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小さな影


君との出会いは偶然に、幼い僕は素直になれず、
愛しいと感じていても、照れ隠しで遠ざけて、
無邪気なその顔と声は、日常と混ざって溶ける、


眩しい日差しより強く、けれどか弱い少女のようで、
不器用な接し方でさえ、後ろを着いてくる小さな影、

終わらぬようにと、考えもしていなかった、


さよならと言えないのは、君がまだここにいて、
帰るのを待つ当たり前に、僕が溺れているから、
おかえりが聞こえないのは、君がもういないことで、
孤独をポツリと落とす、僕の背中に忍び込む、


所詮わけもわからずに、膝の上で瞼を閉じるのは、
余計に事を図らずに済む、その顔に永く見惚れ、
さっきまでの憂いも何処か、遠くへと放ってしまって

気付かぬうちにずっと、僕を倒れないように、


さよならと言えないのは、君がまだここにいて、
背筋の曲がった僕の後ろを、その声で奮わせて、
おかえりが聞こえないのは、君がもういないことで、
別にわかっているけど、それはそうだけど、


冷たい身体を触る間は無く、毎日の歯車は止まらず、
ただ一枚の写真でしか、眠る姿を見送れなかった、
目の前で言えなかった、


さよならと言えないから、君をまだここにいさせて、
帰るのを待つ当たり前が、当たり前じゃ無くなっても、
おかえりを聞きたいから、無邪気なその大きな影に、
また会いに行くね。



おやすみなさい。

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