10倍和裁の本が理解できるお話
初めての和裁の本は理解不能だった
私が初めて和の服を作ろうと思ったのが高校生の時でした。
アニメや漫画のキャラクターが着ている服を再現した物を作ることが多かったのです。
その時に洋裁を独学で学んだのですが、ある時同級生の1人に次のように言われました。
「ドラマ**に出てくるHさんの衣装が欲しい」
その作品は時代ものでしたが、布は無地だったので苦労せずに用意できると感じました。
しかし洋裁であればおおむね作りたい服が作れるようになっていましたが和裁は本当に何も知りませんでした。
知り合いが古いテキストを貸してくれましたが、開いたとたんにはてなマークが大量発生し、誰かに聞いても答えられる人は周囲にいませんでした。
初めてみる和裁のテキストは異世界の物のようでした。
このお話は当時の私のような人に読んでもらえればと思います。
大裁ち女物単衣長着
私たちが通常「浴衣(ゆかた)」と呼んでいる物は「大裁ち女物単衣長着(おおだち おんなもの ひとえ ながぎ)」になります。
普通の単衣の着物も、大裁ち女物単衣長着になります。
つまり浴衣も単衣の着物も、裁縫と言う点で見るとほぼ同じになります。
昔和裁を習い始めたころ、私に次のように言った方が居ます。
「和裁なんて単衣と袷(あわせ、裏付きの着物)の違いで全部同じだよ。」
これは随分乱暴な言い方ではあるのですが、極論するとそういう事になります。
ただし布の質やランクによって縫い代の始末をはじめとする細かい部分が変わってきます。
ここが洋裁との大きな違いになります。
私は和裁の学校に2カ所行きましたが、やはり布の質が変われば縫い代の始末が違っていました。
2番目に行った学校の先生が言うには、第二次大戦以降多くの和裁の技術が失われ時にとんでもな仕立て方を教える学校も増えたそうです。
また洋裁の勉強をした方が洋裁式に仕立てる方法をテキストに書くので、え?!と思う内容が描かれている事も多いです。
大裁ち
大裁ちとは、大人物の裁断方法という意味になります。
大裁ちではない物は、子供用の物になり小裁ち(こだち)、中裁ち(ちゅうだち)本裁ち(ほんだち)があります。
小裁ちは新生児から3歳ごろまで着る物で一つ身(ひとつみ、新生児用)と三つ身(みつみ)が含まれます。
中裁ちは4-5歳から11歳ごろまで着る着物で、四つ身(よつみ)五つ身(いつつみ)があります。
四つ身は別名つまみ衽(おくみ)と呼ぶこともあります。
五つ身は車裁ち(くるまだち)とも呼ばれます。
7歳ごろから六つ身(むつみ)と呼ばれる本裁ち(ほんだち)にする事も多いです。
本裁ちは大人物と同じように裁断しますが、寸法が変わります。
このように子供物は成長に応じて裁断方法を変える事で対応し、それぞれ名前が付けられています。
女物
古い時代は男物と女物の区別がしっかりついていました。
ぱっと見てわかる大きな男女の違いは、衣文(えもん)を抜くかどうか、そしてお袖の形です。
衣文とは男物は衣文を抜きませんので、襟が首筋にそって着ます。
その為、襟肩あきの切込みを入れたらそのままヘラ付けになります。
女性物は首周りの襟を後ろに引いて衣文をぬきます。
襟肩あきを開けて、繰越(くりこし)をしてからヘラ付けをします。
お流儀によっては繰り越しをせずに後ろ側に襟肩あきをあけるらしいです。
(私が習った学校は2カ所とも繰り越しをするお流儀でした)
後に襟肩あきを開けてしまうと、縫いなおした時に布を前後ひっくり返す縫い方ができないので困ると先生が言っていました。
和裁には様々なお流儀がありますが後々困るような縫い方はしたくないですし、このお仕立てはどなたがしたのですか?こんな滅茶苦茶な、などと言われないような仕立てをしたいと思います。
お袖の形は女物はふりがありますが、男物はふりが無くお袖が閉じています。
ふりとは袖付けの下のたもとの部分が女物の場合は開いています。
男物は1寸(約4cm)ほど人形(にんぎょう・ふりと似ていますが閉じています)をつける場合もありますが、完全に身頃とつながっています。
お裁縫を知らない方が見た時、お袖の形で男女差を見る事ができます。
ちなみに子供物は男女差があまりはっきりしていません。
一応、着物の色柄などで男女の違いは判りますが、男児によく使う筒袖も動きやすく布が少なくて良いという事で女児に使う場合もあります。
もちろんこれは普段着のお話で晴れ着の女児用は袂(たもと)のあるお袖になります。
単衣(ひとえ)
単衣に対応する言葉としては袷(あわせ)があり、袷とは裏地のある着物を言います。
単衣の着物は縫い代の始末方法が何種類かあります。
これは布の質やランクに応じた始末方法を選ぶ必要があります。
どの場面でどの方法を選択するかは、おおむね決まっています。
これがそれなりの布質の物なのに浴衣と同じ縫い代の始末方法などを行いますと、あれまぁあの方は何もご存じないのね。などと言われてしまいます。
とは言いましてもいくつかの決まりを覚えておき、後は布を見てどの方法を選択するか?という事になります。
単衣の縫い代の始末が面倒だから袷のほうが楽と言う方もいらっしゃいました。
しかし袷は袷で布の重みなどで裏布がだれたり、表布がつっぱったりする事もありますので所定の手順でそれらを調整する必要があります。
その為には釣り合いを見るために天井から着物をぶら下げる必要があるので、それなりの設備が無いと縫うのが難しくなります。
その点を考えると単衣のほうが設備も不要なので作りやすいです。
長着(ながぎ)
私たちが着物と呼ぶ物は全て長着になります。
浴衣も長着です。
では長着ではない物は何があるのでしょうか?
羽織(はおり)、コート、作務衣(さむえ)や甚平(じんべい)など丈の短い着物全てが、長着以外の物になります。
ちなみに下着は襦袢(じゅばん)になります。
襦袢には肌襦袢(はだじゅばん)長襦袢(ながじゅばん)があります。
長襦袢が二部式(にぶしき)になった物は、二部式襦袢または、うそつき襦袢などと呼ばれます。
これだけ知っていれば和裁のテキストを見た時に、作りたい物に応じてどのページを見たらよいかがわかると思います。
以下の記事も合わせて読んでいただければ嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
読んでいただきありがとうございます。 アトリエを無事引っ越すことが出来ましたが、什器等まだまだ必要です。 その為の諸費用にあてさせていただきます。