになった。

②季節の曲が流れる
これも①と理由はだいたい同じだ。
冬にバンバンバカンスを聴いても寒いものは寒い。
感情移入というのは音楽においてかなり大事な要素なのだと思う。
季節だけではなく、時間、時勢、曜日に合った曲を流してくれるのもとても良い。
月曜日の朝にやさしく労ってくれるような曲を流したり、週の半ばにサァ頑張ろうぜ〜を流したりする番組の寄り添いにグッ、、とくる。
ある日そろそろ退勤という時に、「アガる曲」というテーマでとっとこハム太郎とおジャ魔女どれみが立て続けに流れた時は文字通りブチアガった。

③流行りの曲をつまみ食いできる
テレビで音楽番組を観ないため、流行りの曲にそこそこ疎い。
YouTube Shortで使われる曲くらいでしか流行りを認知できていないのだ。
別にそれでも良いと思えば良いのだが、
人とカラオケに行った時のために、ある程度知られた曲を歌えておきたいという気持ちもある。
それに流行っているということは大抵いい曲であり、お気に入りにもなりやすい。
かといって自分からAdoの新曲を聴きにいくほどの行動すら起こさないため、ラジオが定期的に流行りを教えてくれるのが私にとってかなりちょうどいい。

ちなみに、苦手な曲やアーティストが流れてきた時の対処法は「トイレに旅立つ」だ。
ラジオではフル尺で流さないことが多いため、
戻ってくる頃には大抵終わっている。

ありがたポイント④:人間を保てる

ラジオには心身のリズムをととのえ、人間としての形を保たせてくれる効果がある。
ように感じる。
これはありがたいどころの話ではない。

①心身のリズムをととのえてくれる
そりゃそうだが、ラジオは毎週いつもの番組をいつもの時間にいつもの人が概ねいつものコマーシャルとともに放送している。
仕事中に聴いていると、これをありがたいと感じることが多い。
電車が混んでてぐったりした、ポケスリかけ忘れてしょぼくれた、電話が多くてピリついた、そんな乱れがあった時の「いつものラジオ」にはかなり効果がある。
徐々に気持ちがフラットになり、自然と仕事するモードに修正してくれる。
感情が大暴れしていても、落ち着いた声で話してくれる人がいると我に返れることも多い。
私が大暴れしそうな時になだめて欲しい声ナンバーワンは圧倒的に住吉美紀さんだ。
ただし、「いつも」が乱れてしまうとこれは逆効果になるので注意したい。
今後、仕事で嫌なことがありすぎると
「ラジオを聴く=嫌なことを思い出す」になりかねない。
心穏やかに働けますように。頼むよ。

②キレイごとを言ってくれる
「小学生の頃、道徳の教科書をキレイごとだとバカにする」記憶ってきっと誰にでもあると思っている。
大人になったら道徳の大切さは当然ある程度分かっていて、でもそうそう口に出して語ることはない。
どことなく道徳の影に「キレイごと」がチラついて恥ずかしいのかもしれない。
かといって、自分はもう分かっていると道徳の授業を「卒業」した気でいるのは危ないと最近思う。
思いやりを持とう、相手を尊重しよう、人と人とのコミュニケーションって大切だね、あいさつはだいじだよ、悪いことしたら謝ろうね
そんな当たり前のことを人間は忘れてしまうのだ。
私は何度も忘れた。
公共放送なのだから当然ではあるが、ラジオからは
誰かを傷つけるような言葉を聴かない。
リスナーからのお悩み相談では人間関係の話題が多い。もし知恵袋だったらやめれば?で一蹴されそうなお悩みにも、人間としての復習をしているような、子供相手でないと語れないようなことをふざけずに語ってくれるのだ。
キレイごとを改めて口に出してくれる。
三十年近くかけて蓄積してきた思考回路を少しだけ柔らかくしてくれる。
そんな存在が私はとてもありがたい。

キレイごとという言葉を使うのは少し言い方が悪いなと思うけど、
キレイごと=現実味のないことと解釈するのであれば、現実だけを見続けて生きるのはちょっと危険かもと思っているよ。

ジャンケットバンク(ヤンジャン・ジャンプラ) の
無堂清光の台詞が好きなので置いておきます。

人は君を夢想家と笑うだろう
だが覚えておきなさい 嫌というほど辛くつまらない現実を見たあとで
現実に逃げぬ者だけが 夢の世界で暮らせるのだ

最近の生きがいジャンケットバンクをぜひ読んで下さい。
私の夢はやさしいおばあちゃんになることです。


ラジオのありがたみ

そんなこんなで、ラジオは私の生活においてかなりありがたいものになっている。
かといって休日に積極的に聴いたりはせず、
「ラジオが好きです!」という訳ではない。
お気に入りがひとつ増えた感じだ。
平日の東京FMしか聴いてないのでオススメの番組や楽しみ方がある人はぜひぜひ教えて下さい。


おまけ:生放送恐怖症

書きそびれたが、かつてラジオを敬遠していた理由のひとつに「生放送が怖い」がある。
私は物心ついた頃から生放送が好きではなかった。
毎日観ていた天才てれびくんも、木曜日(水曜日?)の
生放送の日だけは観なかった。
朝のニュースで映像が乱れてアナウンサーが神妙な面持ちで焦っているのが辛かった。
他人の感情を自分にも感じさせてしまうタイプなのだと思う。どうして。
ラジオも生放送が多いためはじめは少し緊張しながら聴いていたが、パーソナリティがまぁ〜プロ仕事のため心配なかった。
長寿番組が多いのもあるのだろうが、生放送特有の緊張をあまり感じさせないのだ。
特にゲストを呼ぶ番組でそれを感じさせないのは本当にすごい。
それでも電話越しのインタビューだとモタつくことがあるため、パーソナリティの言う「コロナ禍でリモート化は進んだけど、やっぱりラジオは対面がいいよね」は物凄い説得力があった。
私は早くリモート勤務したいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?