見出し画像

建学の精神と現代社会

陽気ぐらしって?

本学の建学の精神は「陽気ぐらし世界建設に寄与する人材を養成する」ことです。

この「陽気ぐらし」という言葉は普通の日本語ではなく、天理教の教えの中にある言葉です。

では「陽気ぐらし」とは、どのような世界でしょうか。私は「陽気ぐらし」とは、一言で言えば「苦労はあるが、不幸ではない世界」だと思います。

でも、苦労だが不幸ではない…。そんなことあるのでしょうか。

あります。例えば子育てです。ご両親に一度聞いてみてください。子育ては苦労の連続です。しかし、それを不幸だと思っている親はいません。

また、会社を起すこと、あるいは学業に打ち込むことも同じかもしれません。すべて苦労はありますが、喜びの苦労です。

「陽気ぐらし」とは、世界中の人間が、苦労はあろうとも、生きがいに溢れ、助け合いつつ心勇んで毎日を送ることのできる世界ではないかと思います。

創設者ってどんな人?

さて、ここで本学の創設者のことを見ていきましょう。中山正善(なかやましょうぜん)という方です。

この方は天理教の二代真柱(真柱とは天理教の統理者)です。創設者は、その陽気ぐらし世界の実現に向かって様々なことを整備されました。

まず、1925(大正14)年にこの天理大学を設立されました。当時の名称は「天理外国語学校」です。創設者は当時20歳で、東京大学に入学される直前でした(当時大学入学は20歳でした)。

ちなみにその頃、まだ日本に「天理市」という町は存在していませんでした。天理市の誕生は、それから30年ほど後になります。つまり、天理大学とは、天理市にある大学という意味では決してありません。

創設者の業績

次に、創設者の主な業績を見てみましょう。まず、今言った天理大学(当時の天理外国語学校)の設立↓↓↓。

2020建学の精神1_03

2020建学の精神1_04

次に天理大学付属天理図書館を設立されました↑↑↑。現在ここには国宝6点、重要文化財86点が収蔵されています。

そして、天理大学付属天理参考館や、天理よろづ相談所病院の設立などがあります↓↓↓。

2020建学の精神1_05


2020建学の精神1_06

天理スポーツの発展

2020建学の精神1_07

また、創設者は、スポーツの発展に大変力を注がれました。柔道、野球、ラグビーなどのスポーツを奨励されました。

ご自身、柔道九段であられました。今なお、本学や天理高校はこれらのスポーツの強豪校として知られていますが、その源流は創設者にあります。

加えて東京には、東京スイミングセンターを設立されました↓↓↓。このプールは、オリンピックで2連勝した北島康介選手の出身プールとして大変有名です。

2020建学の精神1_08

天理大学が創設された頃

さて、本学は当時の社会にあって2つの点で画期的でありました。

男女共学制を取り入れたこと。

朝鮮語学科を設置したこと。

どちらも、当時の文部省から猛反対を受けました。まだまだ男女は別々、そして男尊女卑が幅を利かせていた時代でもありました。

しかし、創設者には、男女共学にして夫婦で世界へ飛び出して行ってもらいたいという信念があったのです。多くの人が驚いたと思います。

それでは、当時の政府は、なぜ朝鮮語学科の設置を反対をしたのでしょうか。

当時は日韓併合の時代です。日本は朝鮮半島を領有していました。したがって、政府の考え方では韓国は外国ではありません。そこで、政府は朝鮮語は外国語ではなく、言わば、秋田弁、大阪弁と言うのと同様、朝鮮弁だと主張したのです。今から思えば、本当におかしなことです。

しかし、創設者は、世界の人と友情、交流を結ぶべきとの考えであり、そのためにはまず近き国のことから理解するべきと考えたのです。

反対する文部省を納得させるために、苦肉の策として規約に「当面の間、朝鮮語部を設置する」と書き込み、かろうじて認可されました。ちなみに、本学の朝鮮語学科は、私立では我が国最古を誇ります。

天理参考館・天理図書館の役割

さきほど少し紹介した天理参考館、天理図書館の設立も、陽気ぐらし世界建設への手立ての一つです。

天理参考館は、当時布教師が自分の行く国の文化、文明を天理にいながら勉強できるようにという配慮からでありました↓↓↓。

2020建学の精神1_09

2020建学の精神1_10

また、図書館に多くの文献を集められたのは、外国の人と交わるためには、まず日本人なら日本のことを知らねばならないと考えたからだと思います。

つまり日本の歴史、文化を知ることが、外国の人と交わることに繋がるのです。言い換えれば縦の探求が、横の広がりになるということです。

創設者は、こうして真の世界平和、言い換えれば陽気ぐらしを実現していくのだという一つの哲学を実現していかれたのです。

                                                                                   天理大学学長 永尾 教昭

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?