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マイナス×マイナスは、プラス?

『はぁ。ついにこんな日がきたか』
受験に失敗して、滑り止めの大学で二回も留年して、就職も失敗。派遣でなんとかやっていたが失敗続きでついに派遣をきられてしまった。ベンチで缶コーヒー片手にため息をついてると
「はぁ。私って本当おっちょこちょい。また発注ミスしちゃった。仕事かえようかな」
自分と似た様な人がいるもんだなぁと思ってると
「あのー。今から飲みに行来ません?」
『…はい?本気ですか?』
「はい。私達似た者同士みたいですしね」


『結局来てしまった』
連れてこられたのは、近くの小さな居酒屋。
「自己紹介遅れましたね。私、秋元真夏って言います。あなたは、」
『〇〇って言います』
その後話してわかったが秋元さんも俺と同い年らしい。有名な大学出でて一流企業に就職したが小さなミスをよくしてしまい、周りは、ミスをせずに出世ルートを進むのを見て焦っていたとのこと。そして今日もまた同じ様にミスをしてしまったらしい。
『でも、秋元さんは、すごいじゃないですか。僕なんて、ろくな大学出てないですし、就職も出来ず、派遣ですし。まぁその派遣も今日切られたんですけど。周りには、お前は、会社を下げる疫病神だとかマイナス要員って言われてきました』
「私も似たような事言われた事あります。やっぱり、私達似た者同士みたいですね。あのもし良かったら連絡先交換しません?また一緒に飲みたいなと思いまして」
『えあっ是非。』

その後週に一度会うようになった。
話す内容は、自分がしてしまった仕事のミスを互いに励ます。僕は、あの後なんとか仕事が決まったが派遣の為またいつ切られるかわからない。
会ってから1ヶ月がたった。お互い名前で呼ぶようになった。派遣の僕は、敬語を使う事が多いけど。ある日
「このあと私の家で飲みません?」
『真夏さん、酔ってます?』
「酔ってないよ~さぁ行こう」

結局連れてこられてしまった。
「はい。お口に合うかわからないけど私が作った肉じゃがと豚汁」
『あ、ありがとうございます。いただきます』
「どう?」
『美味しいです。真夏さんって料理お上手なんですね』
「そうだよ。良いお嫁さんになりたくてね」
『良いお嫁さんになりそうですね』
「お世辞でも嬉しいよ」
『お世辞じゃないですよ。定食屋でもやったらどうですか?』
「あっ。それ良いね。〇〇君一緒にやろうよ
『な、何の冗談ですか?』
飲んでいた豚汁を吹き出しそうになった。
「冗談じゃ無いよ。〇〇君といると失敗しない気がするし。私仕事辞めようと思ってるから良い機会かなって思って」
『僕も真夏さんといると落ち着いていられます。  仕事辞めるんですか?』
「そのつもりだよ。ねぇ〇〇君。一緒にやってみない」
『…やってみましょう。僕も今月で派遣の仕事がまた終わってしまうので』
「本当!?ありがとう。料理の練習もっとしないと。〇〇君経営とか出来たりする」
『…勉強してきます』
「じゃあこれからは、ビジネスパートナーとしてよろしく」
『こちらこそよろしく』


それから数ヶ月後
僕は、派遣が切られ、真夏さんは、仕事辞めた。調度良い物件を見つけ手続きとか色々済ませ定食屋を開いた。
しかし最初は、失敗続きだった。
まず人が来ない。それでメニューの写真をSNSにあげた。すると人がちょっとずつ来るようになった。人が来すぎると二人で店をまわすのは、難しかった。
試行錯誤のすえ2ヶ月後には、常連客も生まれ、お店は、落ち着いた。調理を真夏さん、接客とその他の雑務を主に僕がやる。

お店を始めてから半年がたったある日。
閉店後
『真夏さん。その僕ビジネスパートナーの関係辞めたいです』
「えっ。じゃあこの店も閉めよっか」
『あっ、違います。その…ビジネスパートナーじゃなくて、僕の彼女になって貰えませんか?僕と付き合ってください』
『グスッ良かった。喜んで。やっと付き合えた。私もっと前から付き合いたかったんだから」
『その…関係崩すのは、あれかと色々考えまして』
「〇〇君らしいね」
『あはは』
付き合う事になり、店の近くのアパートで同棲することになった。


お店も恋も順調に進み

~数年後~
〔〇〇君しょうが焼き定食一つ〕
『はいただいま』
僕は、今一人で店をまわしている。とてもキツイ。
〔早く秋元さんの料理食べたいよ〇〇君。別に〇〇君のが不味い訳じゃないからね〕
『わかってますよ。真夏の飯を食べたいのは、僕の方ですよ』
〔そうだったな。わるいわるい〕
常連さんと話していると
「〇〇。大丈夫そう?」
『真夏!』
抱っこひもで赤ちゃんを抱いた真夏が来ていた。左手の薬指には、指輪がつけられていた。

〔結婚して、子供も生まれて幸せものだな〇〇君は〕

付き合って二年後にプローポーズして結婚して、その一年後に娘のさくらが生まれた。

『真夏とさくらの為だから全然苦じゃないよ』
「無理して体壊さないでね」

人生失敗続きだったけど今は、とても幸せだ。


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