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汝、美学に死すべし。

競馬の予想をする時に一番厄介なのが「好きな」馬と騎手だ。

勝てそうになくても気になって買いたくなるので出来れば出ないで貰いたいがそうはいかない。

ならば他のレースを買えばいいが好きになるのは過去の成功体験があるからで「もう一度」あるかもという甘い誘惑に負け、それでついつい買ってしまう。

んでレースで彼等が負けたとする。やっぱ駄目だったかと後悔するが「好き」なのでしょうがない、よく頑張った、と納得してしまう心中心理が負ける要因。

しょうがないと言っているようではしょうがないのであってあっさり切り捨てる勇気を持てれば良い結果も出るだろう。

粘着質は運にも女にも嫌われるしよし、と誰かが言っていた。

この間の阪神大賞典(G2)もそうだった。

この日の阪神競馬場は小雨だったので逃げ残りを期待した。探すと逃げ馬は他にもいたがサイモンラムセス以外バスっと切り捨てた。理由は簡単「好き」だから。

このラムちゃんと小牧太騎手には何度か勝たせてもらったからだ。

さあ、レーススタート。ガッチャン。ドドドド。その直後から「ハナ」を主張するサイモンラムセスと小牧。

ぐいぐい追う。もうゴール前かっていうくらい激しく追う。小牧は前を見ずラムちゃんの首に顔をくっつける寸前、あかんスピード乗らんらしい。

すると、その内側からロードヴァンドールと横山典弘騎手。

こちらは難なくぱっかぱっかとラムちゃんに並んで来た。アウチ。

しかしどうしても先頭が取りたいらしい小牧は必死に体を折り曲げぐいぐいやっている。もう前なんて見ていない。わっせわっせ。結局最初のコーナーまでずっと追っていく。アウチ。

そんなに行きたいん?ならばと横典さん、ちょっと退り余裕のスリップストリーム。アウチ。

道中は一応、タテ長になるもラムちゃん後続をそんなに離せず、後ろには横典さんがぴたりと張り付いていて完全アウチ。

①だったか……頭の中ですっとドーパミンが引き、別のダウン系脳内物質が効いてくる。

そしてラムちゃんとうとう2周目の向こう正面で力尽きずるずると後退。レースから静かにふ・え・い・ど・あ・う・ち。

やっぱり距離が長すぎたんか。

ん〜でもよく頑張った!ラムちゃんよしよお〜し。

と、そんな事は言ってられない。金を賭けとるんじゃいこっちは。もちっと踏ん張らんかい。小牧も飛ばしすぎじゃい。

なんて怒りながらも、武やデムーロがぶっ飛んだ時ほどの怒りは出てこない。

ちょうどほれ、あれに似ている。晩酌中に飼い猫がテーブルの上からこっそり鳥の唐揚げを盗もうとしたとする。だが失敗して皿ごとひっくり返したとする。

そんな時、初めはコラっと本気で怒るのだが愛猫の、はっ、やっちまった、怒られる、ごめんにゃ〜ん。とラブリーな反省顔を見るとする。

すると怒りは秒で宇宙の彼方へ飛んでいき、んも〜、どちたの〜?食べたかったんか〜?よちよち〜い、とキモい猫撫で声を発し、唐揚げを拾って食べやすくちぎってあげ、それにがっつく愛猫をただにたにた眺めているようなものだ。

だからムカつくのは一瞬で、またラムちゃん小牧コンビが出ると買ってまうだろう。

いやいやいかん、こんなんじゃいけん。

目標は競馬で毎週100くらい勝てる漢になって、んでドバイに行って、なんやらデカい高級ホテルのスイートに住んで高級な酒やら肉やら魚やらをたくさんの美女達ときゃっきゃ言いながらついばむんじゃ。

そしてその高級な様子を写真に撮ってInstagramに載せて降級な人々にイイネを沢山おして貰うのだ。

挙句にTwitterで人生成功の秘訣とか格言めいた事を信者達に月面から知ったふうに呟く、それが今の夢。

いや、やっぱりやめとこう。そんなん想像するだけでマジでゲボ吐きそうになる。

ただ勝てばいいってもんじゃない。面白くない。勝負師にはかっこいい勝ち方ってもんがある。

古い映画で「ティンカップ」てのがあってそのラストシーンが痺れるほどかっこいい。

主演はアメリカの良心と讃えられたケビン・コスナー。

彼が演じるのは飲んだくれのゴルファー。
かつては将来を期待されていたが今はしがない借金まみれのレッスンコーチ。ところが恋人を得る為と借金の返済の為に一念発起しツアーに参加する。

彼は持ち前の才能を発揮する。トリッキーなテクニカルショットや豪快な攻めのゴルフでミラクルを繰り返し、最終日の最終ホールまで2位に大差を付けてトップに立ち、その魅せるゴルフでマスコミやファンをざわつかせる。

そして最終パー5、刻んで行けば余裕の優勝。そのセカンドショット。初日からこだわっていた川越えのツーオンを狙う。が外れウォーターハザード。まあ、周りも笑って次は刻んでいけと
言う。

だが彼はこだわった。勝負の締めくくり方に。彼の美学、無難にではなく強気で攻めての勝利。自分のスタイルを通し、魅せる終わり方をしたいのだ。

しかし彼はどんどん川に落としてもう後がないところまで。キャディは彼を止めるが、そんなみみっちい終わり方は好きじゃない。だったら負けた方がマシだ。と彼は刻まず、優勝は水泡。

その後も何度も川に落としては打ち直すの繰り返し。周囲の人々は顔を覆う。が、彼はもう目の前の川を越える事しか頭にない。

そして10数打目とうとう川を越えたボールはコロコロとグリーンへ向かう。待ちくたびれた観客達は大騒ぎ。更にボールはゆっくりゆっくりとカップに向かう。もうやけくそ気味で行けー!行けー!の大歓声。そして、コロコロコロン。カップイン。うわーっとスタンドが揺れ響く。

そのボールを拾い上げ彼は拳を高々と突きあげる。

まさに我が生涯に一片の悔いなしである。

めっちゃかっこいいのである。

はるか遠い遠いむかしに付き合っていた彼女に「このままじゃほんと駄目になるよ」って言われた。
今、その〇〇〇にこの言葉を送ろう「ほら、立派な屑が出来上がりました」と。
その彼女の別れ際の最後の言葉は「お前は1000回死ねばいい」。。。

勝負はやめた時が最後、まだ続けているうちは負けてはいない。

本命より穴馬。外国産馬より地方馬。ルメールより太宰。ディープよりオグリ。大谷よりデーブ大久保。やれる女よりやれない女。パーよりグー。グーよりチョキ。チョキよりパー、なんじゃらほい。

判官贔屓は生まれつきじゃけえのう。

ほじゃけえこのまま超大穴を狙い続けて、いつの日か1000万馬券を掴んで天に拳を突き上げてみせよう。おう。ら、おう。

今週はシゲル軍団が爆発する予感がするBUY、ばいーん。

to be continued🏇

次回予告「シゲル達の沈黙。」

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