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入浴委譲/毎週ショートショートnote

#裏お題

「さあ、お先にどうぞ、さぁさぁ、
遠慮なくどうぞ」

その銭湯♨️では、毎日、こんな会話が飛んでいる。

入浴の権利を譲る行為、
すなわち『委譲いじょう』すること。
そして、それは
『徳を積む』と、云われるようになったのだ。

称して 入浴委譲にゅうよくいじょうという。

『徳を積む』というものは、実に効果があるものだ。

寿命が延びる
宝くじが当たりやすくなる
事故に遭わない
泥棒が入らない家になる
食品を半額で買うことが出来る、

此処にあげた以上より、細かいことも含めて多く、良いことが起きる。

だから誰もが、譲ろうとする。

それでも、皆が譲っていれば
入浴する者が決まらず、それにより銭湯は、お湯がぬるくなり
沸かし直しをしなければならない。

「よーし!これから、湯に入った10人は無料にしようじゃないか」

危機を感じた銭湯のオヤジは、
英断を決めた。

「おお!無料だと!ありがたい。どれ、わしは入るぞ」と最高齢のじいさんが、湯を向かった。
それに続いて何人も押し寄せた。

同じく女湯でも、最高齢のばあさんが湯へ向かうと次々に人が押し寄せた。

入浴委譲は、やがて消えていった。



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