見出し画像

歩み

忘れられない瞬間は誰にでもある。
西暦2022年という一年は僕にとってはそれだった。
365日、瞬間と呼ぶには長いような気もするけれど。

仕事を辞めて、徒歩でアメリカを縦断して日本に帰ってくる

これが僕が2022年当初に思い描いたものだった。

思い描いた未来はそう簡単に訪れることはなく、だけどなかなかに刺激的な動きを見せてくれた。

大晦日、2022年が幕を引く今日、記憶を辿りながら振り返ってみようと思う。

「歩」
1月、今年のテーマとして選んだ漢字。
将棋の歩(ふ)は、一歩一歩前に進むことができるが後ろには戻ることができない。そして、「二歩(にふ)」というルールがあり、歩の前後には歩は絶対にいない。
それがなんだか誰かと競争せずに一歩ずつ進んでいくように思えて、いいなあと思った。

2月、アメリカ行きの準備を進める。
仕事をしながらなかなかに忙しい日々だった。

3月、退職。
長いこと続けた仕事を終えた日、空が広いと思えた。
社会の枠組みにはまり込んでいた僕は、これから自由になると嬉しくてたまらなかった。

4月 、初めてのロングトレイルへの出発に向けて、例えようのない感情を味わうことになる。不安と楽しみをごちゃ混ぜにして固めたような、出発の日が近づくにつれて、隙間から不安が染み出してくるような、そんな感じ。

5月 、アメリカに出発。
長い道のりを歩き始めた一歩目は今も頭の中に残っている。感触も思い出せるくらいに鮮明に。歩き始めると信じられないくらいに不安が消えた。毎日が新鮮な体験なんてものはなかなか味わえない。景色も匂いも天候も五感で感じる何もかもが新しく、刺激的だった。楽しくてしかたなかったが、足を負傷する。

6月、怪我に続きさまざまなトラブルに見舞われる。
焦り、不安、自分の弱さとの対峙。僕はここで楽しめなくなった。だけど先を急ぐだけじゃなくて楽しむことを優先に歩こうと決めた。価値観が広がったと言ってもいいかもしれない。無理せず楽しいと思えるところまで歩こうと決意した。

7月、シエラセクションを歩く。
圧倒的な自然を前にすると涙が溢れた。感情を通さない涙というものを初めて経験した。自分にとって楽しく歩くとは何かを考え続けた。少しだけ答えが見えたような気がした。

8月、アメリカから帰国する。
PCT1100マイル付近で日本へ帰ることを決める。この判断をするに至るまでの感情は言葉にできない。歩けなかったのか、歩かなかったのか。当初思い描いた未来とは違う今日にいる自分。感じる必要もないのに恥ずかしさを感じたり、ここでのこの決断は結果的に数ヶ月引きずってしまう。

9月、ヨーロッパを放浪しカミーノ巡礼路を歩く。
日本に戻り、ヨーロッパへ向かう。少しだけ歩くことから離れたかったので、観光メインの旅をしようと思い、スペインへ。サグラダファミリアが見たかった。行き先や宿泊先などは行き当たりばったりで決めるようなスタイルで10カ国弱、ヨーロッパを巡った。

10月、カミーノ巡礼、帰国。
観光では物足りず、やはり長距離徒歩が恋しくなり、スペインのカミーノ巡礼路を歩く、ここでの経験がPCTのもやもやも無くしてくれた。アメリカ、ヨーロッパを通じて約5ヶ月の旅を終え気持ちよく帰国。

11月、日本をゆるめに縦断。
大阪から北海道へ約1ヶ月あまり公共機関を使わずに移動しながら、いろんな人に会いにいく旅をした。今後自分がどうありたいかを思いながら。たくさんの人と話すことができた。

12月、生活を整える。
本拠地長崎に戻り、生活環境を整えた。
心が動く方向へ向かおうと決めた。

ざっと、本当にざっと振り返るとこんな一年を過ごした。
当初思い描いた未来は訪れていない。
納得いく1年だったか?

一歩一歩進んでは立ち止まり、先を想って、歩んだ道を振り返ることもあった。
何よりも自分に向き合った。
自分を肯定したくても嘆くこともあったし、強さよりもたくさんの弱さに気づき、受け入れた。人を羨むこともあるし、比べたくもなった。

だけど、決断は自分で答えを出すことにこだわった。
どの瞬間も主語は“ 自分 “であろうとした。
誰かにこう言われたから、誰かがこうしているから
と、こういう思考で進んで行きたくなかった。
それには不安もあるし、自分を信じなければならない。
長い物には巻かれろという言葉を聞き入れない感じ。刺激があった。

そんな中でも沢山の人からアドバイスをいただいたし、心に響くことも何度もあった、沢山の人に心配をかけ、そして見守られていたのだと思う。そのことに本当に感謝をしたい。この場を借りてありがとうございました。

2022年は僕にとって忘れられない瞬間だったと言える。
涙が溢れるような体験、痺れるような毎日、全ての一歩一歩が着実に今につながっている。
これから訪れるであろうたくさんの選択肢、迷った時にどう動いて、どう選んでいくか。その道しるべみたいなものを手に入れたような気がしている。

未来は、人生は、自分なんてものはそう簡単には変わらない。
自分に期待しすぎる必要もないし、ダメな自分はいつまで経ってもダメなままだ。認めて受け入れよう。そもそも変わる必要なんてないのかもしれない。
未来がどうかなんてわからないくらいの方が楽しくて生きがいがある。

人生は確実に自分の足元にある。

あなたにとって2022年はどんな一年になりましたか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?