見出し画像

(長崎県美術館・三重県立美術館コレクション)「果てなきスペイン美術‐拓かれる表現の地平」と「土と火 植松永次」(三重県立美術館)

近所の美術館でスペイン美術をテーマにした展示があるということなので早速行ってきました。

入口

スペインの画家といえば、エル・グレコ、ムリーリョ、ゴヤ、ダリ、ピカソ、ミロあたりが浮かびます。そのうち、国内の美術館では国立西洋美術館と大原美術館にしか所蔵されていないエル・グレコを除く上の画家の絵は、三重県立美術館の常設展で見ることができます(展示替えがあるので1年を通じていつも見ることができるわけではありません)。

そのようにスペインの有名な画家の作品を常設展で見ることができることについては、ありがたいな、贅沢だなと思ってはいたのですが、日本国内でスペイン美術を収集方針に含んでいる美術館は珍しいことを今回の友の会ニュース(No.82)で知りました。もう一つの地方美術館が長崎県美術館で、今回の企画はその両美術館が協力して実現したものみたいです。長崎まではなかなか足を運ぶことができないでいるので嬉しいです。

スペインとくれば、レコンキスタ関連や異端審問の影響なのかキリスト教が前面に出てくるような美術、ヨーロッパではイスラム文化の影響を受けていること、ハプスブルク家お抱え画家の作品、スペイン内戦や独裁政権下の息苦しさを背景にした作品などが印象的ですが、今回の企画展では宗教がから現代作品までがまんべんなく集められており、スペイン美術の変遷を多少なりとも理解できるような構成になっていると思いました。テーマは「宗教」「現実なるものへの視線」「場と空間」「光と影」「伝統と革新」の5つだそうです。

常設展で見たことのある作品と、長崎美術館から来てくれた作品が良い感じに混ざって展示されていましたし、何点かは撮影OK(中には撮影はOKですがSNSへの投稿はNGというものもありました)でした。

「聖アンナ、聖ヨアキム、洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」
「アレクサンドリアの聖カタリナ」常設展のお気に入り作品のひとつ

私の絵の好みは古風なので、ミロやダリ以降はちょっとわからないなと思う作品が多くなるのですが、それはそれで面白かったです。前後期で展示替えがあるような説明は見なかったような気がしますが、9月に入ったらまた足を運ぼうかと思いました。

常設展にも今回の企画展とのコラボ展示があり、特に比べてみようコーナーが楽しかったです。苦悩などを抱えていても作品はカラっとしているミロと莫山は、作品の方向性などは違っていても確かに似ているところがあるなと思いました。ミロの作品は線の逞しさが魅力で、家に飾るならミロだな、と勝手に思っています。食堂みたいなところに似合うなと思います。

二階に向かう階段からの景色

さて、2階の常設展付近に柳原義達コレクションが移動しているなと思っていましたら、特集展示「植松永次‐土と火」が、いつもは柳原義達コレクションが並んでいる部屋をとてもうまく使っていました。

植松永次氏は、伊賀を拠点に制作を行っているそうです。伊賀とくれば伊賀焼、伊賀焼とくれば土の素材感を大事にした焼き物、というイメージがあります。今回の展示も「土と火」とあるように土の素材感、やきもの感を大事にした作品で、「自分が自分がっ」という作者の個性が強烈に前に来るような感じではなく、ただし、それがある事でその空間が良い感じになるような作品が印象的でした。

普段は言われない「床などにも作品がありますので、足元に注意してください」という注意を受けたので、何だろうかと思っていましたが、確かにその注意はごもっともでした。

そこそこ広い一室を使った展示は本当に素敵で、このままホテルや市役所のホールなどに半永久的に展示されてもいいんじゃないかと思うほど、空間をうまく使っており、また、その空間を(上でも書いていますが)良い感じにする魅力をもったものでした。語彙が足りませんが、「これは、いいね。」という感じでした。

部屋の光の取り込み具合とも調和している
正面の9つのやきものから成る作品はこのままずっとどこかで見ていたい


足元注意