横断幕中耳炎/毎週ショートショートnote
「痛い、痛い、耳が痛い」
僕は耳が痛くて病院に行った。
「中耳炎ですね。お薬出しときますから、飲んで、様子みてください」
そう言ったように聞こえたから、
「まっいいか」
「でも、来週の水泳大会、
僕、リレーの選手だし、絶対、出たい」
「僕が出ないと負けるもん」
来週には治ってくれると思い
みんなには黙っていた。
夕飯時、お母さんが何か言ってた。
わかんない。
隠れて薬を飲んで、僕は早く寝たんだ。
「僕ってこんなにいい子にしてるんだから来週には治るよね」
鏡の中の自分に言った。よく見えなかったけど、「まっいいか」と思った。
中耳炎は、だんだん良くなって来た。痛みがおさまって来たんだ。
僕は嬉しかった。
そして、水泳大会が明日に迫った日、僕は久しぶりにプールに行って
泳いでみた。
「アレ、アレ、うまく泳げない」
前に進むことが出来ない僕は
焦った。
なんで出来ないんだろう
泳ぎ方を忘れている。
その時、
隣で泳いでいる犬が声をかけてきた
「犬カキだよ、犬カキ」
あ 僕、犬だったんだっけ?
ずっと夢を見ていたみたいだ
僕は人間になってる夢を見たんだ。
横断幕が掲げられていた。
そこには、
『町内対抗ワンワン水泳大会』
と書かれていたんだって。
飼い主のまことクンが教えてくれた。
僕は犬カキをして一生懸命泳いだよ、そして優勝したんだ。
そしたら、違うほうの耳が痛くなって、また病院に行ったんだ。
何処から夢だったんだろう。
僕、わかんない。
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