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カタール旅行その1 出発(〜11/21)


昨年11月、カタールワールドカップを1人で現地観戦していた。
1人での海外旅行なんて初めてだし、ワールドカップなんて一生に何度もある事じゃないだろうから、起きた事、思った事を全て書いておこうと思ってメモ帳を持って行った。

結果、馬鹿みたいにメモの量がかさんでしまった。
1人で行くと自分と話す事が多すぎる。まとめるのに半年かかった。
半年かかったけど書きたい事だったので、書けて嬉しい。

◇行くぞ!

2022年夏頃、友人が仕事でカタールワールドカップの現地取材をすることを聞かされた。
かなり驚いて心の底から羨ましいと思ったけれど、話を聞いていくうちに、これは個人で旅行として行ける話だと思うようになってきた。

個人的に今年は会社で勤続年数が貯まったこともあり、長期休暇を1回多く取ることが出来る年だった。
開催期間は11月末。仕事柄、比較的繁忙度は低い。
恐る恐るチケットサイトを見てみると、手の届く価格でチケットが取れそうだった。

しばらくは行きたいな〜とぼんやりしていたのだが、突如9月中旬にえいや!とチケットを取ってしまって、そのまま飛行機も予約をした。
円高と燃料高の影響は素晴らしく、飛行機代は往復で30万円弱。この時点でもうお金のことは目をつぶることにした。

どうやらチケットを取るだけではカタールには行けないらしく、入国に必要なHAYYAカードの申請、FIFAを通した宿の予約、スタジアム内で唯一の決済方法であるVISAカードの発行、ワクチン接種証明書の発行等の事務手続きを、かなりじたばたしながらこなしていく日々が続く。

1個1個手続きをこなすと、また新たな課題が(英語で!)出現する。
何しろ初めての一人での海外旅行で、この手続きが現地でどのように活きてくるのかがわからず、ペンディングの危機感が全然つかめない。
宿泊先の支払いが完了したバウチャーがpdfで届いても、これが何を保証してくれるのかいまいちわからず、最後まで実感は湧かずじまいだった。

とりあえず、行ってみようと思った。


何せ不確定要素の多い旅行だったので本当に行けるのか半信半疑の時期が長く、手続きを着々と進めながらも、職場や友人にもほとんどカタール行きを告げずに過ごしていた。
休みを取る直前に、「実はこの休暇はカタールに行く為の休暇なんです」と職場やお客さんに理由を告げると、かなり驚かれたのちに「誰と行くの」と必ず聞かれた。
「ひとりです」と答えると、「まじか、生きて帰ってきてね」と一様に言われた。

趣味は1人で実行するものと言う独身根性が染みついていたので、誰かを誘っていくという選択肢がそもそも無かった。
今まで別に違和感もなかったけれど、確かに僕は来週、一人で中東に行くのだと再認識した。
英語も出来ないし、1人で旅行もしたことが無いのに!

「まじか、生きて帰ってきます」

まるでその間の仕事より、僕が無事に帰ってくる方が大事でしょうと念押しするように、生きて帰ってきますねと繰り返しながら仕事を終えた。

◇出発当日

出発便は22:50発の飛行機なのでのんびりしても良かったのだけど、落ち着かずに早起きしてしまったので出発までかなり時間があった。
この日までは日本にいますよと伝えていたので、何本か仕事の電話がかかってきた。一通り返事をしてようやくパッキングに取り掛かる。

先についた友人から、現地はバリバリに夏の暑さと聞いていたけど、中東で夏の暑さを凌ぐ為にはどんな服装をしていいのか、全く想像がつかなかった。試合以外の予定を全く決めていなかったので、現地で必要なものもピンとこない。
「とりあえず石川直宏の、18番のユニフォームだけあれば他は良いんだ」とぼそぼそ言いながら、スーツケースが半分になる程度に荷物を詰めた。

会社のPCは、悩んだけど置いていくことにした。
万が一紛失した時に、どんな経緯書を書けば良いのかわからない。

ターミナルでwifiの受け取りと両替、そして現地で読む用の本を数冊買う予定だったので、早めに羽田空港に向かった。何しろ家にいても落ち着かない。
そわそわしながら乗った中央線の車内ビジョンでは、カタールの街を警備するラクダ親衛隊のニュースが流れていた。
ラクダが街を守っているのか。良い国だな。


空港内のお店やラウンジでのんびりすればいいかと思って思いっきり早く家を出たので、出発予定時刻の4時間ほど前には既に空港に着いてしまった。着いてしまったは良いものの、国際線が離着陸する第3ターミナルは殆どお店が閉まっていて、搭乗手続きも出来ないのでラウンジにも入れない。
心配していた両替はカタールリヤルが在庫切れで行えず、本屋には山ほど本が置いてあるのに、どうにも自分が読みたいと思う本がわからなくて、一冊も買えなかった。

上手くいかない。

両替のタイミングなんていくらでもあるし、読みたい本は既に幾つか家から持ってきている。旅行の大勢に影響はないのだけれど、「ことごとく上手くいかないな」と言う気持ちが心を占める。
旅行前の準備を上手に効率的にこなせないことが、誰も見ていないのに恥ずかしかった。


余った時間を使って、モスバーガーを食べながら赤もみじの解散ライブを配信で見た。どこまでも日常で、これからカタールに行く人間とは思えない。
思えば去年の春、発作的にママタルトの単独ライブを1人で観に行った事から始まって、そこから1人で色々なものをめちゃくちゃ見に行き出したんだった。
今も座・高円寺2に行くのと同じノリでカタールに行こうとしている。思えば遠くにきたもんだと、ぼんやり思った。

まだ伝えていなかった何人かの友達の顔が浮かんで、カタールに行くぜえと連絡をしてみた。
自然な程度に驚いてくれて、気持ちが少し落ち着いた。


余談だけれども、赤もみじは僕も大好きな漫才師で、とてもネタが面白い人たちなので、最後のライブで披露されたアレが「傑作」みたいに言われるのは受け入れ難い。
もっと面白い漫才を俺たちは日常的に見てきたじゃないか。
質の悪いドキュメンタリーがこの世に出た。僕が加害者の一員であることは百も承知の上で、こんなことはこれで最後になればいい。

そんなことをぐるぐる考えていたら、1時間ほど遅れて飛行機が出発した。
たしかイスタンブールでのトランジットは1時間半しかなかったと思うのだけど、大丈夫なんだろうか。

3泊のお値段は日本円で13万円弱。宿、高え〜

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