使いかけの洗剤
実家を手放すことになった
父が亡くなり、まだ3ヶ月。
四十九日法要もこの間済ませたばかり
寂しさのせいなのか 母の日認知が前にも増して
強くなってきたようだった。
「○○疲れてないか? 今までホントに悪かった 後は全部おれが引き受けるから…」と
適当な労いの言葉と共に 兄が母の全財産が入る通帳やら 印鑑 今日迄のケアマネさんとのやり取りやら
医療費に関する書類など、悩んで苦しんだ証の入った袋を全部かっさらって行った。
本来 兄のやるべき仕事なのだ
なにも私がもじゃもじゃ 御託を並べる権利はない
「これで○○は楽になるじゃろ?」
とんでもない 不安しかない
兄の妻の 変なところは 分かっている
半月経った頃 「お母ちゃんを施設に預けるよ。ホームも見つかった再来月を目処に 入所させるよ」
父の葬儀の時に、兄弟で財産分与放棄することは 決めていた。ご主人を病で亡くしたばかりの姉も
賛成した。家を手放し、そのお金と年金とで 母は
施設での生活になる。
母が自宅で生活するの最後の日
餃子と シラス丼とサラダ巻きの 変な取り合わせで、
最後の晩餐をした。娘達も連れて 楽しく食べて、
来れない予定だったパパも来てくれた。
きょうは母がすごくしっかりしている
「家にある物 使えるもの 持って帰って。全部捨てられちゃうみたいじゃから」
明るいけど、油断したら泣いてしまう。
その日は全部持ち出せ無かった。
母がホームへ 到着したと、とてもキレイなところで、自分の部屋も良い感じです と
珍しく 母からLINEが届いた。
良かった、少しほっとした
実家に行き、よもぎを迎えに行った
彼女はずっと 文句を言っていた
パパに説得を頼み、わたしは 彼女のトイレや
気に入りの布団 母の匂いがついてる
タオルケットやらを
車に乗せる準備の合間、洗面所に大量に買付られた 洗剤にめが止まる。「!!」
老人ひとりには 使い切れない量。石鹸も。
台所では よもぎのご飯が沢山買い込んである。
「!! !!」サラダ油も 角砂糖も 全部
かっさらう事にした
荷物を積み終わり、
やっぱり納得してないよもぎを
母のひざ掛けで包み 抱き上げて
彼女の軽さに驚きつつゲージに入って頂く。
あんなに文句言ってたのに すんなり入ってくれる
「さぁ 美人さん 我が家に行きましょう」
「にゃ〜(やだ)」
道中はその繰り返し。
パパが 「エレベーターに乗る時は 鳴いてはだめたよ」「にゃー(やだ)」
でも 見事に彼女はこの約束をはたしてくれた。
次の朝、洗濯では 母の使いかけの洗剤をつかい、
コーヒーや紅茶には 角砂糖を入れた
スプーンでかき混ぜて 溶かした
溶けて 無くなった
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