無題

 私は保育園でアルバイトをしている。保育園での勤務が入っている日はとても朝早くから支度をしなければならず、冬の時期はまだ外が暗いうちに家を出る。まだ眠い中、寒さに耐えながら支度をし、外に出て電車に乗ると、ちょうど京王線が多摩川の上を通り過ぎるタイミングで窓越しに川の向こう側から照らされるとても綺麗な朝焼けが見える。私はその空間がとても好きで、そのために冬至の日を過ぎて朝焼けの時間が早くなっていっても1本前の各駅停車に乗り朝焼けが見える側の座席に座る。心なしか電車の座席も朝焼けが見える側の方が埋まっていて、この電車に乗っている人たちも同じように朝焼けが好きなのかもしれないなと感じる。多摩川の上を通り過ぎる時間は携帯を見ているのはもったいないくらいの景色が目の前に広がっていて、その光景を、朝帰りの人、同じように朝早く寒い中起きて会社に向かっている人など、その空間に関して思いを馳せながら通り過ぎるその場面が私にとってとても大切な時間である。まだ空いている車内の中、あと1時間もすればこの路線も満員の人々を運ぶことになるけれど、まだゆとりがあり、疲れを癒すような、綺麗な景色に元気付けられるような気持ちになれる気がしてくる。
  1度多摩川から直接見てみようと思って行ったことがあるのだが、やはりいつもの電車の窓から見る朝焼けには敵わなかった。京王線はUVカット仕様の少し水色がかった窓ガラスを使用しているのだ。そこが電車からの朝焼けをよりきれいに見せている理由なのだと思う。また、多摩川の橋の上という徒歩では立ち入ることが出来ない絶好の場所でもある。冬の時期にしか見ることの出来ないその光景を、早朝の車内から見ているあの空間がとても心地よくて大好きな時間である。

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