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中華製Mini-ITXケースPK55の人柱記録

さんちゃいが中華製Mini-ITXケースでリュックサックに入るVR-Ready PCを人柱した記録です。
2020/01/28: 自動オーバークロックの設定を無効化して、手動での常時ブーストクロック動作が可能だったので一部修正。修正箇所には『2020/01/28追記分』とついているので、差分はページ内検索で見れます。あとBIOS設定についても記載しました。

2020/01/29: 3DMarkのFireStrike(1080p)の結果を掲載  小型ながら放熱もしっかりしており、Ryzen 3700XとRTX2070での平均値ほどのスコアが出ています。

コメント 2020-01-29 104215

超小型VRゲーミングPCという需要

ゲーミングノート…?そんなものは存在しない、いいね?
ラップトップでも20枚以上の諭吉で叩けばミドルデスクトップ級の性能があります。自分もRTX2070とi7-8750Hのラップトップがありますが、長時間(1日平均8時間[ほぼ寝てる])のVRゲームには耐えられません。一月前にマザーボード交換修理となったのですが、ちょうど一ヶ月でBIOSが起動できない状態にまでなり、ほぼ逝きかけました。負荷的にラップトップでは無理だと感じた私は、どこでも持ち運べるデスクトップを作ることを決心します。

小型なゲーミングPCというのは常に一定の需要があるものと推測されます。BTOメーカーも2015年ほどからMini-ITXサイズのマザーボードを使用した小型ゲーミングPCを発売しており、日本の大手BTOメーカーでは必ずラインナップがあります。しかし、VRゲームというほぼ4Kゲーミング性能を必要とする条件では、国内ではIiyamaのC-Classあたりしかありません。これでも小型な方ですが、毎日リュックサックに入れて持ち運ぶという頭がぴょんぴょんした要求を満たすサイズではないです。あとスペックの割に高い。

・よく知られた解決策
Dan CasesのA4-SFX
というケースはこのぴょんぴょん要求を満たすほぼ唯一のPCケースです。マザーボードにライザーカードを挿し、マザーボードと平行になるようGPUを配置することで、GPU2枚分ぐらいのサイズのPCを作ることができます。これは某VRゲームの界隈でも有名なケースで、ググれば作成報告もすぐに見つかります。このケースでもいいのですが、約4万円とかなり高いです。4万円ならフルタワーでも超高級な価格帯であり、この金額をケースにかけられる人は油田を隠し持ってる可能性が高いです。油田ください。

・中華製PCケースを人柱
こんなものをあの中国が見逃すはずがない
と思った私は、AliexpressでMini-ITXケースを漁り、A4-SFXよりさらに小型で約8000円のPCケース(PK55)を発見しました。容積5.6LとA4-SFX(7.2L)からさらに20%ほど小型です。専用のライザーカードと合わせてほぼ1万円で購入できました。送料基本無料ですが課金してAliexpress Standard Shippingを選んでいます。EMSとなり、注文から12日間で到着しました。

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PCケースPK55のスペック

大きさ: 30cm(奥行き) * 11cm(幅) * 17cm(高さ) (500mlペットボトルを立てて4本ほど横に並べた感じ)

材質: アルミ合金のようです。マグネシウムも含んでいるらしく、アルマイト処理をしているあたり5000番台のアルミ? 表面はサンドブラスト処理みたいな感じで、遠目から見ると某りんご製品感。面取りも結構しっかりされてる(珍しい)。

GPUの限界サイズ:  長さは305mm以下で厳密に2スロット以下の厚みに収まるもの。オーバークロックモデル以外ならだいたい入るはず。

その他、CPUクーラは55mm以下、メモリは高さ58mm以下、電源はSFXサイズのみ搭載可能です。公称では2.5インチのストレージが2つ取り付け可能とありますが、諦めてください。高容量のM.2のSSD1つが現実的な選択肢です。1つ電源裏に取り付けられるとは思いますが… たぶん大変

選定したパーツ構成とコメント

全体的にコスパのいいミドルーハイぐらいのパーツを選んでいます。
CPU: AMD Ryzen 5 3600
GPU: MSI GeForce RTX 2060 SUPER VENTUS GP
RAM: G.Skill F4-3600C19D-32GSXWB
マザーボード: Gigabyte B450 I AORUS PRO WIFI (rev. 1.0)
ストレージ: Crucial P1 CT1000P1SSD8
CPUクーラー: Noctua NH-L9a-AM4
電源: Corsair SF600
SSDの流用&底値買いで、ケース含め合計約12万円程度となっています。
全部買っても高くて13~14万円です。費用を抑えたパーツ構成なら10~11万も十分実現可能です。

以下しばらくは選択理由の解説ですが、小型ケースならではの排熱量を意識したコメントがつらつらと続くだけなので、読まなくても大丈夫です。
[CPU]
2020/01/28追記分: 下記のように3700は厳しいかもと思いましたが、3600のブーストクロック(4.2GHz)で全コアフルで動かして70度~80度ぐらいなので、実用3700でも十分に性能を発揮すると思います。
『Ryzen 7 3700という選択をしたい方もいると思いますが、おそらく放熱が追いつかないので実用3600に毛が生えた程度のスペックに落ち着くと思います(3600でも常時ブーストクロックでは動かせない)。3500が日本で発売されれば最適となるか、3400Gが一番コスパはいいかも。Intelに家族を人質に取られてる人は強く生きてほしい。』

[GPU]
2080Tiは排熱量的に入れないほうが無難。最高でも2070 Superか2080だと思う。CUDAに魂を売ってない人はAMDのGPUでもいい。VR的に8GBのVRAMが欲しく、2060 Superは8GBの乗る良コスパGPUなので選んでます。ちょっと微オーバークロックしたらすぐ2070になるのも理由。あと間違ってもショートボードのGPUは買わないこと。2つ以上のファンは飾りではありません。

[RAM]
Ryzenの1~2世代はRAMの速度に素直だったため、DDR4-3600のオーバークロックRAMを入れていますが、ゲーミング用途に限りZen2ではさほど必要ないかも (Zen初代と異なり、3DMarkのベンチマーク上では2133MHzと大きな差はなかった)。ただ起動やアプリの立ち上がり、Chromeはちょっと早くなる。コストを抑えるなら2667でも十分。あとこれから買う方は人権容量16GB以上にしましょう。8GBは絶対後悔します。

[マザーボード]
小型化にあたり私事情でWiFiは内蔵してほしかったのでこのモデルになりました。ただ、WiFi不要でも現状Mini-ITXはフェーズに大型ヒートシンクがあるモデルを選ぶとこれ一択かも。後述するCPUクーラーがトップフロー型で、その風がしっかりと流れる形状になっています。

[ストレージ]
M.2タイプほぼ必須です。これは手持ちにあったので選んでいますが、これから買う方はNVMe対応のM.2をぜひ選んでください。速いです。ちょっと古い記事ですが、この傾向が変わっていないなら、油田持ちはSamsung、市民はWestern DigitalのBlackあたりが良いと思います。

[CPUクーラー]
2020/01/28追記分: 下記のように書いていましたが、BIOSの設定見直しで十分冷えるクーラーでした。だいじょぶ
『NoctuaのCPUクーラーは静か(というか耳に刺さる音がしない)でいいですが、もうすこし大型のヒートシンクがほしいところ。良いのがあったら教えてほしい。ちなみにファンを風量マシマシなやつに変更しても冷えなかったので、冷却性能を上げたければヒートシンクの大型化/全銅化必須です。(ちなみに、このクーラー買うとNoctuaのメタルエンブレムシールが付いてくるのでちょっと幸せ)』

[電源]
正直450Wでも足ります。効率のスイートスポット(最大容量の半分で最高効率になる)的に450Wのほうが良かったかも。ただ小型ケースに収める都合上、高効率電源を選ぶべきです(排熱が少なく済む)。とりあえず今回はGold。消費電力が少ないのもあって、24時間マイニングでもしない限りPlatinumを買うメリットはないでしょう。静音性の評判から今回はCorsairを選んでいますが、SilverStoneも良い電源メーカーです。

組み立てのハマりポイント

PCケースに説明書などついてこない上に、超小型ケースということもあって、最低でも1台自分でパソコンを組み立てたことのある経験が必須のケースです。最初の1台目には絶対おすすめしません。自分は何台組んだか覚えてないぐらいですが、配線が既に終わった状態から取り付けだけで2時間ぐらいかかってます。

全体的な手順としては、マザーボードに全部品を取り付け→電源やCPUクーラの配線→マザーボードをケースに挿入、電源に延長ケーブルを接続し挿入、最後にGPUを取り付けという感じです。

1.マザーボードの配線、ライザーカードやバックパネルはケース挿入前に取り付ける
CPU補助電源はケース挿入後では配線が非常に難しいです。バックパネルは通常先にケースに取り付け、横方向にスライドして挿入しますが、そのスペースがないのでマザーボード側に取り付けがおすすめです。WiFi用のアンテナコネクタが特に干渉していたので、それがないモデルは通常の組み立て手順でいけるかも。またライザーカードも挿入後に配線できないので取り付け、マザーボードの背面に来るよう折りたたみます。

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マザーボードの裏側にライザーカードが出てくる様子

2.マザーボードは縦列駐車のように入れる
上からストンとケースに入りません。マザーボードを傾けながら入れましょう。このときバックパネル用の穴からマザーボードを持てることもあって、マザーボード側でのバックパネル固定を推奨しています。

3.電源の延長ケーブルの接続とメインスイッチONはケースに挿入前に
SFX電源を内部で保持するために、コンセントの延長ケーブルが内蔵されていますが、挿入後は配線不可能に近いので、うまいこと手元に伸ばしてきて接続してから入れましょう。機種によってはメインスイッチもONにしておいたほうがいいでしょう。

4.電源はネジ止めできないかも
販売商品写真ではなかったのですが、天板には丁寧にパンチングメタルが貼られており、SFX電源を固定するための部分にドライバーが侵入不可能となっています。電源固定用のフレームは取外し可能なように見えましたが、ネジが固すぎて取り外しを断念。ただケースがきつきつなのもあり、配線からくるテンションだけで保持可能です(

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メッシュを貼ってくれるのは嬉しいけど、これ設計ミスでは…

5.GPUの取り付けは最後がおすすめ
電源の延長配線がGPUの裏を通るので、GPUは最後に取り付けるべきでしょう。こちらも補助電源の配線がケース挿入後は困難なので、事前に配線してから取り付けましょう。

詰みポイントが多すぎて、試行錯誤で2時間ぐらいかかりました。

想定される懸念事項

自作erのみなさんが持つであろう疑問にかんたんに答えておきます。

・ねじとかついてくるの?
取り付けに必要なものは全て同梱されています。また、ケース購入時はライザーカードも注文することをお忘れなく。+30$ぐらいでアルミサイドパネルも選択できます。(デフォルトはアクリル板でこれも悪くはない)

・CPUに簡易水冷いけそう?
無理かな~ そうしたいならA4-SFXか、少し大きくなっても良いならちょっと高い中華ケースが良いかも。

・そのライザーカード大丈夫なん?
3DMarkのベンチマークではRTX 2060 Superで変わらないGraphics Scoreを記録しています。シールドもしっかりされており、そんなに安っぽい品質のものではなかったです。2080Tiなどを使用すると変わるかもしれませんが、そんなものをこの小型ケースに収めると、排熱面での損失(ブーストクロックで動かせない)のほうが大きくなるでしょう。

・排熱はどの程度?
2020/01/28追記分: CPUの方の排熱も自動オーバークロックの見直しでかなり良くなり、室温20度程度で最悪でも80度ぐらいまでしか上がりません。ただ、ケースの上下に空間があったほうが良いのはもちろんのことです。
『ケースの上面はもちろん下からも熱があふれ出るので、枕木みたいな感じで下にも中空な空間があったほうが良いです。穴あきまくりなので排熱はわりとしっかりしていて(ホコリが入りやすいとも言う)、オープンエア時とほぼ変わらない3DMarkベンチ結果が出ています。現状、CPUクーラ的にRyzen 3600あたりが限界ちょっと超えてるぐらいで、』
GPU側は排熱の余裕があります。最高2080までなら行けそうで、サイドパネルを自作&上面加工すれば2080Tiのフルスペック稼働がワンチャンあるかも…

・それで…おいしい卵かけご飯の作り方は?
ご飯はお茶碗にちょっと少なめに盛り、中央に卵を落とす。その後めんつゆ小さじ1~2程度、味の素2振り。中央から卵黄を崩して少し溶き、周辺のお米をすくうように食べてみてください。食べるラー油をアクセントに加えても最高です。

総評

PK55という中華製PCケースを人柱してみました。実際に使ってみて思うところですが、上か下面にケースファンを追加できれば完璧なのにと感じるところもあり、A4-SFXのあのサイズは確実な冷却性を担保するために必要なものだと理解しました。
    しかし、それでも2~3万円を上乗せしてA4-SFXを買うかと問われると、私は買わないでしょう。小型ケースなので、1万円もあればより最適なサイドパネルを自作した上で、冷却も十分に改善できるからです。また今の所、20~25度の室内にて、熱による性能低下(常時サーマルスロットリング)というほどの状態にはならないです。真夏エアコン無しで部屋が30度を超えるぐらいになればなるかも…(そんな空間でVRしたら死ぬけど)

リュックサックにOculus QuestとデスクトップPCをまとめたいという頭がぴょんぴょんな同志はぜひ挑戦してみてください!

BIOS設定について(2020/01/28追記)

設定を見直したらかなりCPUの発熱が抑えられました。まず自動オーバークロックの設定は無効にし、自分のRyzen 3600はCPUのコア供給電圧を1.15V、クロックを4.2GHz固定にしました。結果、全コア常時ブーストクロックで70~80℃未満で動作しています。デフォルトの自動オーバークロックではコア供給電圧が1.3Vぐらいまで上昇していた(やりすぎ)ことが発熱の問題でした。Noctuaクーラーできる子。


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