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佐賀記念と焼きもろこし。

今日は俺の産まれ故郷での『佐賀記念』が開催された。

まだ俺が幼い頃、親父に「明日は2人で動物園に行こう」と言われキリンさんが大好きだった俺はわくわくしてなかなか寝付けなかった。

そして翌日。動物園に到着したはずがどこを探しても『馬』しかいない。

親父にそう言うと、「今日はキリンさん休みったい」との衝撃発言。

キリンさん休み。キリンさん休み。キリンさん休み。

大好きなキリンさんに逢えない悲しみで思考停止になり只只べそをかいていた。

そうしてクズっていると「男がいつまでもぐずぐずするな!けど母ちゃんにはキリンさん居ったって言うとぞ!」と怒鳴られた。

幼心に何か嫌な感じがしたのを覚えている。だが子どもなのでそんな大人の事情なんて理解できる訳もなく、ずっとぐずっていた。すると親父がしかたなく焼きもろこしを買ってくれた。

それでようやく泣き止んだ俺を親父は肩車をして駄目押しをする。「ほら!お馬さんが沢山走っとるばい!」

幼い俺はころっとキリンさんの事なんて忘れてしまった。香ばしい『焼きもろこし』と勇壮に走る『馬群』に心を奪われたのだ。

遠くの方から砂を舞いあげ、ドドドと馬蹄を響かせ近ずいてくるたくさんの馬と騎手の迫力に圧倒されどくどくどくと心臓が高鳴ったのを覚えている。

と次の瞬間『バシッ』とち○こに衝撃が!

「あんたなんばしよっとね!」と母ちゃんの声。

母ちゃんは親父の企みなどお見通しで競馬場まで先まわりしていたのだろう。その後の修羅場はあまりにもセンシティブなので書く事は出来ないが、あの出来事と親父の肩の上から見た光景と焼きもろこしの味は今でも忘れられない。

目の前で初めて見る大きな動物が全力で走る。

鞍上で躍動する騎手。

そして舞い上がった砂が太陽に照らされその瞬間をきらきら彩る。

今思えば『あの日』はきっと『佐賀記念』の日だったんじゃないかと思う。

フェブラリーSまで軍資金を貯めようと思っていたが、買わずにはいられなかった。

結果は『馬跳ビ我ハゼル』

これは親父から俺が受け継いだ変えようのない『血』なんだな。

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