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私立探偵ホームズ、光の問題を考える1

「そうか。君のお得意のバイオリンを弾くと弦の振動が空気を揺らして、その揺れが僕の鼓膜に伝わり、美しい音色に聞こえるというわけか」
「その通り、そして光も波である以上、そういう媒質がひつようなんだ。では光の媒質は一体何か?太陽の光は遥か彼方から地球に届く、星の光もそうだ。ということは、光の媒質は広大な宇宙満たしていることになる。」
「その媒質がまだ見つかってないなんて不思議な話だ」
「科学者たちは、その未知の媒質を<エーテル>と呼び血眼になり探してる。エーテルとは、古代ギリシャの哲学者のアリストテレスが、地上にはなくて天界のみに存在すると想像した物質のことらしい」
「ところでホームズ、地球は太陽の周囲を回っている。つまり地球は宇宙をみたすエーテルの中を進んでいるわけだ。」
ワトソンの質問に、ホームズは我が意を得たりという顔をした。
「いいところ気がついたね。もし地球がエーテルの風を受けていれば、その風圧による抵抗で地球の回転速度は、どんどん遅くなってやがて止まってしまうだろうな。でもそんな様子はない」
「さてワトソン君、光の媒質エーテルが見つからないことも光の謎のひとつだが、もっと不思議なことがあるんだ。それは光の速度に関することだ。」

「光の速度か、でも光は一瞬に届く。そもそも光の速度なんてどうやって測ったんだろう」
「いろんな方法が知られているが、フランスの科学者は、光源と鏡の間に歯車を置いた装置で光の速度を測定したそうだ。歯車の回転がゆっくりのうちは、光は歯車の葉の間を通り抜けてくる。だが回転数を上げていくと、あある時点で光は回転する歯に遮られ、反射光が戻らなくなる。この時の歯車の回転数から光の速度が計算できるんだ」
「なるほど、巧みなやり方だ。」
「現在では、光の速度はかなり正確に判明している。およそ秒速20万マイル(秒速30万キロメートル)だそうだ。」

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