妻がガンになりまして⑤

「ほら見て」と髪の毛をかき上げては抜毛をティッシュに集め
「また生えてくるねんけど」と気丈に振る舞ってはため息をつく。

「毛なくなりましたわ！ワハハ！」と割り切れるようなタイプでもないので日々凹みまくってます。

夫の私にもその全貌は見られたくないようで寝る時でも黒い網ネットをかぶっていまして、遠目から見たら黒沢年雄です。

正直ツンツルテンな頭を見たからって私は何も変わらんのですけど
「激しくも薄くもリアクションするから嫌！無でいてくれるなら外す」とのことらしく
無理難題がすぎるので、これ以上は深追いしないようにしています。

時折激しい貧血と目眩に襲われることがあったり、白血球減少による免疫力低下で色んな感染症とか要注意ですけど、風邪もコロナもかかる時はかかりますからできる限りの予防はしつつ極力平常運転を心がけています。

話は変わりまして

お隣さんの95歳で散歩にも一眼カメラを持参するおじいさんに「こっちおいで」と手招きで呼び止められ「髪の毛短くして可愛いね」と写真を撮影してもらったようです。

元大学教授で近所の散歩にもパリッとしたYシャツに紐ネクタイをしています。そのジェントルな行動に、妻はとても喜んでいました。

二軒お隣さんの散髪屋を営む70代のご夫婦はふとガラス越しに見かけた妻の痩せた体を心配して、病気のことを打ち明けたら翌日メッセージカードと一緒に自宅に咲いている「朝顔」を持ってきてくれたようです。

妻はとても喜んで「朝顔」をトイレに飾っています。

どうやらしんどくて体が倒れそうになりながらも用を足すために入ったトイレで少し元気が出るそうです。

つづく

紫朝顔の花言葉は「冷静」「平常」