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【年収4200万円】なぜ国会議員の給料は世界一なのか?

国会議員とは

近年、「政治とカネ」問題で、政治への不信感がますます高まっている日本。

そこで注目されたのが、国会議員の給料です。

国会議員の給料は、国民の税金から支払われていますが、彼らの給料は一体いくらなのでしょうか?

その前に、国会議員とは、どんな職業なのか、簡単に見ていきましょう。

国会議員は、国を運営していくための、「法律」を作る仕事をしています。

立法、司法、行政の三権のうち、「立法」の部分を担当しているのが、国会議員。

国会は、憲法第41条によって「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と定められています。

そこで、議員たちが提出していく、様々な新しい法律の審議を行うのが、国会議員全体の仕事です。

そんな国会議員ですが、誰でもなれるわけではありません。

議員になるには、一定の条件があります。

日本国民であること、衆議院議員は満25歳以上であること、参議院議員は、満30歳以上であること。

また、禁固刑以上の刑を執行していないなど、「被選挙権を失っていない」条件もあります。

衆議院定数465名、参議院定数245名の定数は、選挙の時に選挙権を持つ、国民の投票により選ばれます。

選挙の際に、直接名前を記入されて投票を受ける「選挙区」投票の場合と、政党の名前を記入され、政党の作成したリストの順位から、候補が当選する仕組みの「比例代表」投票の二種類の方法で、最終的に国会議員たちが決まっています。

このように、民主的に選ばれた、日本の国会議員の給料が、つい最近上がったというニュースはご存じでしょうか?

給料アップの国会議員

2024年7月1日、衆参両院は、国会議員の2023年分の「所得等報告書」を公開しました。

この「所得等報告書」によると、議員1人あたりの平均所得は、前年比374万円増の、2530万円という結果に。

コロナウイルスを踏まえて、2割削減された議員歳費が、2022年8月から満額支給に戻ったことが、平均額を押し上げる要因となり、2018年以来、5年ぶりの増加となりました。

最も所得が多かったのは、元JPモルガン証券副社長の、中西健治・衆議院議員。

JPモルガン証券関連株の売却や、配当などで、7億4679万円もの所得を得ています。

1億円を超えた議員が、前年の2人から7人に増えたことも、資料から見て取れます。

また、政党別では、自民党が2808万円と7年連続の首位。

所得上位10人中8人を自民が占めていて、1億円超も全員が自民党だ。

各党首を比較すると、岸田首相が3875万円で3年連続1位で、野党第1党の立憲民主党の、泉健太代表は、2034万円で9位でした。

さらに、2023年11月には、首相らの給与アップ法案が衆議院を通過し、それに連動する形で、国会議員のボーナスも増額しています。

政府は、首相と閣僚・副大臣・政務官の増額分を自主返納する方針ですが、法案が参院で成立することで、国会議員のボーナスも、年18万7千円上がることになります。

ちなみに、首相の給与は年間46万円上がります。

国民が、物価高・低賃金で苦しむ中、これらのニュースは、国民の怒りを買うこととなりましたが、一方の岸田首相は、日本経済について、こんなコメントを残しています。

「政府で取り組んできた賃上げや、定額減税の効果が、だんだんと出てきている。秋口に向けて、効果が明らかになっていくのにあわせて、今回の電気代・ガス代補助対策も、国民にしっかりと届けたい。酷暑が予想されており、ぜひ国民にこれらの政策を活用いただき、酷暑を乗り切っていくことが、できるようにしたい」

国会議員の給料とは

では、本題の国会議員の給料について見ていきましょう。

先ほど「2530万円」と紹介しましたが、タイトルにもあるように、議員は給与以外にも、手当てが支給されるので、実際に手にしている金額は、もっと増えます。

国会議員の給料については、「国会法及び国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」で定められています。

まずは、歳費と呼ばれる、基本的に毎月もらえる報酬は「約129万4000円」。

次の期末手当年額と呼ばれる、いわゆるボーナスは「635万円」。

ここまでが「第1の給与」とされていて、ニュースで発表されている金額は、ここで終わっています。

しかし、皆さんは「第2の給与」と呼ばれる存在をご存知でしょうか?

まずは、旧・文書通信交通滞在費月額、現・調査研究広報滞在費月額です。

これは毎月100万円支給されるのですが、領収書の公開などが不要なので、色んな用途に使用されているのが実情。

以前から、そのあり方が問題視されていましたが、領収書による精算が、全く必要ないので、完全なブラックボックスとされている報酬です。

次に、立法事務費と呼ばれるものは、月に65万円支給されます。

立法事務費とは、国会議員の立法に関する、調査研究の推進に資するため、必要な経費とされています。

これは各党の会派に配られるのですが、会派と聞くと、複数の所属議員が居るように感じますよね。

しかし、1人だとしても、政治資金規正法上の政治団体として届け出ていれば、会派として認められるので、1人で立法事務費を受け取ることも可能です。

なお、「立法事務費」には、使った方法を公開する義務はありません。

もちろん、適切に立法に関する調査研究に、使っている人もいるでしょうが、立法数、質問主意書提出数、本会議・委員会発言が少ない国会議員も、たくさんいます。

まったく活動していなくても「立法事務費」の使い道を、第三者が確認する方法はありません。

これらを合わせると、年間の給料は合計で「約4200万円」となります。

これだけではありません。

国会議員は、新幹線のグリーン車を含めたJR線は、すべて無料、航空券も月に4往復分が、無料になります。

政党からの支給、役職に応じて、黒塗りの車もあてがわれます。

さらに、秘書3人を雇用することができ、これにかかる費用も国から支給されます。

秘書給与に関する費用は、「年間2000万~3000万円」といわれています。

さらにさらに、議員会館の賃料は無料、議員宿舎には格安で居住することができます。

2014年に、賃料引き上げが為されましたが、周辺相場の「2割程度」で借りることができます。

そこには、24時間体制の警備がほどこされ、セキュリティは万全。

部屋から緊急通報のボタンを押せば、数分でスタッフが駆けつけます。

さらに、国会議員ならではの特権もあります。

国会議員は、国会会期中は原則逮捕されず、会期前に逮捕された場合は、議員側の要求によって、金銭なしで釈放される、不逮捕特権があります。

さらに、議員内での発言などに対して、責任を負わない免責特権や、国から歳費を受け取れる、歳費特権もあります。

これだけ受け取っても、政治活動には多額の出費が必要なので、政治家は政治献金を募ることになります。

企業が行う企業献金と、個人が行う個人献金に分かれますが、企業献金には、「政治家と企業の癒着につながりやすい」という問題点があります。

また、政治家個人への献金は、禁止されていることから、一政治家が1つだけ指定できる、資金管理団体や、後援会など、政治団体を通じて、献金することになります。

日本国籍を持つ、個人献金のみ可能で、一政治団体に対して、年間150万円まで可能とされています。

また、最近話題の、政治資金パーティーによる政治献金もあります。

資金管理団体には、個人献金や政治資金パーティーの収益が入り、政党支部には、政党本部や企業献金が入ることになります。

このように、各種手厚い待遇を受けて、仕事している国会議員ですが、他国の議員と比べると、その給料は高いのでしょうか?低いのでしょうか?

日本の国会議員の給料は高い?低い?

各国の議員の給料を調べた資料によると、日本はシンガポールとナイジェリアに次いで、世界第3位です。

第1位、シンガポールのリー・シェンロン首相は、年2億円弱の給料を得ていますが、これには後で紹介する、シンガポール独自のシステムが関係しています。

日本の後には、ニュージーランド、アメリカ、オーストラリア、イタリア、ドイツ、オーストリアと続いています。

3位でも十分高い数字ですが、国民の一人あたりGDPで見ると、平均給与額からの乖離は、日本が世界トップで、国民と国会議員の給料が、いかにかけ離れたものであるか、ということが分かります。

このデータから、日本の国会議員の給料は、実質・世界一であると言えるのです。

なぜ国会議員の給料は世界一なのか?

では、なぜ国会議員の給料は世界一なのでしょうか?

これには、3つの理由があるとされています。

一つ目は、満足する給料がもらえないと、議員になりたがる人がいなくなるから、というもの。

もし、国会議員という、政治に関わる人々に対する給料が少ないならば、当選するか落選するかどうかわからないような選挙に、多額の選挙資金を使って、立候補する人がいなくなる可能性があります。

選挙で立候補しようと思うと、供託金を法務局へ預ける必要があります。

選挙における供託金は、当選が目的ではない者が、無責任に立候補するのを防ぐためにある制度。

供託金の金額は、立候補する選挙によって変わりますが、例えば衆院選の小選挙区では、300万円、比例代表と重複して立候補する場合は、600万円がかかります。

また、法で定められた得票数に未到達だったり、途中で出馬を取りやめたりした場合、供託金は没収されてしまいます。

また、選挙事務所を構えるための、賃料やはがき、ポスター、チラシなどの印刷費、選挙カーの広告費などは、すべて議員の自己負担です。

選挙活動で遠方に出向いた場合は、秘書やアルバイトなどの、人員の交通費や、宿泊費も支払う必要があります。

もし国会議員の給料が低ければ、誰もお金のかかる選挙活動をしようとは思いません。

すると、選挙に出るのは、元から資金力のある、裕福な人だけとなり、裕福な人たちだけの意見を、政治に取り入れるようになるかもしれません。

そうなると、庶民の意見は、立法府に届かなくなってしまいます。

二つ目は、人件費の存在です。

政治活動を行うために、国会議員は事務所を設けますが、ここで働く秘書や事務員、アルバイトなどを合わせると、少なくとも5人、多ければ20人以上を抱えています。

国から給料が出る「公設秘書」は3人と決められているので、それ以外の人員に対しては、議員自身の収入から支払う必要があります。

人件費を、一人あたり年間300万円で計算しても、5人に払えば年間1500万円。

これにプラスして、さまざまな活動費や選挙資金まで賄うと考えると、安月給ではやってられないということです。

三つ目は、政治の腐敗を防ぐためです。

給料が少なければ、よほど清廉潔白な人でない限り、収賄や、自己への利益誘導へ走る議員が、後をたたなくなる可能性が高まります。

つまり、もし十分な収入が保証されなければ、賄賂や汚職が横行するかもしれないということ。

このような政治の腐敗を防ぐために、ある程度は、高水準の給与をもらっている状態に、しなければならないのではないか、と考えられているわけです。

シンガポールの議員報酬

では、先ほど登場した、議員報酬ランキング1位のシンガポールの給料は、なぜあんなにも高いのでしょうか?

シンガポールでは、実は議員報酬は、固定給と変動給の合計で決まっていて、特にこの変動給がポイントになります。

例えば、大臣の変動給に含まれる項目には、「国家ボーナス」「年次変動給」「業績給」がある。

「国家ボーナス」は、実質所得成長率の中央値・実質所得の最低20%の成長率・失業率・実質国内総生産の成長率に基づいて、計算されます。

また、「年次変動給」は、国民の所得上位1,000人の、所得の中央値の60%を基準として、計算されます。

なぜ、所得上位者の所得と連動するかというと、「公共サービスへの情熱だけでは、国をうまく運営するのに、充分ではない」という考えがあるからです。

最後に、「業績給」は、一般企業で導入されている、変動給の仕組みと似ています。

このように、変動給は、国の経済指標などと、連動する仕組みになっているのが、シンガポールの面白い点。

現在、シンガポールのリー・シェンロン首相は、年2億円弱という高給を得ているので、国全体の経済状況が非常に良い、ということが読み取れます。

なぜ議員報酬は削減されないのか?

国民の中でよくある意見は、「議員の給料を減らせ」というものですよね。

また、「そもそも議員定数を減らせ」という意見も、昔からよく上がっていますが、一向にそのような方向には進んでいません。

なぜなのでしょうか?

国会議員など政治家は、現行の政治システムによって、当選しています。

なので、自らが当選した政治システムを、わざわざ変更しようとは思わないのです。

なぜなら、変更することで、次の当選が難しくなる可能性があるからです。

たとえば、「10増10減」は、1票の格差を是正するためのシステムです。

1票の格差を2倍未満に抑えるため、小選挙区の定数を、東京、千葉など大都市で10増やし、宮城、福島、新潟など地方で、1ずつ減らすのが「10増10減」。

この案は、与党を中心に反発が強く、自民党議員が見直しを含む、衆議院の選挙制度改革の議論を始めるように茂木敏充幹事長に申し入れをするなど、国会内で揉める原因となりました。

本来は、与党が中心となり決定したルールを、変更することは、できないはずです。

このように、政治家は、自らが当選に有利になることでないかぎり、前向きには議論しません。

政治システムをかえる法案を、提出することもありません。

当然のことながら、不利になるシステムに変更されることはありません。

そもそも、本腰をいれて実現させようなどと、思っていないからです。

そして、最終的に、総理大臣になるためには、政党の中で候補者に選ばれなくてはなりません。

そのためには、議員から「総理大臣にふさわしい」と思われなければいけないのです。

もし、その候補者が「議員数を半減しよう」「議員報酬を減らそう」などの方針を打ち出していたら、推薦人はおろか、党内総裁選で選ばれることなどありません。

国会議員がいやがる政策を出せば、党内でつぶされてしまうでしょう。

だから、いつまでも堂々巡りになるというわけです。

今回は、なぜ国会議員の給料は世界一なのかということについて、解説してきました。

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