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かぼちゃとへちま襟

97歳になる友人から炊きものがあるから
タッパーでも持って来いやと連絡があった。
私もちょうど去年の夏に採った南瓜で
煮物を作っていたのでそれをお裾分け

彼女は私の持参したタッパーから手際よく
中身を皿にあけ、かわりに煮豆を入れながら
少し目を細め「かぼちゃか、見せたい物がある」と呟き箪笥から数枚の写真を出してきた。

古ぼけて茶色くなった写真の中には
学生服のおぼこい女の子が写っていた
姉と自身の女学校時代の写真との事だ。

二人の制服が違うだろう、姉はセーラーで
私は丸いへちま襟さ、私の写真の頃は
戦時中でな、セーラー服は廃止されて
皆布地を切って丸いへちま襟に縫い直して
学徒動員に行ったんだ。
皮肉なもんだ、あの頃はもっともっと
食べたいと思っても叶わず、今になって
不自由なく食べられる環境になったら
もう何も欲しくはないのさ、

今日の彼女は随分と能弁だ
南瓜を見て戦時中の頃を思い出したのかな
私はあと何回彼女の煮豆を味わえるだろうか

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