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宝物の資料

15世期に発明された画期的な印刷技術のおかけで、現代に生きる私たちは数世紀前の書類を見ることができます。
 活字を並べて文章にした活版に塗料を塗って印刷する活版印刷、同時期に銅版に彫刻刀で凹線を彫って紙に転写する銅版印刷が発明されました。
それ以前は木の板に文章や絵を彫って版を作る木版印刷でカリグラフィーの細い線をきれいに刷ることが出来ませんでしたが、銅の板に彫ると繊細な線になることを発見しました。
そして手書きの書類を残すにはカリグラファーが書いたものを銅版にきれいに転写して彫れる技術を持った印刷屋もまた必要でした。
 それまでは本といえば聖書、一冊を修道士が修道院で3年がかりでカリグラフィーで書かれていました。高価な本は買える人も限られていましたが、印刷技術の発明で短期で大量生産できるようになりました。

 幸運なことにお店から500mという至近距離にパリ市立史料館があり、こちらには膨大な量のフランスの書類が保管されています。
 私は以前、お店のお客様でもあるヨーロッパのトップカリグラファーのClaude Mediavillaさんから見るべき書類のリストをいただきました。それをもとに館内のコンピューターを使って書類を検索、予約し、写真に撮ってフランス書体を研究しています。
16世紀に建てられたルネサンス様式の貴族の館であるオテル・ラモワニョンを改装した館内で文字と静かに対面する時間は私にとって貴重な時間です。
ほとんどは銅版印刷された書類ですが手書きの書類も見つけられます。
文字を研究するにつれ色々と昔のフランス語と今のフランス語の単語の違いに気がつきます。
 例えば、昔はhospital, chasteau, bastardeだった単語が今はsが抜け落ちてその前のアルファベットにアクセントが付き、現代はhôpital, château, bâtardeとなっています。このようにアクサン シルコンプレックスの使用の標準化がされたのは18世期になってからです。
 その他、昔よく使われていたものに略語(abréviation)があります。文頭、文末に使われました。例えば、
Ambass r(rは右上に置きます)=Ambassadeur, Alt =Altesse, Cheval r=Chevalier, Sig r=Signor, Lieut t=Lieutenant , Vre=Votre, Quit=Quittance など沢山あります。
文字と文字を繋ぐ線、アラベスク(唐草模様のような曲線の装飾)が美しく、現在使われていないのが残念です。でもこれを知っていると昔の資料を解読できます。


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