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Division C Directorの振り返り:責任

「Toastmastersは仕事じゃないんだし」

Toastmastersに関して僕の嫌いな一言だ。確かにToastmastersは僕たちの仕事じゃない。ただ、この一言を発する人からは「だからどうだって良い」、「だから真剣にしなくて良い」、「だから楽しければ良い」というような、およそ何かを学びたいと思っているとは思えないような、最初から頑張る気がなくて如何に楽をするかを優先的に考えているような、残念な何かを感じてしまうからだと思う。

楽しいことは重要だ。Toastmastersを作ったRalph C. Smedleyという人物も "We learn best in moments of enjoyment."という言葉を残したと伝えられている。ただ、「楽しさ」にもいろいろあると思う。Toastmastersのような、何かを学びたい人たちが集まっている(はずの)場では、それは「真剣に取り組むからこその楽しさ」でなければ意味がないと思うのだ。だから、仕事でないのはもちろんその通りだが、いい加減に取り組むのではなくある程度、スケジュールを調整して準備する時間を取って欲しいし、突発的なことが起こっても簡単に参加をキャンセルして欲しくない。誰かがドタキャンをするということは、そのミーティングの時間のために参加を予定していた全ての人が時間を割いてきたその準備を無駄にしてしまうリスクがあるのだから。周りの人の想いに応えるrespectは持ちたいものだ。

もう一つの言葉を紹介する。"Toastmasters - the greatest place to screw up."  2001年のWorld Champion of Public SpeakingであるDarren LaCroixの言葉だ。これは僕の好きな言葉の一つ。なぜなら、この言葉には「本人が何かを達成しようと努力した結果が失敗になっても実害を被らずに済む場所」としてのToastmastersの特徴が現れているからだ。真剣に取り組んだ結果、思ったような成果が出なくてもそこから得た学びを次につなげていけばよい。最初から失敗するのを前提に先に言い訳を口にしておくのとはまるで正反対だ。

ただし、この"Toastmasters - the greatest place to screw up." という言葉も、クラブを一歩出たら軽々しく口にすべきではないのではないかと思っている。

クラブは互いに支援しあって一緒に成長していく仲間の集まりだ。が、それがArea、Division、Districtと関係する人が増えるにしたがって、それぞれの人との人間関係は薄くなっていく。例えば、他のクラブを代表してコンテストに出場しているコンテスタントの後ろにはそのコンテスタントを応援してきたクラブの仲間がいる。コンテストの結果自体は本人のものだが、その結果には応援してきた仲間たちの想いも詰まっている。そういう多くの利害関係者がいる場所で、the greatest place to screw up と開き直られてしまってはたまったものではない。クラブを一歩出れば、より結果に対する責任が伴う場所になるという意識は持っておいてほしいし、それに見合うだけの準備をしっかりとしてほしいと思う。

そしてそれは結局は本人のためでもある。いい加減に取り組んだ後に残るものは大したことがない。真剣に取り組んで失敗しないように準備した結果は、(たとえマイナーな失敗は防げなかったとしても)本人の大きな学びになるはずだ。We learn by doing. Toastmastersが掲げる4つの教育原則の最初に登場するExperiential learningというのはそういうことだと思う。

実社会で行っているのと同じだけの真剣さで取り組んで、失敗をしないように万全の準備をすることに意義がある。そして、そこまでしても失敗してしまったとしても実社会での失敗に比べれば圧倒的軽傷で済むからこそ the greatest place to screw up と呼べるんだと思う。

Area DirectorやDivision Director、その他のDistrict役員はもとより、Area以上のイベントに関わる人には、ぜひともやる前から「Toastmastersは仕事じゃないし」などと言い訳をせず、真剣に成功できるように準備をして臨んでほしいと思う。その方が楽しいから。

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