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仏教のはなし 「おたがいさま」

『仏説阿弥陀経』というお経に「共命之鳥(ぐみょうしちょう)」という極楽浄土にいる鳥が出てきます。「共命之鳥」は胴体や脚などは普通の鳥と同じですが、頭が二つあるのです。つまり体は一つで頭は二つあるという鳥です。そして、大変美しい声で鳴くそうです。その「共命之鳥」には次のような話があります。綺麗な鳴声を聞かせていたのですが、ある時「一体どちらの鳴声のほうが美しいのだろうか?」と尋ねられます。それから2羽(1羽?)の苦悩が始まりました。お互いに「自分のほうが一番美しい!」「いや相手のほうだろうか?」と思い悩み、言い争いを始めました。そこで、片方の鳥が「もう一方のほうが、この世からいなくなってしまえば、自分は一番になれるぞ」と考え、こっそりと食べ物に毒を混ぜて片方に食べさせました。苦しむ相手を見ながら「これで私が一番だ!一番美しい声で鳴く鳥になった!」と喜びましたが、それもつかの間、自分自身も同じように苦しくなってきて、そのまま死んでしまったという話です。頭は別々ですが、身体は一つなのですから、毒を食べた方も死んでしまいましたが、食べさせた方も死んでしまったのです。
この「共命之鳥」の姿は、私たちに「他を滅ぼすことは、自分自身を滅ぼすことになる。他を生かすことが私を生かすことになる」ということを教えてくれます。仏教の説くところの「縁起」です。すべてのものは網の目のように相互に関係し依存しあって存在しているのです。私のいのちは、たくさんの人々や他の動物や植物のいのちに支えられ、また同様に私のいのちは他のいのちを支えているのです。「自分さえよければ、他人はどうなってもいい」と考え方は相手を傷つけるのはもちろん、結局は自分自身をも傷つけることになってしまいます。

指宿市 乗船寺

藤岡義尚


写真:明信寺さまのブログより

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