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「どうやるか」ではなく「誰とやるか」(ダン・サリヴァン/ベンジャミン・ハーディー)を読んで


本の特徴と、読み始めたいきさつ

本を開くと袖に書かれているのは
”いま求められているのは
「任せる勇気」と「頼られる力」”

「どうやるか」ではなく「誰とやるか」が大切と説く、非常にユニークな一冊
起業の先輩で、人を巻き込む力を私が尊敬している社長さんにお薦めの本をたずねて選らんでもらいました。

サラリーマンをしながらの起業を選んだ私が
社員を必要としないカタチで外注ですべてを回しているときに
「それだと時間がかかる」「大きなことを成し遂げるには、自分には持っていないものを持っている仲間が必要」
と何人かの方にアドバイスを受けるものの
それが本当に自分が求めているものか迷っているのだと話したところ
これ以上にないほど、最適な一冊を紹介してもらえたのです

裏表紙には、本書のジャンルが「自己啓発」「リーダーシップ」と位置付けられていますが、
人生についての捉え方、社会とのかかわり方とその意味、にまで深く触れられているように感じます
読んだあとには、
「誰と(WHO)」の問いが自然と生まれるような
そんな力を秘めている書籍です

構成

4部構成の本書は、
序章:この本自体が、「HOW(どうやって)」ではなく「WHO(誰と)」というコンセプトの実践により提唱者のダンから100%任されて、ベンジャミンが書くことになったのだというエピソード
からはじまり
第1部:時間の自由
第2部:お金の自由
第3部:人間関係の自由
第4部:目的の自由
と語られます

時間の自由

30代で連続起業家になったノートンが、16歳の頃、お金が欲しくてアルバイトをするつもりで父親に相談したところ、起業家の父親は働き始めることに一度は反対したものの、どうしてもお金がほしいという事情を理解して
「規格外のスイカを安く仕入れてきて、近所で売る」
という方法を教えて、ノートンは時間や物質的な資源の使い方を知り、なによりも「時間の自由」について学ぶ機会を得たというエピソード
からはじまります

どうやれば(HOW)にこだわると、(その道に長けた人であれば回避できたかもしれない)さまざまな問題に自ら直面することになり、時間を切り売り・または浪費することに終始してしまう

また、誰か(WHO)をみつけることは、かならずしも金銭的な対価を要さずに、助言や援助をしてもらえることもある、というレッスン

しかも、自分でやること、が唯一の手段ではなくなるので、目的が拡張し
結果として自己拡張(成長)、と自信につながるのだ
という

そこにつづくのは、意外にも
誰もが陥りがちな、”先延ばし”グセ の正体

これは、自分では十分にできないことを無意識に認めている知恵の表れだと洞察する著者

賢明にも、あなたの内なる天才が
「この目標はすばらしい」
「これは自分でやってしまってはダメだ」
と言っていると指摘

おそらく、前者については全く自覚することなく、後者については薄々は感じているのでしょうか(<=読んだわたしの私見)

本書では、インパクト・フィルターと呼ばれる、ビジョン共有のワークシートをつかって、
あなたの「誰か(WHO)」に共鳴してもらい
そのような才気溢れる優秀な「誰か(WHO)」は世の中に数えきれないほどいて手ぐすねを引いて待っているという!!
(たしかにそういう目で世界を見渡せばそうかもしれないですね^^)

お金の自由

この第2部を読んで受け止めて
一番、ボディーブローのように身に堪えたパンチは
「時間の自由をまだ手に入れていないのに、お金の自由を欲しがる(p.127)」というフレーズ

「私たちの文化は、自分の時間を大切にせずに、宝くじを当てたがる文化だ。(↑上記フレーズ↑がつづき)
お金の自由をたやすく手に入れようとするが、それはそもそも自由が生まれる道筋ではない。自由は、目的や投資、チームワークを通じて得られるものだ。」

のぞまれるビジョン=結果(What)を定めて、それを伝えた後に
リーダーがこだわるべきは
どうやるか(HOW)ではなく
誰と(WHO)だと
ーここで、ビジネスの例を受けて説明をしているので、主語が”リーダー”になっているが、実は、自分の人生や職業、家庭やコミュニティでの役割をふくめて、すべての人=自分自身のことを指しているとおもわれます

ビジョンを明確に伝え、
自律性がしっかりと機能する形で、人に投資をして、
結果を得ることにコミットするべきだと

また、この部の最後の章では
誰からみてもお金持ちになったとある事業オーナーが
自分でやることにこだわりすぎて、危うく生命を落としてしまうことになったエピソードを印象的に引用し

どうやる(HOW)へのこだわりの背景には
「自分が持っているものでは足りない」という観念と
「コストを避けようとする気持ち」がある
と分析

自分でやろうとすると、長期的には莫大なコストを払うことになる
という事例は、つぎの部でも登場します

人間関係の自由

この部は、ギバーであることの効用について、非常にユニークな観点を提供しています

先日、noteで「もっとも大きな成功をするのもGiver(ギバー)だし、成功しないのもGiver(ギバー)」という趣旨の興味深い記事を拝見しながら本書を読んだのですが、一見すると不思議に思えるこの現象への答えが、この部にあるのではないかと私は考えます

具体的には、
ギバー(Giver)が、ビジョンを明確に伝えて、自らコミットすればすごい成功を収める
ギバー(Giver)が(継続的にまたは大きな価値を提供できないのに)誰かに近づくことで、ギバーもテイカーもなにも意義あるものを得られない
というもの

人間関係を築くためには
まずはその関係に価値を生み出さなくてはならず
そのためには、他の人が何に関心があるかを知ること
相手の背景や目的を知ったうえで
適切な価値を提供し、(相手の)時間を浪費しないように
下調べをするように、とすら書いています

取引をベースとせずに
奉仕と成長(自己変容)に全力を傾け
うまく行っているときは、親切にする
関わってくれる人に、大きな感謝と小さな感謝をする
という、どちらかといえば東洋的とも感じられるようなススメが
じつに自然と語られます

そのうえで
ビジョンと合わない人とは
もう関わらなくてもよい、と明言
関係のない人と直接かかわらなくてよいように、緩衝(クッション)となる人やシステムを入れればよいと
将来の自分のビジョンや機会に合わない人にNOというと自信がつく
(これには私も経験があります!!)

過去や現在の自分が我慢してきた状況に、もう我慢しなくてよい
つくりたい未来に基づいて勇気ある決断をしたときに
大胆な飛躍を遂げることができる
そんな、温かい励ましのメッセージに出会えます

最後は、オープンソースでいること(と受け止めました)
徹底的にオープンで正直なコミュニケーションを心掛け
一緒に仕事をする人のためのヒーローになれるよう
彼らのために最高の仕事をしよう
と語りかけてくれます

目的の自由

1つ前の部の最終章では、
著者が、自分の不安を打ち明けられずに、危うくこの本の締め切りを守れなくなるところだったというカミングアウトを含めた
エモーショナルかつ真摯な内容なのですが
この部の最初のエピソードが、
だれか他の優秀な人の著作にまつわる失敗談と学び
であることのよい準備になっています

有能な人権派女性弁護士が、祖母の伝記を書く、というミッションで
大学教員で伝記作家、という思わぬライバル(!?)が登場することで
競争と秘匿
というマインドにとらわれるも

著者に相談することで
コラボした方がいいよ、しかも今すぐ!
と助言を得て
その必要性を素直にみとめて、実行したと
(↑そんなに素直に認められるのが、スゴイ!!優秀な人の心の柔軟性にはどんなエピソードを聞いても本当に敬服してしまいます)

競争は、創造的なイノベーションを妨げ、将来を制限してしまうのに対し
コラボレーションが、目的の自由とビジョンをたちまち拡大する
(ビジョンも目的も2人分かそれ以上になる!?)

ここまで共感できるかは
読む人が、どこまで人とのコラボレーションを求められるかという実践に支えられているようにもおもいます(事実、私自身がそうでした)

ただし、本書はそこにとどまらず
最後は、
あなた自身にとって最大の奇跡と祝福は
他の誰かをとおして舞い込む
あなたの目的と人生は、誰かによって変容し
あなたの誰か、があなたの目的になる

という
ヒーローが、指導者になる
道を示して
本書は締めくくられます。

原著の魅力(おすすめポイント)

  • 事例と理論のベストミックス(訳書の特徴でもある、魅力的なエピソードと、理論としての体系的な解説が、いずれも期待できます)

  • 名著や名言の引用が、ユニーク!(あの名言や概念が、そこで出てくるか)(もっとも効果的な引用とおもえる箇所も多数)

  • ぜひ、お手に取って読んでみてください!

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