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一月一酒 第30回

初出:月刊ハンガリージャーナル 2007年1月号

Royal Tokaji Essencia, 1999
醸造所:Royal Tokaji Borászati Kft.
産地名:Mád( Tokaji borvidék )

「征服の道へ旅立ったワイン」
 トカイ・ワイン地区の栄光は、過去と現在にあります。土壌と気候を基準にしたブドウ畑の格付けは、(フランスに先駆けて)1700年代に始まりました。フランス国王ルイ14世は「王のワインにしてワインの王なり」と賞賛し、18世紀のナジ・カタリンは領地内の畑を守るために兵士を配置しました。
 第二次世界大戦後の社会主義体制による国有化と集団農場化は、トカイ・ワインの品質を落とし、その名を貶める結果をもたらしました。1989年の体制変換後、量より質のワイン造りが再開したのです。それ以来うまれた数々の著名なワイナリーが、次々と高品質のワインを世に送り続けています。
 体制変換後、最初の民営ワイナリーとして1989年MÁDに設立されたロイヤル・トカイ社の目的はトカイ・ワインの世界的名声を再び取り戻すことにあります。英国の著名なワイン評論家Hugh Johnson氏も同社設立者に名を連ねています。
 1999年は当り年の集中した90年代においても最高の年となり、他にない高品質のワインをトカイ・ワイン地区にもたらしました。同年産貴腐ワインの特徴は、美しい果実感、熟成した個性の強い酸味、そしてボトリティス・シネレア菌(貴腐菌)の際立つ芳香が、完全な調和をもつことにあります。そしてこの年の貴腐ブドウから歴史に残るエッセンシアが生まれました。
 アメリカのワイン専門誌Wine & Spiritsは2006年度のワイン品評において、同誌30年の歴史において初めて100点満点を付けました。これまでに例のない名誉を受けたのは、度数2.9%のアルコールとリッターあたり600グラムの糖分がうねりをあげる神酒。ロイヤル・トカイ社による1999年産トカイ・エッセンシアです。
 Wine & Spirits誌の審査メンバーは以下のように評価します。
「その香りは満開のベルガモットオレンジの林を想わせ、ベルベットの舌触りと香草-花-南国の果物の味わいが幾層にも織りなすワインの奇跡がここにある」「痛快な喜びをもたらす甘味と酸味の調和」
 そして次の言葉で締め括ります。
「足りないものは何もない、何も足す必要はない。完璧というのはこのようなことをいうのであろう」
 私たちは、このワインを心から誇りに思います。

原文:SZILAJ Eszter
画像・訳文:高久圭二郎

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