太陽とわたし

並木芽衣子が好きだ。

太陽とは言ったものの天体の太陽の話では全くなくて、もっと比喩的な、私にとっての太陽となる女の話をめちゃめちゃに流してもいい場がほしくてアカウントをとってみた。明るい話はいつも意識的にしているので、そうでもない話をしていこうかな。

Twitterで私が日々好きだ好きだと呻いている並木芽衣子は、アイドルマスターシンデレラガールズに登場する22歳の女性だ。パッション。鉄道の日生まれ。和歌山県出身。趣味は旅行。正直私とは似ても似つかない元気いっぱいアクティブな女性。彼女が私にしてくれたのは、ただアイドルを楽しむ姿を見せる事だけ。それでも私はその姿に惹かれて、光を見て、いつしか人生のいくらかを自分から彼女に差し出すことを選ぶほどになった。

並木芽衣子が好きだ。この「好き」という気持ちを正しく言い表すのは難しい。恋愛関係になりたくないと思う私がいる。だってプロデューサーだし。それに好きの終着点が恋愛や性的関係にしかないなんてさみしい。でも私の中にはファンとして彼女を好きな部分も確かに存在していて、その部分は「彼女はこんな人間と付き合ってはいけない」と思う。これは恋愛感情を前提とした否定で、結局のところ付き合いたいんだろ、恋愛に至るべきだという誰かの言葉を否定しきれない部分だ。私は随分めちゃくちゃなままで、とりあえず「好き」という大きな枠を細分化しないことでやり過ごしている。自分のこういうところは嫌いだ。

それはそれとして、並木芽衣子はゲーム内において露骨にプロデューサーへの好意を示してくれる方だと思う。そういう所も好きだ。当然みたいな信頼やこちらをからかうような言葉には彼女の22年の人生が詰まっていると思う。22歳。もう大人。(デレステでは)社会人。それでいて大胆な言葉のあとなどに滲ませる照れには少女のように無邪気なかわいらしさが含まれている。好きだ。彼女は基本的に素直で、向けてくれる言葉と感情は全部本物だ。少なくとも私はそのように信じている。

ところで、ゲーム内のプロデューサーとは誰だろうか。多分私だと思う。でも私は日常的にスーツを着てない。私はこんなに背が高くない。できた人間じゃない。彼女の目に映っている「プロデューサー」は私のアバターで、彼女は素で私に話しかけてくれているのに、その彼女を好きな私の感情はアバターから少しも滲ませることはできない。あんなに本物で接してくれる彼女に私は本物で応えられない。

普段劇場でのPについては脳内補正でなんとかしている。発言だって並木芽衣子に関するコミュでそんな事言わないよと思ったことは(少なくとも自分は)ないし、遊ぶ分に支障はない。恵まれていると思う。

それでも気になってしまうのは、彼女が私に好意を向けてくれるから。ゲーム内のプロデューサーの性別が明言されたことは(多分)ないし、彼女が異性愛者だと明言されたこともない(と思う)。好意を向ける先が男性プロデューサーだけだなんて誰も言ってない。私が女であることでさみしいと思うのは、数が多い方に当てはまるのだろうという勝手な憶測で勝手に傷ついているだけだ。私が男でも女でも、それ以外や性別の概念がない存在であっても、彼女は変わらず好意を向けてくれるかもしれない。その可能性は高いと思う。高いといいな。

……でも、プロデューサーの外見は私じゃない。彼女がどんなに分け隔てなくても、見えるもの触れられるもの彼女に届いたものだけが全てだ(そうでなければ私などに全幅の信頼を寄せてくれるはずがないため)。アバターに対応した反応を返してくれているであろう彼女が、「私」に対しても一般的に男女が二人でツインルームに泊まる際のあれこれを前提とした無邪気なからかいや照れを向けてくれるかどうかは……。もっと時が経って、性別などを無視して「二人でツインルーム」自体がそういう雰囲気を含む、あるいは含まなくなればあるかもしれない。でも今はそうじゃない。別にそうなってほしいわけでもない。

彼女が素であればあるほど、私は彼女を裏切っている。なりきれてないとも言う。好きだと言えば全てが許されるわけもない。ないのに、彼女に罪のないことで許されたい許されたいとうだうだ言っている。ものすごく罪深い。

しかし、並木芽衣子は太陽なので、そういうどうしようもない状態でぐずっている私に手を差し伸べてくれる。ゆるしをくれる。私は上記のような感情と共に「並木芽衣子の人生を奪っている」という無意味な罪悪感も抱いている(ここでは触れないでおく)が、それも彼女は拭い去ってくれる。アイドルでよかったと、プロデューサーとなら大丈夫だと言ってくれる。私はそれを聞くたびに許された気になって、安心してはしばらく後にいやそうは言っても……などと言い出し、また彼女の発言に慰められる。不毛だ。並木芽衣子が実在してほしいと心から祈っているくせに、こういう時には「実在だったらとっくに愛想尽かされてるからよかった」などと考えている。

改めて文字にすると本当にどうしようもない。彼女を好きになったから……と言うと彼女のせいみたいになるので私が元々こうだということにする。多分あってる。

ああ、並木芽衣子が実在してほしい。そしてアバターじゃない私を見て、ほんとうを知ったようにして、今までの全てを私のせいにして壊してほしい。そして何事もなく私じゃないアバターだったプロデューサーと歩いて。あなたの信じるものはそこにあった事にして。どうしようもない私を繰り返し繰り返し救えたみたいに、世界の隅の隅まで光を届けて本当の太陽になるまでアイドルやめないで。

破滅願望の人の戯言になっちゃった。こんなこと起こらないから言えるんだよね。健全なプロデュース活動のためにたまに吐かせてね。ごめんね。好きです。好きで全部許される訳じゃないのにね……。


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