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Q:漢数字の画数(数霊)が実数なのはなぜ?

A:漢数字の八が2画では国民的英雄の名前が「大凶」になるので、ある占い師が考えた苦肉の策が「漢数字の画数は実数」です。これが後の流派に広まったのです。

●漢数字を実数で画数計算する占い師

字画数で吉凶判断する方法は明治中期に作られました。明治末期から大正初期にかけて第一次姓名判断ブームが起こると、大勢の占い師たちが競うように占い本を出版したのです。

ちょうどその頃、このテーマの発端となった『命名真理 姓名判断』(林充胤著、大正2年)が出版されました。この本には、漢数字の画数について、「一から十の数は実数で見ることが多い。八は2画だが、8画と数える」と書いてあります。[*1]

そして著者の林充胤氏は、当時の国民的英雄である8135810の姓名判断を、姓名の画数合計が44(8+13+5+8+10=44)になるとして、「44は不世出の英傑」と高評価したのです。

●林氏の新説を疑った占い師

この奇妙な説に疑いを持った同業者がいました。『姓名学真髄』を著した根本円通氏です。「何だって? 八が8画? インチキのにおいがプンプンするな!」そこで根本氏はこう考えました。

これはたぶん、従来の姓名判断がどれも38画を最大凶としているので、海軍指揮官として日露戦争の勝利に貢献した、東郷元帥の姓名を38画とするわけにはいかなかったからだろう。

しかし、その同じ書で、大隈重信の幼名 2410を16画としているじゃないか。八を2画と数えたことは明らかだ。

『姓名学真髄』(根本円通著) [*2]

なるほど、八を2画にすると、8135210の画数合計は38になります。38が最大凶かどうかは疑問ですが、当時、そう信じられていたとすれば、確かにまずいですね。

●根本氏の追求に、苦しい言い訳で逃げた林氏

根本氏はさっそく林氏に問合わせました。「東郷平八郎の八は8画で、大隈重信の幼名 八太郎の八が2画なのは、年齢の違い等によるのか」と。

返答に窮した林氏は、苦し紛れの言い訳でその場をしのぎました。「今は新聞・雑誌の原稿に追われて忙しいので、少し時間ができたらご返事します。」

しかし、それから4ヶ月が過ぎても、依然いぜんとして林氏からの返事はありません。根本氏は「おそらく、永久に回答は来ないだろう」と書いています。そして、次のようにとどめしたのです。

林氏は昭和4年1月より2月中旬にかけて、報知新聞に『財界名士の姓名判断』という記事を掲げ、三井八郎右衛門48画、川崎八右衛門45画、大倉喜八郎37画、大倉喜七郎37画 ・・・ と記しているが、八も七も2画に数えたことは明らかである。

これを東郷元帥の八を8画としたのに照らして、いかがなものか。

『姓名学真髄』(根本円通著) [*2]

●現代も生き続ける「漢数字の画数(数霊)は実数」との説

『命名真理 姓名判断』(林充胤著)の出版から十数年間、この新説を支持する占い師は現れませんでした。

昭和に入って、これに着目したのが熊﨑健翁氏です。彼が熊﨑式姓名学に取り入れたことで、他の熊﨑式ルールとともに広まっていきました。

その後も同業者たちから、「漢数字の八を8画とするのは、画数と数意を混同している」など、さまざまな批判がありましたが、これといった説明もないまま現在に至っています。[注]

姓名判断の利用者からすると、気になるのは、この方法が当たるかどうかです。が、残念ながら、これを検証したデータは存在しません。当たるとは言えないが、当たらないとも言えないのです。

==========<参考文献>==========
[*1] 『命名真理 姓名判断』(林充胤著、侑運堂、大正2年〔1913年〕)
[*2] 『姓名学真髄』(根本円通著、日本霊理学会、昭和4年〔1929年〕)

===========<注記>==========
[注] 漢数字の数霊
 関連記事はこちら ⇒『漢字の画数問題(6):漢数字


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