網伏せとかかぶせ(製版トラップ)作業とか

網伏せ

製版作業で分解写真を使わずに、スクリーンチントで掛け合わせた無地網ばかりの版下製版を網伏せと呼んでいました。文字だけの物もありますが、多いのがキャラクターを使ったグッズや商品のものです。(僕が就職した当時流行っていたのは「なめ猫」や「Dr.スランプ アラレちゃん」などでした。「なめ猫」は写真分解でしたけど)就職した当時から現在もお付き合いさせていただいている軟ビの印刷会社さんから受注する仕事に多く、サンリオやディズニーのキャラクターなど多く扱ってきました。写真がないイラストラインにそってマスクを切り、指定の網%指示にそって各色の無地網を伏せていきます。網伏せ作業は嫌いだというレタッチマンは多かったです。網指定が細かくてめんどくさいし、貼りこむ網を間違えるからだと思います。実は僕はこの網伏せが好きだった。流行りのキャラクターを扱えるし、サイズも小さめなので手元で作業ができるし、イラストのラインに沿ってカッターの刃を入れていくのが楽しい。通常の製版作業でも人物を切り抜くのが好きで、出来上がった遮光マスクのシルエットを見るのが好きだった。
注意しないといけないのがそれぞれ貼りこむ無地網の角度。きちんと角度を振り分けないとモアレが出てNGになる。この角度を振り分けるのも面倒臭くて敬遠された理由の一つだと思う。角度を振り分けるのを楽にするために、あらかじめきちんと角度を振り分けておいたマスターベースを作っておいて、マスクの下に引いてその角度と同角になるように貼りこんだりしました。

網伏せ

モニターでは同角もモアレっぽくみえますね(苦笑)反転作業後、作業確認の検版でも指定通りに網が伏せてあれば正解なので気が楽でもありました。

白ふちとかかぶせ処理とか

アナログ製版での白ふちなど太らせたり細らせたりする処理は、フィルムを反転する作業で行います。単純に白ふちをつけたい場合は、抱かせマスクを反転する際に白ふちをつけたい文字マスクを反転してポジにする際にトレーシングペーパーと透明ベースを重ねて反転します。または予めデュープフィルムでネガを太らせておいてそれを反転して使います。こちらの方がきれいにふちが付いているか確認しながらできます。

太らせ・細らせ

露光量を強くすれば太る量も増えますが、エッジ部分がビビってしまい綺麗でなくなります。ふちの幅を太くしたい場合は上記の作業を望みの太さになるまで複数回行います。
軟ビの印刷は紙の印刷に対して材料の温度差による伸縮も激しく、現在のように4色機や5色機でなくて、単色機で印刷していたから見当あわせも難しい。(古くからやっておられる会社は現在も単色機だったり、印刷オペレーターの高齢化に伴って印刷自体から撤退したり)なので紙の印刷に対する製版トラップに比べて被せ処理をする量も多めにしないといけない。アナログ製版でのトラップ処理、単純なものならマスクを切る時に細く隙間ができるように切ります。ケイ1本かぶらすというような言い方をしてました。まあ通常でも抜き合わせよりも少し被らせるわけです。もう少しだけ隙間が太くなるようにカットすれば「かぶせ」たことになります。ちょっとしたアールやイラストラインに対しても行います。抱かせるフィルムも使わなくて済むので経済的です。
イラストのラインがスミでなく特色などの場合、通常通りにマスク反転した抜き合わせのマスクでは印刷時の見当あわせが非常に困難になります。ベタ(100%)ならば反転時にルミラーを重ねて強めに露光することで、多少は被らせることができますが、無地アミの場合はアミ点の大きさが変わるため露光を強くすることができません。マスク版と無地アミを貼った透明ベースの間にもう一枚ベースをかませば多少は被らせることができますが、ラインに沿って綺麗に太ることはなく、プリンター内の絵柄の場所によってかぶり方に偏りが出ます。なので予め綺麗にかぶるようにマスク自体を細工します。具体的には最終のイラストのラインに当たるネガを作成し、一旦ポジに返します。ポジからもう一度ネガにするのですが、その時に透明ベースなどをあてがって反転して少し細らせます。細らせたネガを反転したものをマスクに抱かせることでイラストラインに対して均等に綺麗にかぶるようになります。たとえば滋賀県警のマスコット「けいたくん」

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イラストラインのネガを作成。

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普通に作成するとこんな感じ。これは抜き合わせになります。

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一度ネガからポジに反転したものを細らせて、ネガに戻してから抱かせマスクとして作成したもの。これでイラストラインに対して少しかぶっています。

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元のネガに細らせたポジを抱き合わせたもの。白い線の分だけ被さっています。

製版オペレーターに時間のかかる製版処理を聞くとトラップ処理をあげる人が多い。処理後でもできていない部分や形状のおかしなものもよく見かけます。RIPの自動製版もものによっては形状がおかしくなってしまいます。僕はデジタルになってからもこの手のトラップ作業が好きで、実務からは離れている立場なのに難しそうなものは自分で製版処理してしまいます。若手を伸ばせよって聞こえてきそうですが、残念ながら検版の人もきちんとチェックできていないのが現状です。分版プレビューがあるとはいえ、どう処理しなければならないかを含めモニターの中だけで分色したり、それを刷り重ねたイメージを抱くのは難しいのでしょうか。僕自身はアナログ時代の作業が現在のデジタルデータ上のトラップ作業においても大いに役立っていると感じます。フィルムで分版された状態のものをそれぞれ確認しながら作業できた事が良かったのだと思います。

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上は3番目に在籍した会社の写真です。モノクロなのは時代のせいでなくたまたまです(笑)そこでも同じ軟ビの仕事をされていましたが、上手く製版できないとのことで、古くから作業してきた僕が入社した時には担当営業さんに喜んでもらいました。上手くいかないというより面倒くさいから嫌がられてただけだと思いますけど。これはデジタルでもアナログでも同じ、面倒くさがるときちんとした仕事はできません。

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