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元よしもと・ホリプロ芸人 松稔の芸能裏話5過酷な弟子生活が始まった

元よしもと・ホリプロ芸人 松稔の芸能裏話5過酷な弟子生活が始まった

先の見えないトンネル・・・

僕の場合二人分の物を持っているからカバンとポケットはいつも満杯。

H師匠のタバコはマルボロ、G師匠はショートホープ、H師は先にお金をくれるから買置
きが出来る。

G師匠はいつも後払い、金の無い僕に先に買える訳がないのにタバコを持って無かったら、『お前はHの事ばかりやって、俺の事は何も出来んのか』とよく怒られた。

先にお金さえ貰っておけばいつでも持っていられるのに・・・でも一切言い分けは出来なかった。

それはこの世界、師匠の言葉は絶対!赤の物も師匠が黒と云えば黒になるんです。

最初はこの矛盾に腹が立ったが、今思えば相手の言葉にすぐ反撃すれば喧嘩になるが、よく考えれば腹の虫も収まる。一旦自分の心に収めてからゆっくり考えると云う事を学んだ。

当時55kgあった体重もわずか一ヶ月で45kgになった。
これは食べられなかったからじゃなく、僕の場合家から通っていたから食べる事に困って
はいない、精神的に圧迫されると人間は痩せられるものだなと思った。

たかの友梨もびっくりする位やせた。しょうもないダイエットするなら弟子
入りすれば必ず痩せられます。

それは肉体的にも精神的にもきつい、師匠は弟子の事を人間と思っていない、奴隷か虫けらのようにしか扱ってくれない。

これも今思えばハングリー精神、根性を養う試練だったのかもしれません。
どの師匠も同じ経験をして、有名になっているのだから仕方ない。

当時はいじめとしか思えなかった。
一人で二人の師匠の荷物、スーツ、営業になるとギターにテナーサックスを持って行かなければならない。

肩から僕の荷物、片手にスーツにギターもう片手にテナーサックス、全部で10kg
位を持って走り回る。

電車に乗る時はその荷物を持ってそれも師匠より先に行って切符を買う(師匠の荷物は地べた置けないので大変だった)。

改札を通る時は切符を口に加えて通る。
その上、師匠の席まで確保しなくてはいけない。

電車に乗っても師匠は寝るが、弟子は一切寝てはいけない。
もし寝たりしたらドツかれる。
でも一時間以上の電車移動はどうしても眠たくなる。

師匠二人が寝たらその後、寝ようかなと思う・・・
師匠は意地悪のように交代で寝る。まるで僕を監視しているようだ。

目的の駅に着けばタクシー乗り場まで一目散に走りタクシーを確保する。
僕は前に座り師匠は後ろに座る。

初めての仕事先でも場所を把握して、運転手に教える為だ。

地理をよく知っている人だといいが『すみません分からないのですが』と云われた大変!

目的地に時間内に行けなかったらすべて僕のせいになる。

そんな時「なんで知らんねん、お前プロやろそれ位知っとけ」と心の中で思いっきりツッこんでいた。

弟子やってると表だって云えない事が多いから、心の中では色んな事にツッコむようになって、良いツッコミの勉強になった。

芸の事やネタの事は一切教えてくれない、芸は盗むものとよく云われた。

その通りで漫才やコントは伝承芸じゃないので、自分に合う芸風を見つける

事が一番大事だなと思った。

そして弟子をやって良かった事は、困った時に対処の仕方など最悪の状態からに追い込まれているので、怖いものは無くなった。

そして耐えると云う事を覚えた。その上吉本の芸人さんの舞台を生で、それも只で見れたのが一番の財産になっている。

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