読み
はじめに
どうもこんにちは。Kaorunです。私は日本オセロ連盟四段(2022年オセロ名人戦で上振れして5位入賞)、オセロクエストの最高レートは2316。位置付けで言うと、トップちょい下くらいの選手だと思います。
これまでオセロの打ち方を何人かに教え、オセロクエスト五段〜六段くらいにしてきました。そこで教えたことは基本的には佐谷七段の「現代オセロの最新理論」に書かれていることを噛み砕いた内容と、自分が気を付けていることです。
最近ふと、同じことを教えていてもなぜ読みの精度に差があるのか?ということが気になり、「読む」と言うことに焦点を当てて、自分が意識的ないし無意識にやっていたことを言語化しようと思い立ちました。
多分強い人であれば誰でもしていることですが、皆当然のことのように考えていて、わざわざ言語化してくれません。そうした部分をきちんと言語化しておくことが、伸び悩んでいる人の役に立つのではないかと思い、この文章を書いている次第です。
オセロクエストでなかなか五段に届かないくらいの人に役立てば幸いです。
読むということ
読むという作業は大きく分けて、3つの作業に分けられます。
候補手順の列挙
各候補手順について数手先の局面を思い浮かべる
2.で思い浮かべたそれぞれの局面を比較し、最も良いものを選ぶ
もちろん、1. 2. 3. の手順を一直線に実行するだけで最善手が選べるなら苦労はしませんし、それが簡単にできるならトップ選手になれてしまいます。実際に対局する中では1手を指す間にも1. 2. 3. を反復していますし、2. で正しく数手進んだ局面を思い浮かべるためには、相手の立場に立って3.を実行する必要があります。
つまり、1. 2. 3. は完全に独立した作業ではありません。しかしこのように分解することで、対局中に混乱した時、自分がどの作業で混乱しているのかが意識でき、何を考えれば良いかがハッキリします。
また練習をするにしても、それぞれの作業での頭の使い方は少しずつ違うので、1. 2. 3. に分解してそれぞれを鍛えることで、より効率的にレベルアップできます。
ところで、レベルアップするためには、トップの選手との違いを認識して、その違いを減らすことが重要です。1. 2. 3. それぞれの部分で、トップ選手とそれ以外の選手で以下のような違いを感じます。
挙がる候補手順の精度
手順を指定したとき、正確に局面を思い浮かべられる手数
局面の良し悪しを判断する正確性
以下ではそれぞれの部分に分けて、レベルアップするための方法を書いていきます。
レベルアップの方法
上で書いた1. 2. 3. いずれについても一朝一夕ですぐに上達するものではありませんが、以下で書くことを意識すると、少しずつ変わってくると思います。学習に王道はあれど、近道はありません。
1. 挙がる候補手順の精度を上げる
まず、トップ選手はなぜ精度良く候補手順を挙げることができるのでしょうか。頭の回転が早かったとしても、所詮人間です。経験的に効率よく良い手を見つけられていると考えるのが自然です。具体的には、
悪手へのセンサーが敏感で、枝切りを高速で行える
先に潰しておくべき箇所が形から即座に見える
といったところでしょう。これを身につけるためには、相手の目線に立って、3手先の局面を網羅的に思い浮かべるということを繰り返しましょう。そうする中で、悪手(つまり相手にとっては好手)がすぐに探知できるようになり、相手の好手の潰し方も磨きがかかってきます。
2. 正確に数手先の局面を思い浮かべる練習
数手先の局面を思い浮かべるのに良い練習方法があります。
終盤問題のカウンティングです。正確に思い浮かべられていなければ、正確に数を数えることはできないためです。
しかし、訓練をするためには時間が必要でしょう。オセロクエストで言えば、詰めチャレより、終盤問題集の少ない空きマスの問題から始めて、空きマスを徐々に増やしていくのがおすすめです。
ただし、少ない空きマスだと正解を選ぶこと自体は簡単です。あくまで、数手先の局面を思い浮かべるための練習であることを忘れず、正解手順であっても、数えるのに失敗した場合は不正解だと認識しましょう。また、不正解手順であっても、数えるのに成功した場合は正解だと認識して良いでしょう。
当たり前のことですが大切なのは「数手先の局面を思い浮かべるためには、手順を一つ固定することが必要」ということです。手順を固定せずにあれこれ考えていては、数を数えるということに集中できませんし、途中で脳内で返し忘れも発生しやすいです。
3. 局面の形勢判断
局面の形勢判断の良い練習方法があります。qEdaxというiOSアプリに、まさに局面の形勢判断をするモードがあり、評価値を当てるゲームができます。
基本的には手数の詰まり方である程度の判断はできますが、このゲームを繰り返し行うことで、形勢の良し悪しのふんわりとした感覚が身につきます。
また、使っているスマホがiOSでない場合も安心してください。
自分の対局後、解析を行う前にその対局のどこかの局面を一つ選ぶ
選んだ局面について評価値を予想する
解析して答え合わせ
最善手で数手進めてみて、有利不利の自分の感覚と評価値が合致するところまで最善手で数手進めてみる
という方法で、何かしらの解析アプリを持っている人であれば誰でもできます。
終わりに
いかがでしょうか。書いているうちに尻すぼみになってしまった感じが否めないですが「『読む』という作業を1. 2. 3. に明示的に分割して考えること」ができていない人がそれなりに居るなと感じるので、まとめてみました。
難しい複合問題が与えられたとき、それをいくつかの小問題に分割してそれぞれに焦点を当てることで、元の難問が簡単に解けてしまうということが往々にしてあります。
このノートが、読んでくれた人のオセロの読みの改善の助けになれば幸いです。
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