●奇妙な新ルールの広がり
漢数字の扱いも、占い師の間で見解の相違があります。昭和初期から突如広まり始めた特殊なルールが、業界内で論議されるようになったのです。
たとえば、漢数字の五や六はどちらも4画ですが、五は5画(数霊は5)、六は6画(数霊は6)と見なす流派が現れたのです。
●漢数字を数意で扱うのは、画数と数意の混同だ!
この新ルールに対し、大隈博誠氏は『姓名学大全』の中で、およそ次のように異議を唱えています。
なかなか説得力のある意見に思えます。また、山口裕康氏も同様の主旨で大要、次のように指摘しています。
言われてみれば、理屈に合わないことがいろいろ出てきます。八千代さんという女性名がありますが、この場合の「八千代」は八千年(永遠)の意味ですから、数意は8000とするのが筋です。「八」と「千」をバラバラにして計算したのでは、数意が損なわれます。
了壱さんという男性名の「壱」も、「大字」と呼ばれる漢数字だそうです。漢数字は数意で画数計算せよというなら、壱は1画(数意が1)ではないでしょうか。
●天文学的計算が必要な名前
京介さんの「京」はどうか? ふつうなら8画ですが、漢数字の京というのもあります。京の数意は10の16乗なので、これを姓名判断するのは大変です。電卓で計算するにも桁数が足りません。
この場合の解釈としては、京介さんの「京」は都をイメージして付けたであろうから、8画に数えてよい、というのがあります。
確かに10の16乗をイメージして名前を付ける人は、滅多にいないかもしれません。ですが、そんなことは名づけ親に聞かなければ分からないでしょう。だいたい、名づけた人のイメージで漢字の画数(漢字に潜む数霊)が変わるというなら、とても字画数で姓名判断などできたものではありません。
蛇足ながら、数意で最強の名字はなんといっても京極さんでしょう。なにしろ、京(10の16乗)の次に、もっと数の大きい極が連なっているのです。極の数意は10の48乗ですから、京極さんを姓名判断するときの大変さは、京介さんの比ではありません。
●「漢数字は数意(実数)で」とする説は意外に新しい
もっとも、漢数字を数意(実数)で画数計算する流派では、このような難解な問題に対して、事前に手が打ってあります。数意(実数)を用いる漢数字は一から十まで、とするのです。
ただこのルールは、天文学的計算をしないで済むという意味では合理的ですが、姓名判断的な説得力に乏しいようです。
これが昔からの伝統的なルールなら、たとえ根拠があいまいでも、「まぁ、しょうがないか」ということにもなります。いつとはなしに根拠が忘れられたのだろうと、善意に解釈できますから。
ところが調べてみると、これは大正初期に現れた比較的新しいルールでした。そうなると、従来の方式を変えるからには、はっきりした理由を示すべきではないでしょうか。
なお、この新ルールについては、同業者の根本円通氏による痛烈な批判があるので、あわせて参照下さい。[注1-2]